6. シミュレーション結果と観測データとの比較
7.6. 異常空間の影響によるレイの軌跡の変化
図7.5.2、図7.5.3のような屈折指数分布の異常空間を用いてレイトレーシングを行った
ときのレイの軌跡が図7.6.1、図7.6.2である。レイの軌跡が高さ y 方向へは変化してい るが、横 z 方向へは全く変化していないことが分かる。異常空間の屈折指数分布を (82)、(83)式で与えているため中心付近の屈折指数分布変化が小さいためであると考え、
xo はそのままので zo を z 方向に動かしてみたが結果は図7.6.2と同じであった。一
方、図7.6.3のような変化の大きい屈折指数から図7.6.4、図7.6.5のような屈折指数分布
の異常空間を用いて同様の解析を行ったところ z 方向への変化が現れ、異常空間の中心 が zo=±4km で最大となり、そのレイの軌跡が図7.6.6、図7.6.7である。 z 方向への 変化は見られるがその変化は数メートルほどの小さなものであり、また、高層気象台の観 測データで図7.6.3ほど大きい屈折指数変化は見受けられなかった。このことから、高層 気象台で観測される屈折指数データを用いてレイトレーシングを行う場合、 z 方向への レイの軌道変化はなく、受信点での受信電力は xy 平面の屈折指数分布のみで定まるた め3次元で解析を行う必要性はないものとする。
図 7.6.2:zx平面から見たレイの軌跡 図 7.6.1:xy平面から見たレイの軌跡
図 7.6.3:変化の大きい屈折指数
図 7.6.5:地表からの高さ300mのzx断面の屈折指数分布 図 7.6.4:z=0kmのxy断面の屈折指数分布
図 7.6.6:xy平面から見たレイの軌跡
図 7.6.7:zx平面から見たレイの軌跡
8. 結論
レイトレーシング法を用いることでラジオダクトとVHF帯電波伝搬異常との関係性を 検証した結果以下のことが分かった。
・異常空間の影響で受信電力が通常より上昇・下降するかはその横幅、厚さの大きさより も、中心位置や高さにより大きく左右される
・異常空間の位置と受信電力との関係には異常空間の高さごとに傾向があり、また, その傾向はレイの送信点の高さが高くなるとその分高い位置にある異常空間で現れる
・現実的なラジオダクトをモデルにしてレイトレーシングを行う場合、受信点での受信電 力は xy 平面の屈折指数分布のみにより定まるため、3次元で解析を行う必要性はない
9. 今後の課題
本稿では観測データとシミュレーション結果の比較を行ったが良い結果が得られなかっ たため、レイの軌道に影響を及ぼす屈折率分布以外の要因を考え、今の手法に加えること でレイトレーシングの精度を高めていきたい。また、現在観測を行っている東京タワー以 外の埼玉、茨城、千葉の電波伝搬についても解析を行い、地震の震源域特定につなげたい。
10. 謝辞
本研究を遂行するにあたり、3年間ご指導ご鞭撻頂きました本島邦行教授ならびに、同 じくご指導ご鞭撻いただきました羽賀望助教に感謝の意を表すとともに厚く御礼申し上げ ます。また、修士学位論文の主査を引き受けて下さった山越芳樹教授ならびに、副査を引 き受けて下さった弓仲康史准教授に厚く御礼申し上げます。そして、研究生活の支えと なっていただいた研究室の先輩・同輩・後輩の皆様方に心からの感謝と御礼を申し上げま す。また、本研究に用いた高層の気温・湿度などは気象庁の高層気象台気象データを利用 させていただきました。関係者各位に心から御礼申し上げます。