• 検索結果がありません。

5.2.1 評価実施事項 

(1) 建物,系統,機器等の裕度評価 

津波高さが土木学会「原子力発電所の津波評価技術」(平成 14 年)を用いて評 価した設計想定津波の高さを超える程度に応じて,安全上重要な設備および燃料の 重大な損傷に関係し得るその他の設備が損傷・機能喪失するか否かを設計津波高さ との比較もしくはPSAの知見等を踏まえて評価する。 

 

(2) クリフエッジの特定 

(1)の評価結果を踏まえて,発生する起因事象により燃料の重大な損傷に至る事 象の過程を同定し,クリフエッジの所在を特定する。また,そのときの設備が機能 維持できる津波高さ(以下,「許容津波高さ」という。)を明らかにする。 

 

(3) 事象進展防止措置の評価 

特定されたクリフエッジへの対応を含め,燃料の重大な損傷に至る事象の過程 の進展を防止するための措置について,多重防護の観点から,その効果を示す。 

 

S2 5.2 R0 

5.2.2 評価方法 

原子炉にある燃料および燃料プールにある燃料を対象に,以下の評価を実施す る(図 5.2‑1)。 

   

 

 

     

図 5.2‑1  クリフエッジ評価に係るフロー図(津波) 

  

(2)a.起因事象の選定 

 

(2)b.起因事象に関連する設備の抽出  およびその許容津波高さの評価 

 

(2)c.各起因事象の発生に係る津波高さの特定   

     

(2)d.影響緩和機能の抽出および収束シナリオの特定 

 

(2)e.影響緩和機能に関連する設備の抽出  およびその許容津波高さの評価 

 

(3)a.各収束シナリオの許容津波高さの特定   

(3)b.クリフエッジの特定 

   

(4)事象進展防止措置の評価  発生に係る

津波高さが 次に小さい 起因事象を 選定 

PSAの知見等を踏まえて,起 因事象を選定する 

起因事象に関連する設備を抽 出し,リスト化する  抽出した設備の許容津波高さ を評価する 

各起因事象の発生に係る津波 高さを評価する 

 

選定した起因事象について,イ ベントツリーを作成する 

影響緩和機能に関連する設備 を抽出し,リスト化する  抽出した設備の許容津波高さ を評価する 

各影響緩和機能について,フォ ールトツリーを作成し,許容津 波高さを特定する 

緊急安全対策の前後を比較する ことで,その効果を評価する 

NO 

YES 

クリフエッジの特定  発生に係る津波高さが  最も小さい起因事象を選定 

他の起因事象の発生 に係る津波高さ以下

であるか?

イベントツリーの許容津波高さの特定

S2 5.2 R0 

(1) 設計想定津波と設計津波高さ 

a. 設計想定津波と建物,系統,機器等の損傷モード 

土木学会「原子力発電所の津波評価技術」(平成 14 年)を用いて評価した島根 原子力発電所における設計想定津波の最高水位は島根1,2号機施設護岸で EL6.5m(T.P.6.0m)で あ り , 最 低 水 位 は 島 根 2 号 機 取 水 口 で EL‑5.1m(T.P. 

‑4.7m),島根2号機取水槽で EL‑7.0m(T.P.‑6.6m)である。最高水位には朔望平 均満潮位 0.46m,最低水位には朔望平均干潮位‑0.02m を考慮している。また,設 計想定津波の最高水位および最低水位を与える水位変動の継続時間は,いずれも 5分以下である(添付 5.2‑1) 。 

※ :EL は東京湾平均海面(T.P.)を基準とした敷地の高さであり,EL と T.P.

は同義である。しかし,海域活断層による津波では地盤変動の影響を考慮 する必要がある。 

押し津波時は,島根1,2号機施設護岸での最高水位に,下降分の地盤変 動量を加えることで,島根1,2号機施設護岸での最高水位を EL で表せる。 

引き津波時は,島根2号機取水口での最低水位および島根2号機取水槽で の最低水位から,上昇分の地盤変動量を引くことで,それぞれの最低水位を EL で表せる。 

なお,以下特記なき場合,高さの記載は EL での高さを表す。 

津波による設備の損傷モードとしては,水位上昇による設備への浸水と水位低 下によるポンプの取水性への影響があるが,水位低下によるポンプの取水性への 影響は設計想定津波を超える津波に対しても,以下の通り原子炉施設の安全性へ 影響を及ぼさないと考えられることから,損傷モードとして水位上昇による浸水 を評価することとする。 

・津波による水位低下への対応 

原子炉補機海水ポンプの取水位置での海面低下による島根2号機取水槽での最 低水位 EL‑7.0m(T.P.‑6.6m)は原子炉補機海水ポンプの取水可能水位 EL‑3.5m を下 回るが,原子炉補機海水ポンプの取水可能水位を下回る津波が来襲する可能性が ある場合には,事前に原子炉を停止し,原子炉補機海水ポンプを停止する手順と している。また,原子炉補機海水ポンプの確実な保護の観点から,停止している 原子炉補機海水ポンプが津波時に自動起動するのを除外するインターロックを設 けており,待機系統の原子炉補機海水ポンプは確実に保護される。 

原子炉補機海水ポンプ停止中は,高圧系の原子炉隔離時冷却系により原子炉を 冷却し,津波収束後に原子炉補機海水ポンプを再起動する。従って,津波による 水位低下はその低下量によらず原子炉施設の安全性に影響を及ぼさない。 

