(1) 社会性ハチ類の生態・行動・進化に関する研究 (宮野伸也)
目 的:社会性ハチ類、特にアシナガバチ類の生態や行動の特徴を明らかにし、社会性進化のなぞ の解明を目指す。
成 果:「フタモンアシナガバチの幼虫を人工給餌で育てる」とのタイトルで. 千葉県昆虫談話会第 73回例会で講演を行ったほか、ハチに関する講演を6件行った。
(2) 生物音声自動認識および環境モニタリングに関わる生物の音声信号と音環境構造の研究(大庭照 代)
目 的:生物音声識別装置「ききみみずきん」により収集した音声データをもとに、生物音声辞書改 良に必要な条件を探す。生態園などで実施した識別活動から得られたデータを解析し、本 装置の学習や環境モニタリング活動における効果についてまとめる。また、辞書作成ツー ル導入の可能性を検討する。
成 果:生物音声識別支援装置「ききみみずきん」は、平成15年度に開発してから6年の歳月がたち、
その間平成16年度と17年度に辞書の改善を行った後はその状態で使用しているが、そろそ ろ本体のバッテリーやプリボイスなどのパーツが使用の限界に近づいた。環境モニタリン グに将来的に利用できるように、更新の可能性を探っていたところ、高機能携帯電話を利 用した「ききみみずきん」の可能性が浮上した。
(3) 温帯性針葉樹の群落生態学的研究 (尾崎煙雄)
目 的:温帯域に分布し広葉樹と混交して森林群落を形成することの多い針葉樹についてその生態 学的特性を明らかにする。
成 果:房総および関東周辺のヒメコマツ自生地について、文献調査を行った。
(4) ブナ林の動態と生物地理 (原 正利)
目 的:東日本に本来は広く分布し、この地域の自然生態系の基盤をなしていたブナ林について、
特に、(1) 再生・維持動態、および(2) 生物地理(生態地理および系統地理)について研究 を進める。(1) については、これまでに行ってきた研究を継続し、ブナ林の再生・維持動 態を長期モニタリングデータに基づいて明らかにする。(2)については、東日本各地の残存 林の分布や植生学的特徴、DNA解析によるブナの系統地理学について研究を進める。
成 果:上記の(1)については、開始20年目のモニタリング調査を行い、結果を日本生態学会第57 回大会で発表した。(2)については、ブナおよびイヌブナの分布に関する研究の成果を専 門誌で原著論文として公表した。
(5) ニホンカモシカの生態学的研究 (落合啓二)
目 的:青森県下北半島・山形県朝日山地・長野県上高地の3地域の比較を通して、ニホンカモシカ の生息密度、なわばりサイズ、繁殖成功率、食物条件の相互関係を明らかにする。
成 果:ニホンカモシカと生息環境の関係について、本研究内容の観点よりデータ解析・論文作成 を行い、哺乳類学の専門誌に投稿した。
(6) 芽ばえに関する記載的研究 (大野啓一)
目 的:木本・草本の芽ばえ(当年生実生)を、生態写真、スキャナー画像、標本、形態記載により、
網羅的に記録し資料化する。採種、播種、育苗などについては市民と連携しておこなう。
これらの資料をもとに、自然観察や自然の再生、管理に役立つ図鑑の編纂をめざす。
成 果:木本・草本あわせて78種類の芽ばえの標本を収集し、一部については写真資料も得た。う ち50種は、21年度にはじめて資料が得られた種類である。また、約半数の種については、
市民によって播種・育苗された芽ばえを、提供いただいたものである。
(7) ススキ、オギ、アシの比較生態 (由良 浩)
目 的:アシ、ススキ、オギの生育域は、湿性、乾性、半湿性とはっきりと分かれている。3種とも 種子は広く散布されているにもかかわらず、なぜそれほど生育域がはっきりと分かれてい るのかは未解明の点が多い。本研究ではなぜ湿性の植物が乾性的な環境に生育できないの かをさぐることに特に重点をおいて進める。
成 果:アシがなぜ湿地にしか生育せず、水はけのよい台地上などには生育しないのかという問題 の解明を目指している。アシの成長は単に土壌の含水量を低く保ってもさほど悪くはなら ないが、なかば強制的に排水させて含水量を低く保った時のみ成長が悪くなることが明ら かになった。アシは単に乾燥に弱いということではなさそうである。
(8) 生物学的水浄化に貢献する水生動物の生理・生態 (林 紀男)
目 的:環境生態工学の視点で広く注目を集める水生植物植栽浄化法において、有毒藍藻類の捕食 分解等に貢献する有用微小動物を探索する。これら有用微小動物の各種環境条件における 応答性など生理・生態的特性を究明し、浄化効率向上に寄与せしめる。
