1
Ⅲ 疫学・予後
Ⅲ
1発生率・有病割合,年齢別・性別・病因別割合
ローゼ新規診断登録数は約 3,600 件で主病態であっ たものが 2,700 件であると推定された
b).
有病割合(全人口におけるネフローゼ症候群の罹 患患者数の割合)についての情報は得ることができ ていない.
本情報に資するデータは腎臓病総合レジストリー 登録から得られている
c).2007 年 7 月~2015 年 6 月 までの登録症例 29,495 例のうち,CGA 分類の G stage 解析不能例などを除いた 25,668 例の検討では 全体の 29.1%に相当する 7,480 例がネフローゼ症候 群で,このうち 91.7%に相当する 6,857 例に腎生検 が施行されていた(=J—RBR登録症例).J—RBR登録 例のうち,CGA 分類でハイリスク群に分類される 成人患者の 27.8%がネフローゼ症候群であった.
ネフローゼ症候群の性別・年齢別分布を図 1 に示 す.わが国のネフローゼ症候群は 10 歳代に小さな
ピークと60~80歳に大きなピークの2峰性分布を示 し,高齢者に多い疾患であり,このピーク層では男 性患者が多いことがわかる.
ネフローゼ症候群の病因別分布を図 2 に示す.ネ フローゼ症候群の約 60%は一次性糸球体疾患(IgA 腎症を除く),約 5%が IgA 腎症,約 25%が二次性 であることがわかる.一次性糸球体疾患(IgA 腎症 を含む)の全ネフローゼ症候群に占める割合に男女 差はあまりない.
二次性は糖尿病性腎症とループス腎炎が多く,ア ミロイド腎症が続くが,前 2 者の割合は男性ではそ れぞれ 11%,2%で糖尿病性腎症が圧倒的に多いが,
女性ではそれぞれ 6%,11%とループス腎炎が多い ことが特徴である.ただし,糖尿病性腎症は腎生検 されることがそもそも少ないため,選択バイアスの 存在は否定できない.
ネフローゼ症候群の病因別分布を年齢別にしたも のが図 3 である.一次性糸球体疾患(IgA 腎症を除 く)が全ネフローゼに占める割合は若年者(~30 歳)
2)年齢別・性別・病因別割合
Ⅲ.疫学・予後
表 1 2014 年度アンケート調査回答 568 診療科における新規ネフローゼ症候群受療患者数および腎生検数 n
診療科別 所属施設属性
全回答
診療科 内科 小児科 泌尿器科 その他 日腎教育責任者
所属施設
JRBR/JKDR 参加施設 568 科 242 科 85 科 235 科 6 科 221 科 105 科
一次性 NS 2,529 2,074 362 71 22 2,031 1,096
上記のうち腎生検施行
(施行率%)
1,657
(65.5%)
1,469
(70.8%)
127
(35.1%)
40
(56.3%)
21
(95.5%)
1,437
(70.8%)
727
(66.3%)
難治性 NS 384 313 57 12 2 307 171
全腎生検数 10,166 8,094 1,058 726 288 8,421 5,146
(二次資料 a)より引用,一部改変)
表 2 2007~2014 年のアンケート調査から推計したわが国における腎生検件数,ネフローゼ症候群発生数の推移
年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
腎生検数 17,000~
21,000
19,000~
20,000
18,000~
21,000
17,000~
19,000
17,000~
21,000
20,000~
22,000
20,000~
22,000
一次性 NS 5,900~
6,200
5,400~
5,900
4,600~
5,200
4,100~
4,600
4,600~
5,200
4,500~
5,000
4,900~
5,400 難治性 NS 1,200~
1,400
1,000~
1,200
1,000~
1,100
800~
900
800~
900
800~
900 800 800~
900
(二次資料 a)より引用,一部改変)
エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン 2017
図 1 ネフローゼ症候群(7,477 例)性別年齢層分布 1,800
1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0
100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 70~79 80+ 0 60~69
50~59 40~49 30~39 20~29 10~19
<10 <10 10~1920~2930~3940~4950~5960~6970~79 80+
女 男
(%)
(例)
女
男
図 2 ネフローゼ症候群基礎疾患(6,857 例)
一次性糸球体疾患(IgA腎症を除く)
IgA腎症 糖尿病性腎症 ループス腎炎 アミロイド腎症 紫斑病性腎症 感染症関連腎症 MPO-ANCA陽性腎炎 高血圧性腎硬化症 アルポート症候群 血栓性微小血管症 移植腎抗GBM抗体型腎炎 PR3-ANCA陽性腎炎 その他(備考入力)
59%
5%
6%
2% 4%
0%0%
0%
0%0%
1%1%1% 12%
一次性 64%
9%
60%
6%
2%2% 3%
2%1%
1%0%
0%0%0% 0%
12%
56%
5%
11%
2% 4%
1%1%
1%0%0%
0% 0% 0%
13%
一次性 60.5%
一次性 66%
11%
6%
女性 男性
Ⅲ
1発生率・有病割合,年齢別・性別・病因別割合
では約80%以上を占めるが,中年~高齢では約60%
と低くなること,IgA 腎症は年齢に偏りなく存在す る の に 対 し, ル ー プ ス 腎 炎 は 20~50 歳 に 多 く
(~20%),糖尿病は中高年(40 歳~),アミロイド腎 症は高齢者(70歳~)に多いことがわかる.65歳以上 の高齢者ネフローゼ症候群を対象とした解析では,
膜性腎症 36.5%,微小変化型ネフローゼ症候群 13.4%であり,ついで糖尿病性腎症(9.9%),アミロ イド腎(7.6%)と難治性糸球体疾患の占める割合が 高かった
1,2).80 歳以上の超高齢者ネフローゼ症候群 に限定した集計では,膜性腎症が 28.1%,微小変化 型が 11.9%,アミロイド腎が 11.9%,巣状分節性糸 球体硬化症が 7.5%,糖尿病性腎症が 6.3%であっ た
3).
