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問題と目的前章では自己開示を必要に応じて用いることがメンバーの不安を低減し、
ファシリテーターの個人としての面に触れることを促進するのではないか、
そして受容・傾聴だけでは不十分な研修型の問題に対する 1つの対応方法に なり得るのではないかと示唆された。
また、互いに印象をフィードバックし合うことがきっかけとなって個人的 な問題意識を語るようになった。ということは、ファシリテーターとしては 印象を互いにフィードバックし合う流れを作るよう促すべきではないだろう か。そのためにはファシリテーターがメンバーに対して印象をフィードバッ クする、すなわち、メンバーに対して感じた疑問や印象をメンバーに問いか けることが有効ではないだろうか。
本章の事例では、 E Gやファシリテーターについて「分からない」という メンバーの不安感を出来るだけ拭えるように、ファシリテーターが情報の開 示という面を含めた自己開示を可能な範囲で積極的に行い、メンバーについ て感じた印象や疑問などを問いかけることに重点を置いたファシリテーショ ンを行っている。それが問題意識性をどのように高めるのか検討する。
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事例F
【概要】
メンバーである看護学生は2年生の女子で、 20オ前後、総数40名である。
4日間にわたり、 11セッションあり、学生は4グループに分けられ、それぞ れに1人のファシリテーターがつく。メンバーの振り分けは、第1セッショ ンのオリエンテーションの際、ポディワークをしながら行う。場所は看護学 校から車で2 3時間ほど離れた自然の豊かな温泉町のホテルである。 EG に関する資料として、連絡用紙と人間関係研究会のワークショップ・プログラ
第4章疑問や印象の問いかけを重視した事例
ム案内の小冊子が学生に配られている。連絡用紙には 体験学習(エンカウ ンター・グループ) と銘打ってあり、目的として 自分と他人を知り新しい 対人関係を結ぶ基とする とある。
【経過】 (アルファベットはメンバーのことを指す。<>は筆者の発言、
「」はメンバーの発言)。
第1セッション(1日目、 14:30‑17:00)
筆者が先ず説明としてくEGは自己理解、他者理解のためのグループで、
普通は話をする。何を話すかは決まっていない。グループによって違う>旨 の簡単な説明をする。すると、メンバーはお互いをみてニャニャしたり、う つむいたりしながら、全体で「何しようか」 「明日の予定を話し合おうか」
と決まらない様子である。そのうちKが「先ず、自己紹介でもしようか」と 提案し、数名が「じゃあ先生(筆者)から始めて欲しい」と言う。
筆者:くやっぱり、ファシリテーターのことを少し聞かないと落ち着かない 感じだろうね。皆んなが全然知らない人が1人ぼつんといるんだからね。で も自己紹介としてはオリエンテーションのところで既にしているから、皆ん なが知りたいことを尋ねてよ>
と言ってメンバーに質問したいことを質問してもらう。これには筆者が一 方向的に話すのではなく、メンバーが実際に口を開いて質問してもらうこと で、この場で話すことに慣れてもらいたい、という意図があった。メンバー からは年齢、住所、家族、仕事、その他、沢山の質問があり、筆者はそれに ついてしつかりと答え、答えにくいものについてはくそれは、ちょっと恥ず かしいというか、抵抗があるねえ>などと、答えにくい気分を率直に言葉に した。メンバーは安心したのか「こんなところかな。じゃあ私たちは自己紹 介というより、 他己 紹介をします」と言う。他己紹介の途中でもメン バーは「先生は〜についてはどう思うか」など、筆者の考えを質問してく る。それに対し、筆者は出来るだけ感じているままをしつかりと答えるよう にした。その上で、メンバーに質問を返すようにする。
数名:「私たち看護学校の学生を先生はどう思いますか。大学生と比べて」
筆者: <皆んな、考え方とか価値観とかよく似ているという感じがある>
多数: 「そう、私たち、看護学校に飼い馴らされとるんよ」
筆者:くその点、〜さんはどう思うの>
このように尋ねていくと、メンバーそれぞれが自由に話し始める。そし て、他己紹介された内容について筆者が感じたことをく〜さんは〜と言われ て驚かなかった>などと問いかけると、それぞれ更なる印象フィードバック が進む。その途中に筆者が次のように疑問を問いかける。
筆者:く (KとYに) KさんはYさんに〜と言われて意外ということは、お 互い、余り知らないの? 話せんの? >
K•Y: 「うん、あんまり話さんよね」
G: 「おーおー、いきなり険悪やね」