成 果:水生植物の近傍に集積する浮遊・付着生物に関する基礎的知見を集積し、学会にて17件発 表し成果を公表した。
(9) 平滑岩盤河床河川の底生動物の多様性維持機構と新しい河床構造の見方 (倉西良一)
目 的:平滑岩盤河床河川は、三面コンクリート張りと見間違うような単純な河川地形で、生息す る底生動物は頻繁に増水の攪乱を受ける。そのような河川で底生動物は、どのようにして 多様性を維持しているのか? 本研究では、この問題を解明することにより、新しい河床 構造の見方を提案したい。
成 果:日本全土の主要河川の上流から中流にきわめて普遍的に存在するヒゲナガカワトビケラが、
房総丘陵の河川では欠落する。この意味を房総丘陵の平滑岩盤河床の特性と関係づけなが
ら調査を行った。調査には、ヒゲナガカワトビケラ研究の権威である西村 登 博士にも参 加いただき実施した。これらの結果は、水生昆虫関係の専門誌に投稿した。
(10) アリ類の行動・生態学的研究 (山口 剛)
目 的:アリ類は社会性昆虫であり複数の個体が協力して採餌や営巣活動などを行っている。しか し、その生態は種によって異なっており未知な部分が多い。この研究では、特に人の身近に 生息しているアリ類を対象に、種ごとの行動・生態的特性について研究する。
成 果:クロヤマアリとクロオオアリを実験的に落下以外に脱出手段のない閉鎖空間に投入すると、
そこから飛降りて脱出するという行動を発見した。この結果は、筑波大学で行なわれた日本 動物行動学会第28回大会において「アリの飛降り」というタイトルでポスター発表した。
(11) シギ・チドリ類の越冬生態、特に個体数変動に関する研究 (桑原和之)
目 的:チドリ目の越冬期の生態に関して、チドリ科、シギ科に属する種を中心に生態的な基礎研 究を行なう。シギ・チドリ類の個体数の変動は、気象状況や捕食者に大きく影響をうける ので、これらの記録も現地調査で収集し、解析する。
成 果:チドリ目の鳥類の越冬期の生態に関して、利根川流域、東京湾、九十九里海岸で現地調査 を行なった。
2.3.4 人類誌系: 景観史という新領域の創出(課題数:8)
(1) 狩猟採集民研究 (田村隆)
目 的:狩猟採集民の考古学。
(2) 近現代における裁縫教育についての研究 (島立理子)
目 的:近現代において、衣類を調整する技術がどのような場で、どのように伝承あるいは教授さ れてきたかを明らかにし、近代以降の裁縫教育の持つ意味を明らかにする。
成 果:県内の博物館等に所蔵されている「裁縫ひな形」および「裁縫教室図」の資料調査をおこな った。裁縫教室図は近代の一時期にのみ奉納され、その地域も山武地域にのみ濃厚である ことがわかった。裁縫上達祈願の方法も地域差が大きかったことがわかるとともに、地域 における裁縫教育の受容のされかたも違うのではないかとの仮説をたてた。
(3) 関東平野における明治10年代の土地利用に関する研究 (白井 豊)
目 的:迅速測図を基礎的資料として、関東平野全域の土地利用を約2 kmメッシュのオーダーで把 握する。明治10年代の土地利用の意義を知る目的から近世の都市・信仰的中心地や交通の 状況なども可能な限り把握する。その際には近世の道標を初めとする石造文化財や古文書 を資料とする場合もある。
成 果:迅速測図を基礎的資料とする土地利用の把握の作業を進めた。すでに千葉県の北部を終え ているが、この作業を千葉県中部、茨城県西南部に拡大して行った。約2 kmメッシュのオ ーダーでは、各メッシュ内で最も卓越する土地利用、および各メッシュに含まれる土地利 用の全てを記した表を作成した。約1 kmメッシュのオーダーでは、各メッシュ内で最も卓 越する土地利用を記した表を作成した。
(4) 大河川の流域と近世の地域社会について (米谷 博)
目 的:産業・経済・文化などに河川の影響を強く受けてきた流域について、文献や民俗資料など を基に、地域社会やそこに生きた人々と河川との関係を考える。
成 果:大利根分館に収蔵されている佐原河岸の商人仲間に関する史料を対象に、近世後期の在方 町の物価や商家経営の規範などを分析した。その成果は大多喜城分館や中央博物館本館で の古文書講座で紹介した。
(5) 近世図像資料の研究 (高橋 覚)
目 的:絵図、絵画、古写真などを活用し、文献資料だけからではわかりづらい近世の情景を視覚