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この章ではシュタルクスイッチングを前提とした光学的 Free Induction Decay 理論モデルに ついて論じる。以下の光学的Free Induction Decay理論モデルの議論は文献[28]を参考にした。

5.2.1 分極と電場の関係

光学的Free Induction Decay は分子集団が持つ巨視的な分極によって放出される光である

ため、ここでは光電場と分極の関係を論じる。そして、分子は2準位系とする。分子の分極は レーザーとの相互作用によって誘起される。

P(z, t) =N µ12ei(Ωtkz)⟨ρ˜12+c.c., (5.1) ここで、N は分子数密度、µ12 は誘起双極子モーメント、Ωはレーザー周波数、k は波数である。

また、括弧⟨⟩は離調を∆ =Ω +kv+ω21として、マクスウェルの速度分布

⟨ρ˜12= 1 kv¯

π

−∞

˜

ρ12e(∆/k¯v)2d∆ (5.2)

について平均することを意味する。ここで、¯vは平均速度、ω21 は準位12の間のエネルギー に対応する角周波数である。また、ρ˜12 = 12(u+iv)であることに注意する。この誘起分極によっ て信号電場

ES(z, t) =E12(z, t)ei(Ωtkz)+c.c.. (5.3) が生じる。信号電場の包絡関数E12(z, t)はSVEA(Slow Varying Envelope Approximation) [30]

を用いた分極と電場のマクスウェル方程式によって

∂E12

∂z =2πikN µ12⟨ρ˜12 (5.4)

E12 =2πikN Lµ12⟨ρ˜12 (5.5) と求まる。ここで、Lは試料の長さで、分極に関わる量⟨ρ˜12は試料内で一様であるとした。

から外れる。分子集団はコヒーレントな光(レーザなど)と共鳴しているときはラビ振動を起こし ており、共鳴から離れたあと分子の誘起双極子はある一定時間コヒーレントな状態を保って双極 子放射を起こす。この現象を光学的FIDと呼ぶ。実際には分子集団には緩和現象が起こるため コヒーレントな状態を失いFID信号は減衰する。

以上のような描像に対して、ここからはその描像に沿った理論モデルを説明する。まず、試 料はレーザーによって十分長い時間共鳴しており steady-state conditions にあると仮定し、瞬 間的に共鳴から外れる状況を考える。このような状況のもとで、共鳴から外れた瞬間分子はコ

Laser

Induced dipole moment

(t≦t

0

) Stark field off(on resonance) fixed laser frequency ω

L

(t

0

≦ t ≦ t

1

) Stark field on(off resonance)

FID

5.1 光学的Free Induction Decayの描像

ヒーレントな光を放出する。このコヒーレント光を光学的Free Induction Decay(FID、自由誘 導減衰)と呼び、これはHahn によって最初に確認された核磁気共鳴で見られる効果であるFree

Induction Decay [12]に似た現象であることからこのような名前が付けられている。本FID

験では、シュタルクスイッチング法によって瞬間的に共鳴から外す状況が作られるため、シュタ ルクスイッチング法を想定したモデルを導く [28]。

t≤0に対してSteady-state solutions はブロッホ方程式(2.25a)-(2.25c)における時間微分の 項を0と置くことで得られ、それらは

u(0) =−∆χw0/(

χ2T1/T2+ ∆2+ 1/T22)

, (5.6a)

v(0) =(

χw0/T2) (

χ2T1/T2+ ∆2+ 1/T22)

, (5.6b)

w(0) =w0[

12T1/T2)/(χ2T1/T2+ ∆2+ 1/T22)]

, (5.6c)

となる。

t= 0で分子の遷移周波数が∆ω21 だけシフトしたと仮定する、すなわち、

= ∆ + ∆ω21 (5.7)

このとき、それまで共鳴していた分子集団は共鳴から外れるためにχ= 0とすることができ、ブ ロッホ方程式は

˙

u+ ∆v+u/T2 = 0 (5.8a)

˙

v−u+u/T2 = 0 (5.8b)

˙

w+ (w−w0)/T1 = 0. (5.8c)

と書ける。(5.8a)-(5.8c)のt > 0に対する解は

u(t) = [u(0)cos∆t−v(0)sin∆t]et/T2, (5.9a) v(t) = [u(0)sin∆t+v(0)cos∆t]et/T2, (5.9b) w(t) =w0+[

w(0)−w0]

et/T1 (5.9c)

となる。信号電場を得るために、(5.5)の中の⟨ρ˜12= 12(⟨u⟩+i⟨v⟩)を計算しなければならない。

そのためには、速度分布に対する平均を計算しなければならない、すなわち、

⟨ρ˜12= i 2

πku

−∞

e(∆/ku)2[u(0)sin∆t+v(0)cos∆t]et/T2d∆

i 2

πkue(∆1/ku)2χw0et/T2cos∆ω21t

るために励起されている幅はドップラー幅の内のほんの一部分であることからdoppler factor e(∆1/ku)2 を積分外に出した。よって、(5.5)に(5.12)を代入すると光学的FID光電場の包絡関 数(envelope function)E12 が得られる。また、光学的FID光とレーザー光は同時に検出器に入 射することを考慮に入れると信号電場は、

ES = (E12+ 1

2E0)ei(Ωt−kz)+ c.c. (5.11)

となり(12 については、レーザー電場が複素共役との和で実数になるときにfactor 2を打ち消す ためのもの)、検出される信号は光の強度に比例することから、(5.11)を2乗したときのcross term がビート信号に対応し、ビート信号は

[E2(t)]beat = 2π3/2N Lµ212E02w0 (

√ 1

χ2T1T2+ 1 1 )

cos∆ω21t

×exp[(∆1/ku)¯ 2]exp

{−t/[T2/(1 +

χ2T1T2+ 1)]

}

. (5.12) となる。

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