K: 「うん、でも、そんなに話さんしね。あんまり知らん。ほかの人で何か 言ってあげて」
B: 「(Yは)私が実習で悩んどったら、一緒に泣いてくれたと。それが一 番嬉しかった」
Y:「(目が涙で潤む)。皆んなから言われたらドキドキする(嬉しそうな 表情)」
このように時にしんみりとし、時に泣きながら、そしてごくたまに爆笑が 起こりながらの印象フィードバックが進み、全員の紹介が終わる前にセッ
ション終了の時間になる。
第2セッション (1日目、 19:00‑22:00)
第2セッションでも他己紹介は続くが、話が脱線しがちになり、お互いを 紹介するエピソードも笑いを誘うようなものだけに限られていった。また、
第1セッションでは起こらなかった沈黙が起こったりして、全体の雰囲気が だれてきた。脱線してだれたその雰囲気を軌道修正しようとして 2、3名の メンバーが真剣にコメントや質問をしたり、他己紹介の進め方について「順 番ではなく、自然に話せばいいんじゃない」と言ったりした。しかし、楽し い話をしようとする全体の勢いは止まらなかった。筆者はこの脱線した流れ
第4章 疑問や印象の問いかけを重視した事例
をどうにかしようとして、他己紹介の最後の 2人になった時、筆者がく順番 でこうして話していくのはやめようか>と全体に問うた。しかし、勢いのあ るメンバーによって「あと、 2人やけ、もう最後までやってしまおうや」とい う声によって残った 2人への他己紹介も何となく惰性で行われた。それが終 わると、すぐに居心地の悪い沈黙が起こる。そのうちに、それまで話を脱線 させて、楽しい話だけをしようとしていたメンバーのうち、特に勢いのあっ たY、I、Gなどが「きつい」 「暑い」という表情を明らさまに表わしてい る。また、そして Iが「この沈黙が好かんっちゃん」と言う。決まりが悪 く、居心地の悪い沈黙や勢いのない雑談がごそごそと起こる。
筆者:くこんな風に進むエンカウンター・グループはどう? > 数名: 「きつい」
y:「 自分と他人を知る という目標がバーンと掲げられたら、何かそれ を達成せんと私たちが何をしても意味がないみたいでイヤ。もっと自然に話 せばいい」
数名:「そうそう」
K:「雑談でもいいと思う。自然に出てくるなら」
数名: 「うん、でも、こんな話ならいつでも出来るしね」
K: 「そうやね」
M:「人のことを理解する、という目標はいいけど、そのために何をしたら いい、というのがないけん、何したらいいか分からん」
G:「そう、私は、それぞれのセッションで何かすることが決まっとる、と 思っとった」
多数: 「どうしたらいいかねえ。時間をどう使おうか。明日何しようか」
雪合戦、テニス、卓球を午前から午後にかけて行い、夜に話をする、など の案がメンバーから出てくる。
筆者:くそうねえ、そうやって時間をつぶさないと、時間があり過ぎて>
その後、 E Gについてのメンバーの当初の予想との違いに対する不満が一 段落する。
筆者:くBさんやTさんは今、何も言わなかったけど、どう? こういうの
は>
B: 「私のいいところを言ってもらえたのが嬉しい。もっと言ってもらいた いし、それをこれからの先に役立てたい」
筆者:く第 1セッションで色々と言ってもらっていて、それが良かった、
と>
B: 「うん。もっと深いことも言って欲しい。良くないところとかも言って 欲しい」
T:
「私は実習のとき、患者さんとの関わりのことで病棟主任に怒られて泣 いてしまった。その時はきつかったけど、それが後になってよかった。そう やなあ、と納得できた。だから私の問題のあるところとか、皆んなから教え てもらいたい」その後、翌日の予定のことが話題になった。それまでは昼間全体を逸楽行 動に使おう、と言っていたのが、 「1時間くらいは体を動かそう」というこ
とでメンバーの話がまとまる。
N: 「私たちだけでなく、先生(筆者)にも話してもらいたい」
K: 「うん、今のままでは私たち10人と先生l人という感じ」
筆者:くそうだろうね。僕もそんな感じがする>
多数:「でも、私たちの病院実習の話とか、先生、分からないでしょ?」
筆者:く正直言って分からないところはあった。ただ、何となく感じたの は、実習中のいろいろな思いとか不満とかをここで話すことで消化している 感じがする>
K:「もっと自由に話せばいいと思う。例えば今すぐにでも遊びに行きたい と思う人は、そう言えばいい。 Bとかもジ一つと黙っとらんで。喋る人が多 い。ここは」
G: 「そう、だからBとか1人黙っとるけ、喋りたいことがあるけど、黙っ とるんか、話さんでもいいと思って話さんのか、私たちみたいによく喋る人 間には分からんのよねえ」
K: 「(Bに)喋りたいけど、どう話に入ったらいいんか分からんの?」
B: 「そういう時もあるし、ボーつとしとる時もある」