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配分率階差
備考)分析対象は,指定都市12,特別区23,普通市656,合計691都市。
資料)地方財務協会『市町村決算状況調各年版より計算
自治体にみられるこのような多様性を前提とすると,平均的自治体に関する考察に加え て,個々の自治体を分析単位とする相関分析などの方法を用いて検討すべき課題があると いえる。それは,配分率階差などで示される変化の大きさは自治体によって違いがあり,
その違いは自治体の持つどのような特性と関連しているかを検討することである。
なお,民生費の配分率階差と目的別分類による下位経費の配分率階差は相関係数O. 4か ら0.6程度の相関関係がある。一方,下位経費の配分率階差相互の相関係数は0近傍から 0.2程度の弱い関係になっている。すなわち,下位経費の配分率階差が上昇すれば民生費の 配分率階差も上昇する関係は認められるが,下位経費同士では配分率階差に変化をもたら す程度が弱いことを意味している。このことから,下位経費については相互の関連をもた ずに予算行動が行われていることものとの示唆が得られる。したがって,下位経費ごとの 分析の必要性が感じられるが,現段階ではこのことについて検証すべき仮説の設定までい たっていないので,以下では個別経費の変動と直接関連を持つ民生費の配分率階差を従属 変数とした検討に限定することにしたい。
自治体財務との関連 上昇余力
歳出予算には限りがあるから,ある経費の配分率が上昇したほうが好ましいという判断 があったとしても,どこまでも上昇できるものではなく限界があるだろうというのがここ での分析の観点である。
自治体が社会福祉事業を実施すれば国から補助金が得られるから,事業を実施するほど 有利になるとの考えは錯覚である。というのは,補助金交付は自治体が自己の負担分を一 般財源から計上できることを前提にしたものだからである。一般財源に余力がなければ自 治体の負担力が弱まり補助金を期待することもできかねる。その場合,民生費自らが上昇 余力を縮減する要因になる場合と,他の経費の圧迫により上昇余力が縮減されるという二 つの場合が考えられる。
硬直化要因による限界
一般財源に関する自治体財政の分析指標に経常収支比率というものがあるが,これは,
経常一般財源に占める人件費や扶助費や公債費など義務的経費に充当される一般財源の割 合のことであり,この割合が高いとその自治体の財政は硬直化しているといわれる。
社会福祉サービスは人手によるサービスとして労働集約性の高いものであるから,民生 費の性質別内訳の大半は,表8−2でみたように,扶助費と人件費である。近年では,他会 計に対する繰り出し金が増加傾向にあるが,そうしたものの内実は人件費や扶助費に準ず
るものと思われる。したがって,民生費の水準が上昇することは,自治体の財務にとって は硬直化要因となり,ある程度の水準に達した後の上昇余地は限られるであろう。
このことを検討したのが図2である。この散布図の横軸は住民一人当たりの歳出総額に 占める民生費の割合(1996年度),縦軸は1999年度の同割合との差,すなわち配分率階差 である。みられるように,両者は負の相関関係にあり,96年時点で40%前後の高い配分率 であった自治体の3年後の配分率階差はおおむね負の値であることが多い。すなわち配分 率は減少した。一方,96年時点での配分率が10%ないし20%程度の小さな値であった自治 体では正の比較的大きな配分率階差が実現されている。このことから,平均的傾向におい て観察されたインクリメンタリズムからの離脱は,すべての自治体で生じたのではなく,
上昇余力を持つ自治体において行われたとの仮説が得られる。
配分率階差︵おΦO〜㊤q⊃︹︶ 20
15
10
5
0
一5
−10
図2民生費の期首配分率と階差の関係
(r=一.186n=691,p〈.001 )
eS8 卍o
aP S opt 口口
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評
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
民生費配分率(対歳出総額比,1996年度.%)
資料)地方財務協会『市町村決算状況調各年版より計算
自治体財務との関連
上記の問題は,民生費が自ら硬直化要因となることからもたらされる限界であった。次 に,他の経費の圧迫による上昇余力の限界を考えなければならない。なかでも財源の確保
と関連を持っ公債費負担の水準が重要である。
公債費は地方債の元利償還に要する義務的経費であるが,一般財源に占める公債費充当 一般財源の割合として公債費負担比率がある。この比率が大きいことは経常収支比率の上 昇にっながり硬直化要因になることはもちろんであるが,ある水準を越えて上昇すると起 債制限を受け自治体の財源確保を制約する。
このため,公債費負担比率が高い自治体では一般行政経費への資金配分に慎重にならざ るを得ない。公債費負担比率と民生費配分率の相関係数を計算したところ,1996年度は 一.186,1999年度は一.230といずれも負の相関関係にあり,こうした制約が年々強くなる傾 向がみられる。また,図3にあるように,民生費の配分率階差(1996〜99年度)と99年度 の公債費負担比率との間にも負の相関関係がみられた。すなわち,起債制限につながる公 債費負担比率が20%を超える自治体では,民生費の配分率階差が一般に小さく,また負の 階差となる場合が多い。