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これまでの腐食量評価は目視による 5段階評価に基づいて行ってきた。目視による評価 は簡便であるものの、再現性が低い可能性がある、熟練者がいなければ評価作業が実施で きない等の不都合があるため、平成 24年度に画像解析による腐食量評価を試みた。

まず、明らかに赤錆である 30 部位の RGB 値を抽出し、R、G、B それぞれの平均値と 標準偏差σを求めておく。求められた平均値±2σを赤錆の RGB 範囲とした(表 8.2.7)。

次に、スキャンした鋼板画像を 100×100ピクセルに縮小し、RGB 値が前述した RGB 範 囲に含まれるピクセルを赤錆と考え、赤錆と判定されたピクセル数の比率を赤錆面積率と した。ただし、R 値が小さく、GやB 値が大きなものを認識しないよう、R/GおよびR/B が 1.1未満の場合は前述のRGB範囲に含まれても赤錆と判定しないこととした。

こうして赤錆と判定されたピクセルを抽出したものの一例を図 8.2.47に示す。また、図

8.2.48に目視評価結果と赤錆面積率との関係を示す。これより、目視評価は一定の精度を

有することが確認できたが、目視評価 4は赤錆面積を過小評価しがちであることが分かっ た。

一方、本画像解析方法では、赤みがかった色に変色した部分、鋼板に付着した木材片、

鋼板の孔の影、黒色に近い赤錆等の判別が困難であるという課題が残った。

表 8.2.7 赤錆のRGB 範囲

平均値-2σ 平均値+2σ

R 32 195

G 38 177

B 42 165

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1 2 3 4 5

目視評価

図8.2.47 赤錆抽出の一例

そこで平成 25 年度は、前年度の課題を克服すべく、画像解析法の改良を行った。前年 度は R、G、B それぞれの値を独立変数と捉え、30 サンプルの分布からそれぞれの赤錆範囲 を定義した(旧方法と呼ぶ)が、今年度は、1300 サンプルの分布を直接空間座標にプロッ トし、赤錆範囲の分布形を概観した後、R、G、B を関数として捉えて赤錆範囲を定義しよ うとするものである(新方法と呼ぶ)。

まず、旧方法と同様に、明らかに赤錆とみなせるサンプルを 1300 か所抽出し、これを 空間座標にプロットする。プロットしたものを図 8.2.49、50 に示す。

図8.2.49 赤錆RGB成分の空間座標プロット

G 軸に垂直な平面上へ投影した RGB 成分のプロットは、楕円に近い分布をしていること がわかる。従って、楕円の中心位置と長短軸長さを G 成分の関数とし、赤錆範囲を定義す ることができる。

ここでは、G 成分がある範囲に含まれる時、それに対応した中心座標と長短軸半径を定 義することで、赤錆範囲とする。1300 サンプルの分析の結果、表 8.2.8 のように定義する こととした。

G 成分 40~49 50~59 60~69 70~79 中心 R 座標 62.1 54.8 82.7 88.1 中心 B 座標 47.0 54.8 63.3 70.3 R 方向半径 9.6 16.8 17.1 8.3

B 方向半径 3.5 5.9 6.6 5.3

その結果、図 8.2.51 に示すように、黒色に近い赤錆や、赤錆でない部分の判定がより 正確になった。しかしながら、図 8.2.52 に示すように、橙色に近い赤錆が判定から漏れて しまうという課題が残った。

表8.2.7 赤錆RGB範囲の定義

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

図8.2.51 解析法の比較(左:画像、中央:旧方法による赤錆範囲、右:新方法による赤錆範囲)

図8.2.52 新たな課題(左:画像、中央:旧方法による赤錆範囲、右:新方法による赤錆範囲)

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