天下りではあるが,以下の定義から始める
関数f, gに対して,以下の関数h(t)をf, gの畳み込み(または合成積,convolution)といい,f∗gと書く:
(f∗g)(t) = Z t
0
f(t−τ)g(τ)dτ = Z t
0
f(τ)g(t−τ)dτ (2.5.1)
注意:考えている問題によって,積分の範囲は(0, t)だったり,(−∞,∞)だったりする.今はt≥0 で定義され た関数を主に考えているので,積分範囲(0, t)になっている[上の積分で f, g 両方の引数が非負であるためには,
0≤τ ≤t が必要十分].
畳み込みはいろいろな場面に出てくる.皆さんがよく知っているはずの電磁気学の例では:
(問)空間中に電荷密度ρ(y)で電荷が分布している.この電荷分布が点xにつくる静電ポテンシャル を求めよ.
(答)点yの単位点電荷がxに作るポテンシャルは 4π|x−y|1 だから,これを空間全体でρ(y)で足し合 わせる(積分する)と良い.答えは
φ(x) = 1 4π
Z
R3
ρ(y)
|x−y|dy (2.5.2)
この例では静電ポテンシャルが密度ρとクーロンポテンシャル|x−y|−1の(3次元空間での)畳み込みで書かれ ている.このように畳み込みは「ある点(時刻)での効果が空間(や時間)を超えて別の点(時刻)に伝わってい く様子」を記述する際に良く出てくる.
さて,この「たたみこみ」とラプラス変換には以下の関係がある:
上で使ったf, g, hのラプラス変換をF, G, H とすると,
H(s) =F(s)G(s) (2.5.3)
である.つまり,畳込みをラプラス変換した結果はラプラス変換の積になるのだ.
これは逆ラプラス変換を求める際に,非常に重要である.すなわち,何か積の形になっている関数を逆ラプラス変 換すると,結果は畳み込みになっているはずだからだ.
(今日はちょっと疲れ気味でノリが悪いので,プリントはここまで...)
1月26日:大切な連絡:期末テストについてだよん.
• 期末テストは,教務課の掲示通りに行う.(多分,2/9の2限,防音103 にてと思われるが,各自,確認 のこと.)
• 範囲は今までやったところ(今日の後半は除く).具体的には以下のような,微分方程式に関連する話題 が中心になろう.
– 変数分離形の微分方程式はどう解くか – 定数係数の線形斉次方程式はどう解くか
– 非斉次線形方程式はどう解くか(定数変化法,ズルイ方法)
– 線形常微分方程式の一般的性質
– ラプラス変換について(基本的性質,移動定理とかね)
– ラプラス変換の線形常微分方程式への応用
早い話が,中間試験の範囲に「ラプラス変換とその常微分方程式への応用」をたしたものが範囲.
• 以下の要領で,持ち込みを認める.
1. 持ち込めるものはA4の大きさの紙の片側のみに書いたもの一枚のみ.裏側まで書いたものは無効 である.
2. 他人の持ち込み用紙や教科書・参考書をコピーしたものは認めない.ただし,ワープロなどで自分 でうったものは認める.この理由は,持ち込み用紙を準備することで自分の知識を整理することを 期待しているからである—他人のものをコピーしても知識の整理にはならんでしょ.
3. 持ち込んだ紙には名前と学生番号を書いて,答案用紙と共に提出すること.(持ち込み無しで試験を 受けようと言う人も,白紙に名前と学生番号を書いて提出してください.)
なお,君たちの用意する持ち込み用紙以外に「基本的な関数のラプラス変換とその逆変換の表」(教科書 p.7の表1.1など)は問題用紙と共に配る—または表無しでも解けるような誘導を考える—から,各 自で用意する必要はない.
————————————————— 先週のレポートの解答 —————————————
例によって,問題の微分方程式の両辺をラプラス変換する.階段関数やデルタ関数のラプラス変換にも注意して やっていくと(初期条件も入れた;ここの段階が既にアヤシイ人は,自分で頑張って理解するか,後で質問に来る こと)
(s2+ 5s+ 6)Y = 1 +e−2s+e−s s
を得る.両辺をs2+ 5s+ 6 = (s+ 2)(s+ 3)で割ってから部分分数に分けると,
Y(s) = 1
s+ 2− 1
s+ 3 + e−2s
s+ 2− e−2s s+ 3+1
6 e−s
s −1 2
e−s s+ 2+1
3 e−s s+ 3
となる.後はこいつをラプラス逆変換すればよいのだが,今までに見たこともないようなのがいくつか入ってるの が新しいところ.
まず,最初の2項は良く出てくる奴で 1
s+ 2− 1 s+ 3
ラプラス逆変換
−−−−−−−−→ e−2t−e−3t
だ(ここは教科書p.7の表をカンニング).問題は次からの e−as
s+b の形のものだね.これについては第2移動定理 を用いると,
L−1 ne−as
s+b o
(t) =L−1 n
e−as 1 s+b
o
(t) =L−1 n 1
s+b o
(t−a) ×u(t−a) =e−b(t−a)×u(t−a)
と計算できる.最後のところでは s+b1 のラプラス逆変換がe−bt であることを用いた—ただし,ここで引数をtか らt−aにずらすのを忘れてはいけない!
