1. 『規律の書』における「監督」
5. 異なる見解 ― 監督職は「暫定的」か,それとも「永続的」か
したこの監督制度ゆえに,彼らを長老主義と呼ぶことはできない,との主張が展開されて いった。
共同提出者たちが,「その地域の責任を担うことになる牧師の任命等を行う責務と命令と をこれらの人々に与えることは,この時期極めて当をえていることと考える」44や「現今の 必要性にかんがみ,監督の指名,審査,任命は,われわれが現在要望し,またあとで規定 するほどには整然となしえないであろう。[改行]
したがって,現時点においては,…」
45(以 上の下線部は本稿の筆者による)と,監督を導入した当時の緊急的な状況を注視している 点に注目すべきである。実際,宗教改革に着手したばかりのスコットランドにとってはそ れが最善策である,と改革者たちは考えていた。しかし,監督を中心に据えた教会政治の ビジョンは,あくまでも理想的なビジョンに過ぎなかったことがすぐに判明していく。そ のため,結果的に20
年足らずで監督職は廃止されるに至った。この問題をめぐっては,現代のグラスゴー大学の教会史教授イアン・ヘイツレットは明 確に暫定的な職務として監督職が導入されたとするカークの見解の立場を支持し,これま でのドナルドソンらの見解に反論する。
少なくとも,牧師間の平等および長老制度的な規律という理念は
1560
年の改革者た ちの考えにとって中心的なものだった…監督職は本質的には,当時の状況下における 教会の健全のための,過渡期の急場しのぎの対策であり,実践的で,臨時の,巧みな 策略だった。その職務は永続的なものとして意図されたものでもなければ,すっかり 改革された歴史的な司教制度の回復に向けた前兆でもなかった。46振り子の様に,次は,ドナルドソンの見解を支持する論客が登場し,カークやヘイツレッ トの見解に反論する論述が現れてくるのかもしれない。
まとめ
監督職の導入は,1560年のスコットランド宗教改革の際立つ特徴の一つだったことは 紛れもない事実である。それゆえに,この職務をめぐっては数々の分析が行われ,議論が 交わされていった。ドナルドソンは,司教制度支持の立場から,スコットランド教会に中 世から連綿と続く教会制度の連続性・継続性に大きな関心を寄せつつ議論を展開した47。
44 注4と同じ,『規律の書』225頁。
45 前掲書,228頁。
46 W. Ian. P. Hazlett, op. cit., 127.
47 Ibid., 127. ヘイツレットはここでドナルドソンを「結果的に,非連続性よりも連続性に目を向け
ることで,またルター派を参考に地域教会の監督を導入することで,真正しく福音主義化された司
彼は「ジョン・ノックスが描き出した改革大綱の大部分は,当時の司教制度による教会統 治体制の下において,実施できると理解していた」48と述べ,ノックスの改革の念頭にあっ た監督制度は司教制度に他ならない点を,再三にわたり主張する。このような主張を繰り 返すことで,彼はスコットランド教会史の中で「長老主義の勝利」を過剰に演出してきた 従来の歴史観の枠組みを打破しようとしたのである49。実際に,彼の研究や著作は,内容 はとても興味深く,歴史的な分析も明晰で,スコットランド宗教改革を研究するうえで大 きな影響力を持つものとなった。例えば,日本でスコットランド宗教改革についてまとまっ た研究成果を発表した飯島啓二は,ドナルドソンの著作に基づいて,監督職の導入のゆえ に,「ノックスおよびスコットランド教会が,主教というタイトルの出現を承認している から,当時にあっては,長老主義的教会制度確立の意図がなかったと判断せざるを得な い」50と述べ,さらに「ジョン・ノックスの影響下に成立した教会は,教会制度の観点よ りみて,長老制度と呼ぶにふさわしくなく,むしろ,エピスコパシーの傾斜を含むもので あった」51と結論づける。しかし,20世紀も終盤になると,数々の教会史家たちが,多大 な影響力を持ったドナルドソンによる分析と見解に明白な異議を唱えるようになった。特 に,カークやヘイツレットら,グラスゴー大学に籍を置く教授たちだったことも興味深い。
監督職をめぐって歴史的に確実に言えるのは,この職務が
1560
年の導入から20
年足ら ずで廃止された事実である。1572年のジョン・ノックスの死後,全体教会総会(ジェネ ラル・アッセンブリー)は教会の制度をより一層改革することを決議し,『規律の書』の 改定刷新に着手した。その結果,1578年に『第二規律の書』が編纂され,全体教会総会 で承認され,教会制度はより明確に,現代的な長老制度(プレスビテリアン)へと発展し ていった。こうして,スコットランドでは,地方単位での自律的な教会の建設のために,教会政治の制度的中枢に監督を据えたビジョンから,プレスビテリーを中枢に据えたビ ジョンへと発展し,そして,監区としての地方・地域単位で,教会を形成し,牧師を立て,
