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発達障害児者の支援とアセスメントに関するガイドラインの作成

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上記調査事業の結果およびこれまでの国内外の研究知見を踏まえ、発達障害児者の支援 とアセスメントに関するガイドラインを作成した。発達障害の客観的な診断基準や知能検 査に加えて、これまで取り上げられることが少なかった「現実の生活場面への適応」に必 要となる「適応行動の評価」の解説も取り上げ、今後の発達障害福祉に重要な貢献を果た すガイドラインとなることを目指した。作成にあたっては、これまで多くのアセスメント ツールの開発に携わってきた小児精神医学・臨床心理学領域の代表的な研究者が執筆を進 めた。以下に、ガイドラインの目次と執筆者を示す。なお、ガイドラインは成果物として 別に添付した。

目次と執筆者(敬称略)

第1章 発達障害児者の支援とアセスメントに関するガイドライン[要旨]

第2章 発達障害児者の心理アセスメントの現状と有効な活用の仕方 第1節:福祉機関における心理アセスメントの活用の実態

アンケート調査による実態

(伊藤大幸・松本かおり:浜松医科大学)

福祉領域における心理アセスメント活用の課題

(田中尚樹:NPO法人アスペ・エルデの会)

アセスメントツールを用いることの重要性(1):数値化することの意味

(代表村上隆:中京大学)

アセスメントツールを用いることの重要性(2):信頼性・妥当性の解説

(代表村上隆:中京大学)

アセスメントツールを用いることの重要性(3):Q&A

(代表村上隆:中京大学)

第2節:心理アセスメントを活用することの有効性 心理アセスメントとは

(明翫光宜:中京大学)

環境状況の悪化が発達に及ぼす影響

(山村淳一:浜松医科大学)

触法リスク

(望月直人:浜松医科大学)

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第3章 発達障害領域でよく使用されるアセスメントツール 第1節:知能検査・発達検査

[個別式検査]

ウェクスラー式知能検査 (岡田智:北海道大学)

ビネー検査 (代表井上雅彦:鳥取大学)

K式発達検査 (清水里美:平安女学院大学短期大学部保育科)

ベイリーⅡ乳幼児発達検査(中澤潤:千葉大学)

K-ABC (石隈利紀:筑波大学)

[質問紙による検査]

ASQ (橋本圭司:国立成育医療研究センター)

その他の知能検査・発達検査【津守式発達検査・遠城寺式発達検査・KIDS】

(永田雅子:名古屋大学)

知能検査・発達検査の総括 (染木史緒:ニューヨーク市立大学)

第2節:適応行動(生活能力)のアセスメント

Vineland適応行動尺度Ⅱ (萩原拓:北海道教育大学)

その他の適応行動(生活能力)の検査【SMと旭出】

(名越斉子:埼玉大学)

適応行動のアセスメントの総括

(染木史緒:ニューヨーク市立大学)

第3節:情緒と行動の問題のアセスメント

CBCL・TRF (井潤知美:大正大学)

SDQ (平澤紀子:岐阜大学)

ABC-J (小野善郎:和歌山県精神保健福祉センター)

感覚プロフィール (岩永竜一郎:長崎大学)

反復行動尺度修正版 (稲田尚子:国立精神神経センター)

不適応行動のアセスメント:強度行動障害

(野村和代:浜松医科大学)

不適応行動のアセスメントの総括

(井上雅彦:鳥取大学)

第4節:ASDのアセスメント

M-CHAT (稲田尚子:国立精神神経センター)

PARS (安達潤:北海道教育大学)

CARS (黒田美保:淑徳大学)

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PEP (三宅篤子:国立精神神経医療研究センター)

TTAP (梅永雄二:宇都宮大学)

DISCO (内山登紀夫:福島大学) ADI-R (土屋賢二:浜松医科大学)

ADOS (黒田美保:淑徳大学)

AQ (黒田美保:淑徳大学)

ASDアセスメントツールの総括(黒田美保:淑徳大学)

第5節:ADHD・LD・DCDその他のアセスメント ADHD-RS、Conners3

(田中康雄:こころと育ちのクリニック むすびめ)

Conners' Adult ADHD Rating Scales:CAARS

(染木史緒:ニューヨーク市立大学)

LDI-R (海津亜希子:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)

全国標準学力検査NRT/集団基準準拠検査

(伊藤大幸:浜松医科大学)

音読検査 (小枝達也:鳥取大学)

言語系のアセスメント:ITPAやPVT

(大岡治恵:日本福祉大学中央福祉専門学校)

読み書き/計算のアセスメント

(野田航:浜松医科大学)

運動機能のアセスメント:DCDQ、M-ABC2

(中井昭夫:福井大学)

日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP)

・日本版感覚統合検査(JPAN)

(岩永竜一郎:長崎大学)

第4章 アセスメントツールの活用の仕方 発達障害の発見、診断のためのアセスメント

第1節:知的障害 (宮地泰士:あけぼの学園)