 

b. 津波高さと設計津波高さ 

津波高さは,施設護岸における水位とし,設計津波高さは設計想定津波の施設 護岸での最高水位とする。 

S2 5.2 R0 

a. 起因事象の選定 

原子炉にある燃料および燃料プールにある燃料について,以下の考え方に基づ き,津波を起因として燃料の重大な損傷に至る起因事象を選定する。 

・原子炉にある燃料については,PSAの知見等および津波の影響として固有 に考慮すべき事象を勘案の上,選定する。 

・燃料プールにある燃料については,燃料プールの保有水の流出や冷却機能喪 失に伴うプール水位の低下に着目し,選定する。 

 

b. 起因事象に関連する設備の抽出およびその許容津波高さの評価  (a) 起因事象に関連する設備の抽出 

安全上重要な設備および燃料の重大な損傷に関係し得るその他の設備から,

a.項において選定した各起因事象の発生に直接関連する設備を評価対象設備と して抽出する(添付 5.2‑2)。 

 

(b) 起因事象に関連する設備の許容津波高さの評価 

(a)項において抽出した設備について,許容津波高さを評価する。設備の許容津 波高さは,設置場所の浸水高さが,設備の機能維持できる最大の浸水高さとなる 津波高さであり,設置場所および設置高さ(保守的に設置床高さなど,実際の設 置高さより低く,かつ高さが明確な場所の数値を用いる)と,津波による設備の 浸水を検討し評価する。 

ア. 当該評価に必要な設備について,設置場所および設置高さを調査する。 

イ. 敷地高さを超える津波に対して,敷地内への浸水による影響を添付 5.2‑3 に 示す方法で評価する。評価に用いる津波は保守的に周期 15 分の正弦波とす る。 

ウ.ア.項およびイ.項の結果から,設備の許容津波高さを評価する。 

 

c. 各起因事象の発生に係る津波高さの特定 

a.項において選定した各起因事象について,b.項において求めた各設備の許容 津波高さの評価結果から,各起因事象の発生に係る津波高さを特定する。 

 

d. 影響緩和機能の抽出および収束シナリオの特定 

起因事象の発生に係る津波高さが小さい順に起因事象を選定し,その起因事象 に対して,事象の影響緩和に必要な機能を抽出し,イベントツリーを作成し,事 象の進展を収束させるシナリオを特定する。 

イベントツリーの作成にあたっては,これまでのPSAで用いられている成功 基準,事故シーケンス分析の結果に基づき展開された各起因事象に対するイベン トツリーを基本とする。 

 

e. 影響緩和機能に関連する設備の抽出およびその許容津波高さの評価  (a) 影響緩和機能に関連する設備の抽出 

S2 5.2 R0 

安全上重要な設備および燃料の重大な損傷に関係し得るその他の設備から,

d.項において選定した起因事象の影響緩和機能に関連する設備を評価対象設備 として抽出する(添付 5.2‑2)。具体的には,フロントライン系の設備(主要 設備)およびサポート系の設備(補助設備)について,各起因事象の影響を緩 和させるのに必要な設備を評価対象設備として抽出する。 

 

(b) 影響緩和機能に関連する設備の許容津波高さの評価  ア. 影響緩和機能に関連する設備の許容津波高さの評価 

(a)項において抽出した設備について,許容津波高さを評価する。 

なお,評価条件および評価方法については,b.(b)項と同様である。 

イ. 影響緩和機能の許容津波高さの特定 

d.項において特定した各収束シナリオに含まれる影響緩和機能の許容津波 高さを特定する。具体的には,各影響緩和機能のフォールトツリーを作成し,

各影響緩和機能を構成する各設備の許容津波高さを整理し,最も小さい許容津 波高さを当該影響緩和機能の許容津波高さとして特定する。 

 

(3) クリフエッジの特定 

a. 各収束シナリオの許容津波高さの特定 

(2)e.項において求めた影響緩和機能の許容津波高さから,各収束シナリオの許 容津波高さを特定する。 

なお,各収束シナリオの許容津波高さは,必要な各影響緩和機能の許容津波高 さのうち,最も小さいものとなる。 

 

b. クリフエッジの特定 

a.項において求めた収束シナリオの許容津波高さから,当該起因事象のイベン トツリーの許容津波高さを特定する。当該起因事象のイベントツリーの許容津波 高さは,イベントツリーに収束シナリオが複数ある場合には,それらのシナリオ の許容津波高さのうち,最も大きいものとなる。 

各起因事象のイベントツリーの許容津波高さの中からクリフエッジを特定する。 

クリフエッジは各起因事象のイベントツリーの許容津波高さのうち,最も小さ いものとなる。 

なお,(2)a.項において,燃料の重大な損傷に至るすべての起因事象を抽出して いるが,それぞれの起因事象に至る損傷対象設備が異なる結果,起因事象の発生 に係る津波高さも異なった値となることを踏まえると,クリフエッジを評価する ためには,(2)a.項において抽出された起因事象に対して,起因事象の発生に係る 津波高さの小さい起因事象から順にクリフエッジが特定されるまでの評価を実施 すればよい。つまり,発生に係る津波高さが最も小さい起因事象のイベントツリ ーの許容津波高さが,次に発生する起因事象の発生に係る津波高さ以下となる場

関連したドキュメント