福音を宣教する,というビジョンは『第二規律の書』に継承されていった。
教制度を導入する方針を反映させたと主張することで,ドナルドソンは宗教改革初期に関する司教 派の解釈を復興させた」と論じている。
48 G. Donaldson, Scotland Church & Nation through Sixteen Centuries, 78.
49 Ibid., 70-94.
50 飯島啓二,「スコットランド長老教会の成立に関する一考察」『国際基督教大学社会科学ジャーナ ル』vol. 3, 国際基督教大学,1962年,241頁。
51 前掲書,250頁。
2004年
倉松 功 学長(三代)
1967年3月 学科会議(於 キリスト教研究所)
1970年頃 山谷省吾教授(山谷文庫を前に)
1976年6月 佐藤敏夫教授を迎えて
1991年4月 キリスト教学科教員
1986
2003
1968年 修養会(青根セミナーハウス)
1968年春 福祉希望者講義(出村和子研究室)
1970年10月 修養会(作並国際センター)
1991年4月 始業礼拝後 1992年3月 卒業礼拝後
1993年4月 始業礼拝後
1994年5月 講義風景(土戸研究室)
1997年 修養会
1998年3月 修養会
キリスト教学科(1964 年 4 月〜 2014 年 3 月)資料
〔以下の資料は「キリスト教学科四〇年史」(『教会と神学』第
39
号)巻末「資料」に2014
年3
月までの10
年分を加えて作成したものである。〕(一) 教員組織の変遷
1966(昭和41)年4月18日 学科会議議事録より 学科主任 教授 小笠原政敏
教授 赤城 泰 教授 日下 一
教授 ウィリアム・C・メンセンディク 教授 茂泉昭男
教授 山谷省吾 助教授 浅見定雄 助教授 出村 彰 助教授 倉松 功 専任講師 川端純四郎 専任講師 森野善右衛門
1969(昭和44)年度「キリスト教学科案内」(第1号)より
学科主任 教授 茂泉昭男 聖書神学
新約学 教授 山谷省吾
教授 ロバート・W・ノーサップ 講師 土戸 清
旧約学 助教授 浅見定雄 歴史神学
宗教史 教授 小笠原政敏 キリスト教史 教授 茂泉昭男
助教授 倉松 功 助教授 出村 彰
組織神学教義学 教授 熊野義孝
助教授 大崎節郎
宗教哲学 助教授 川端純四郎 実践神学キリスト教教育 教授 日下 一
社会事業史 教授 ウィリアム・C・メンセンディク 説教学・牧会学 助教授 森野善右衛門
1983(昭和58)年3月31日付け「キリスト教学科報告」より 学科主任 教授 出村 彰
聖書神学
旧約神学 助教授 浅見定雄 新約学 教授 土戸 清 歴史神学
キリスト教史
(古代・中世) 教授 茂泉昭男 (近世・宗教改革)教授 倉松 功 同上 教授 出村 彰 (英国・米国・日本)教授 小笠原政敏 組織神学
教義学 教授 大崎節郎 キリスト教倫理 助教授 佐々木勝彦 宗教史 教授 小笠原政敏 宗教哲学 助教授 川端純四郎 実践神学
説教学・牧会学 助教授 森野善右衛門 社会事業史 教授 W・メンセンディク 聖書語学・古典語
ヘブル語 助教授 浅見定雄 ギリシャ語 教授 土戸 清 ラテン語 教授 茂泉昭男
1990(平成2)年度「学科案内」より
学科長 教授 土戸 清 聖書神学
新約学 教授 土戸 清 旧約学 教授 浅見定雄 組織神学
教義学 教授 大崎節郎 キリスト教倫理学 教授 佐々木勝彦 宗教哲学 助教授 川端純四郎 歴史神学
教会史 教授 小笠原政敏
教授 茂泉昭男 教授 倉松 功 教授 出村 彰
教授 デイヴィド・N・マーチー
実践神学説教学・牧会学 教授 森野善右衛門
教授 W・メンセンディク
集中講義キリスト教教育 非常勤 松川成夫 牧会心理学 非常勤 三永恭平
1995(平成7)年度「キリスト教学科案内」より
学科長 教授 大崎節郎 聖書神学
新約学 教授 土戸 清 旧約学 教授 浅見定雄
組織神学
教義学 教授 大崎節郎 キリスト教倫理学 教授 佐々木勝彦 宗教哲学 助教授 川端純四郎 歴史神学
教会史 教授 茂泉昭男
教授 倉松 功 教授 出村 彰 教授 D・マーチー
実践神学説教学・牧会学 教授 森野善右衛門 集中講義
キリスト教教育 非常勤 小林政吉 牧会心理学 非常勤 三永恭平 世界宗教史 非常勤 D・リード
2000(平成12)年度「キリスト教学科案内」より
学科長 教授 佐々木勝彦 聖書神学
新約学 教授 土戸 清 組織神学
教義学 教授 佐藤司郎 キリスト教倫理学 教授 西谷幸介 歴史神学
教会史 教授 出村 彰
教授 D・マーチー
実践神学実践神学・説教学 教授 佐藤司郎 キリスト教教育 教授 佐々木勝彦 兼担
聖書通論 教養学部教授 佐々木哲夫