これをもちいてY(s)の残りの項をラプラス逆変換すると,最終結果が y(t) =e−2t−e−3t+h1
6 −1
2e−2(t−1)+1
3e−3(t−1)i
u(t−1) +£
e−2(t−2)−e−3(t−2)¤
u(t−2)
となる.なかなか大変だったね.(注意:講義で配ったプリントでは上の式中,1/6の位置が間違っていました.指 摘してくれた人,どうもありがとう.上の式では訂正済みです.)
参考までに解のグラフを書いてみると以下のような感じ.比較のために,同じ初期条件の斉次の解も書いてみた
(点線).t= 1から外力がかかりだして斉次の解からズレ,さらにt= 2で撃力がかかって大きく飛び跳ねる.し かし撃力の効果はそれほど持続せず,最終的にはu(t−1) = 1の外力に見合ったy(t) = 1/6 に近づいていく.この ように考えれば,u(t−1), u(t−2)が入っているのも納得である.
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3
1 2 3 4 5 6 7 8
t
なお,この問題は勿論,定数変化法でも解ける.uや δの積分はそれほど難しくない(少なくとも中間テストの 三角関数地獄よりは数段,楽)だから,一度やってみることをお奨めする.
————————————————— 以下,レジュメの続き —————————————
ここで微分方程式の一般論(幾何学的考察)について述べるつもりだったのだが,先週に引き続いて体調が良く ない(論文の追い込みでがんばりすぎたかな).僕のオフィスは以上に寒くて,これ以上続けると風邪をひきそう だ.というわけで,この部分は黒板でやり,最小限のまとめを来週に配ることにします.
2月2日:今日で講義は終わりです.半年間,お疲れ様.期末テスト,頑張ってね...前回も載せましたが,だ め押しでもう一回,期末について書きます.
• 期末テストは,教務課の掲示通りに行う.(多分,2/9の2限,防音103 にてと思われるが,各自,確認 のこと.)
• 範囲は今までやったところ(先週後半からの「微分方程式の一般論」は除く).具体的には以下のような,
微分方程式に関連する話題が中心になろう.
– 変数分離形の微分方程式はどう解くか – 定数係数の線形斉次方程式はどう解くか
– 非斉次線形方程式はどう解くか(定数変化法,ズルイ方法)
– 線形常微分方程式の一般的性質
– ラプラス変換について(基本的性質,移動定理とかね)
– ラプラス変換の線形常微分方程式への応用
早い話が,中間試験の範囲に「ラプラス変換とその常微分方程式への応用」をたしたものが範囲.
• 以下の要領で,持ち込みを認める.
1. 持ち込めるものはA4の大きさの紙の片側のみに書いたもの一枚のみ.裏側まで書いたものは無効 である.
2. 他人の持ち込み用紙や教科書・参考書をコピーしたものは認めない.ただし,ワープロなどで自分 でうったものは認める.この理由は,持ち込み用紙を準備することで自分の知識を整理することを 期待しているからである—他人のものをコピーしても知識の整理にはならんでしょ.
3. 持ち込んだ紙には名前と学生番号を書いて,答案用紙と共に提出すること.(持ち込み無しで試験を 受けようと言う人も,白紙に名前と学生番号を書いて提出してください.)
なお,君たちの用意する持ち込み用紙以外に「基本的な関数のラプラス変換とその逆変換の表」(教科書 p.7の表1.1など)は問題用紙と共に配る—または表無しでも解けるような誘導を考える—から,各 自で用意する必要はない.
(前回のレポートの解答にミスプリがありました.講義の直後に指摘されて訂正されたものですが,ここにも書 いておきます.間違いというのは,p.44の最初の大きい式で「最終結果が○○○」というところ,16 が大カッ コの中に入るべきなのに,外に出ていた,ということです.
なお,前回の講義でとった「講義アンケート」は(ついうっかり)そのまま事務室に提出してしまったので,
フィードバックができません.来年度の講義には生かしますので,ご了承を.まあ,「成績には反映しないよ」
という意味では教官が見ないで事務に提出するのが正しいのですが...
3 微分方程式の一般論(力学系の視点から)
この節の内容は完全なおまけである.今までは微分方程式の解をどのように求めるか,を延々とやってきた.し かし,完全に解ける方程式などホンの一部で,それ以外の大多数には全く別のアプローチが必要だ.ここではその ような試みの一端を紹介する.多分,将来,「非線形」常微分方程式を扱うときに少しは役に立つのではないかと期 待している.
まず,考える微分方程式を限定しておこう.考えるのはn未知数,一階の自励系とよばれる微分方程式で,(独立 変数をt,未知関数をy1(t), y2(t), . . . , yn(t)と書いて)
y01(t) =f1(y1(t), y2(t), . . . , yn(t)), y02(t) =f2(y1(t), y2(t), . . . , yn(t)), . . . , y0n(t) =fn(y1(t), y2(t), . . . , yn(t))
(3.0.1)
の形に書けるものである.(右辺にはtが陽に現れていないので,tへの依存性はy1(t), . . . , yn(t)を通してしか入っ てこない:これが「自励系」の意味である.)後の便利のためにベクトル~y(t)≡(y1(t), y2(t), . . . , yn(t))を定義して おこう.また,微分方程式の右辺にあるfiをまとめて f(~y(t) = (f~ 1, f2, . . . , fn)とも書く.すると,考えたい微分
方程式は d
dt~y(t) =f~(~y(t)) (3.0.2)
と書ける.