最後に,一次性ネフローゼ症候群の病理診断とそ の年齢別分布を図 4 に示す.ネフローゼ症候群全体 では微小変化型ネフローゼ(約 40%)が最多で,つい で膜性腎症(約 30%)が多く,巣状分節性糸球体硬化 症(約 10%),メサンギウム増殖性腎炎(約 8%),膜 性増殖性糸球体腎炎(約 4%)と続く.しかし,この
分布は年齢によってかなり差があり,微小変化型は 若年層で 60%以上を占める(未成年では 80%近く)
が,60 歳以降の高齢では 20%程度まで割合が下が る.一方,膜性腎症は若年層ではほとんどいないが,
30 歳以降に増加し,60 歳をピークとして 60 歳以上 の 60%近くを占める中高年者の疾患であり,巣状分 節性糸球体硬化症とメサンギウム増殖性糸球体腎炎 は年齢によらず 10%程度を維持する疾患であるこ とがわかる.
参考にした二次資料
a. 旭 浩一.厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研 究事業(難治性疾患政策研究事業)「難治性腎疾患に関する調 査研究」分担研究報告書疾患登録・調査研究分科会 「重点 疾患 2014 年度新規受療患者数調査ならびに経年的推移の検 討」
b. 渡辺 毅.厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研 究事業(難治性疾患政策研究事業)「難治性腎疾患に関する調 査研究」分担研究報告書疫学・疾患登録分科会 「全国疫学 アンケートと DPC データベースを利用した患者数調査」
c. 腎臓病総合レジストリーレポート一覧(http://www.jsn.
or.jp/member/registry/report.php)
b. 追加資料:ネフローゼ症候群資料(http://www.jsn.or.jp/
news/160617_kp—2.pdf)(2016.7.15 にアクセス)
Ⅲ.疫学・予後
図 3 ネフローゼ症候群基礎疾患・年齢層分布(移植腎・
その他を除く 6,017 例)
70~79 80+ 60~69
50~59 40~49 30~39 20~29 10~19
<10 100
90 80 70 60 50 40 30 20 10 0
(%)
PR3-ANCA陽性腎炎 抗GBM抗体型腎炎 血栓性微小血管症 アルポート症候群 高血圧性腎硬化症 MPO-ANCA陽性腎炎 感染症関連腎症 紫斑病性腎症 アミロイド腎症 ループス腎炎 糖尿病性腎症 IgA腎症 原発性糸球体疾患
(IgA腎症を除く)
図 4 一次性ネフローゼ症候群病理診断・年齢層分 布(4,367 例)
70~79 80+
60~69 50~59 40~49 30~39 20~29 10~19
<10 1,000
900 800 700 600 500 400 300 200 100 0
その他(備考入力)
急性間質性腎疾患 腎硬化症硬化性糸球体腎炎 管内増殖性糸球体腎炎 半月体形成性壊死性糸球体腎炎 メサンギウム増殖性糸球体腎炎 膜性増殖性糸球体腎炎(Ⅰ型,Ⅲ型)
膜性腎症巣状分節性糸球体硬化症 微小糸球体変化
MN 33%
MPGN 4%
FSGS 11%
MCNS 41%
引用文献
1. 厚生労働省難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する 調査研究班難治性ネフローゼ症候群分科会.日腎会誌
2011;53:78—122.
2. Fujimoto S, et al. Am J Kidney Dis 1991;17:687—92.
3. Yokoyama H, et al. Clin Exp Nephrol 2012;16:903—20.
エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン 2017