第2節:ASD (涌澤圭介:宮城県拓桃医療療育センター)

第3節:ADHD (竹林淳和:浜松医科大学)

第4節:LD (小枝達也:鳥取大学)

第5節:DCD (中井昭夫:福井大学)

第5章 支援計画のためのセスメントの活用

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第1節:知的障害 (小笠原恵:東京学芸大学)

第2節:ASD (白石雅一:宮城女学院大学)

第3節:よく見られる併存障害:ADHD/LD/DCD (岩永竜一郎:長崎大学)

第6章 発達障害のアセスメント事例

(1)乳幼児の健診がきっかけで医療に来談したASD:1歳半・3歳 (黒田美保)

(2)乳幼児健診のケースASD以外の発達障害:1歳半・3歳

(浜松医科大学地域支援ネットワーク室)

(3)乳幼児健診のケース 知的障害

(小笠原恵:東京学芸大学)

(4)就学時検診が絡んだケース:5歳

(稲田尚子)

(5)就学時検診が絡んだケース:5歳

(浜松医科大学地域支援ネットワーク室)

(6)学童期:ASD (アスペ・エルデの会ディレクター)

(7)学童期:不登校・行動上の問題

(斎藤真善:北海道教育大学)

(8)不器用:乳幼児期と学童期

(代表岩永竜一郎:長崎大学)

(9)青年期・成人期のASD・ADHD:中高生と成人

(アスペ・エルデの会ディレクター)

(10)成人期:強度行動障害

(野村和代:浜松医科大学)

第7章 アセスメントの展望

第1節:発達障害の精神医学的診断学とバイオマーカーの展望 ASDの精神医学的診断 (内山登紀夫:福島大学) ASDのバイオマーカー (松崎秀夫:福井大学)

ADHD・LD・DCDの精神医学的診断

(市川宏伸:東京都立小児総合医療センター)

ADHD等のバイオマーカー(竹林淳和:浜松医科大学)

発達障害の精神医学的診断学とバイオマーカーの総括

(森則夫:浜松医科大学)

第2節:心理アセスメントから支援プランの策定

(辻井正次:中京大学)

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発達障害児者の支援とアセスメントに関するガイドライン作成のまとめ

発達障害児者についてのアセスメントの実態調査から、特に障害児者福祉事業所におい て、有効なアセスメントの実施ができていない現状が明らかになった。従来、発達障害児 者のアセスメントに関しては、主として医療モデルの中で、①障害の診断や障害特性把握 のために用いられるものや、②教育モデルなどのなかで、障害児者のもつ知的能力などの 能力把握を行う、という2つの側面での使用が中心で、実際に障害児者福祉で必要とされ る、③(障害の度合いの把握と必要な支援提供につながる)生活状況や適応状況の把握が、

支援者の教育・研修においても、実際の障害程度認定から個別支援計画作成に至る過程に おいても、十分に活用されてこなかったことが明らかになったと言える。

また、①障害の診断や障害特性把握においても、わが国においては診断は医師がするも のであるが、客観的な信頼性・妥当性を有するアセスメントツール、特に、Gold Standard と呼ばれるようなツールにおいては、世界標準の障害特性把握が可能であり、専門医が不 足する中では、効果的な支援のためにも、有効活用されなければならないが、発達障害の 代表的な評価尺度はここ数年にやっと日本語版が整いつつある現状であり、今後の普及が 必要となっている。

②能力把握に関しては、臨床心理学領域では、知能検査やパーソナリティ検査において、

一定の伝統があり、教育研修も行われてきているが、こうした部分でのアセスメントが障 害特性把握と混同されて、知能検査のプロフィールから診断的なことを言及する場合もあ り、発達障害のアセスメントのなかでの位置づけを明確にする必要性がある。

③生活状況や適応状況の把握に関しては、障害福祉領域を中心に必要とされているのだ が、今まで世界標準の評価尺度がなく、そのために高機能広汎性発達障害などの知的障害 はない発達障害に対する支援が提供できない問題が生じていた。日本語版の標準化ができ た今、普及を進めることが必要である。

発達障害児者のアセスメントステップ

<1>障害の診断と障害特性把握・・・標準化された信頼性妥当性のあるツールの活用

<2>障害程度の把握と支援ニーズの把握 ⇒ 生活状況・適応状況の把握・・標準化さ れた信頼性妥当性のあるツールの活用。適応状況から把握することで必要な支援が明確に なる。過敏性や強度行動障害など不適応状況に関する把握も必要である。

<3>発達状況・能力把握・・・支援の基盤として、知能(認知)・コミュニケーション・

運動機能等の実態の把握を加味することで、現実的な支援の内容を位置づけられる。

<4>環境アセスメントとして、家庭環境や家族の養育機能、支援機関・施設の支援力量 などの把握も必要である。家族・支援者に実施可能な支援計画でることも重要である。

<5>以上、<1>から<4>のステップを理解し、特に<1><2>においては、一定 の客観的なツールを用いて、すべての支援者が実施できるようにする必要がある。

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