第 4 章 ポテンシャル論 90
4.3 球座標によるラプラス方程式の一般解
注意
ここでは重力を例にとって,ポテンシャル関数の方程式を導いたが,電荷の間に作 用する力についても同様の偏微分方程式を満足する.このとき異なるのはGρが電荷 の密度分布に変わるだけである.したがって,二つの場合を同じ様に扱うためにG= 1 とし ,以下あらためて
∂2V
∂x2 + ∂2V
∂y2 +∂2V
∂z2 = 4π ρ(x) (4.9)
をポアッソンの方程式と呼ぶことにする.ポアッソンの方程式に対しては重ね合わせ の原理が成り立つ.すなわちρ1(x), ρ2(x)を別々の関数としたとき
∇2V1 = 4π ρ1, ∇2V2 = 4π ρ2
であればV1(x) +V2(x)は物質分布がρ(x) =ρ1(x) +ρ2(x)であるときのポアッソン方 程式の解となる.ポテンシャルの計算の注意として,ポテンシャルは位置の連続関数 であり, 物質分布がρ(x)6= 0であれば無限遠方で0とならなければならない.
ポテンシャルは位置の連続関数であるからϕ = 0とϕ= 2πにおけるポテ ンシャルの値は一致する.よってmは整数である.ゆえに一般解
Φ(ϕ) = γ·cosmϕ+δ·sinmϕ (m : 非負整数, γ, δ : 任意定数) を得る.
Θ(θ)の微分方程式について
A=ν(ν+ 1), cosθ =x, |x| ≤1とおくと,Θは(2.53)に示すルジャン ド ル陪関数の満たす微分方程式
(1−x2)d2Θ
dx2 −2xdΘ dx +
n
ν(ν+ 1)− m2 1−x2
o
Θ = 0 (4.15)
を満たす.
この微分方程式は,u(x)を(2.14)に示したルジャンド ル微分方程式 (1−x2)d2u
dx2 −2xdu
dx +ν(ν+ 1)u= 0 の解とするとき,
w= (1−x2)m/2dmu dxm とおくことによって得る.
一般にルジャンドル微分方程式の一次独立な解Pν(z), Qν(z)は次の性質 を持つ.
1. νが整数のときPν(z)は Pn(z) =
Xσ
s=0
(−1)s(2n−2s)!
2ns!(n−2s)!(n−s)! zn−2s
となる.但し ,σは nが偶数のときは n/2,奇数のときは (n−1)/2 .
2. νが整数でないときPν(z)は, z =−1の近傍での解の性質を 得るために
|z−1|<2での級数解Pν(z) = X∞
m=0
Γ(ν+m+ 1) (m!)2Γ(ν+ 1−m)
³z−1 2
´m
を|z+ 1|<2に解析接続して Pν(z) = APν(−z) +B
n
Pν(−z) logz+ 1
2 +g(z+ 1 2 )
o
となる.但し,gは|z+ 1|<2で正則な関数である.特にν が整数でないときは,B 6= 0でありz =−1において対数的 特異点をもつ.
3. Qν(z)を積分表示すると Qν(z) = 1
2ν+1 Z 1
−1
(1−t2)ν
(z−t)ν+1 dt z /∈(−∞,1] Re(ν)≥ −1/2 となり,z = 1で特異点となる.また,Q−ν−1もPν(z)と一 次独立な解であるから,上の議論が−ν−1≥ −1/2で成り 立ち,結局任意のν対して第二種ルジャンド ル関数はz = 1 で特異点をもつ.
以上のことから,一般には(4.15)のルジャンド ル陪関数の微分方程式の一 般解は
Pνm(cosθ), Qνm(cosθ) の1次結合で表されるが,Pνm(x)は一般のνに対して,
m= 0のときはlog(1 +x)という項をもつ.
mが自然数のとき(1 +x)−m/2という項をもつ.
ことからx=−1で無限大となる.そして,νが整数nのときPn(x)はxの 多項式で特異点は存在しない.
他方Qνm(x)は,νが何であってもx= 1で特異点をもつ.
したがって,ポテンシャル関数V はθの有界な連続関数であるから,条件 を満足するのは
整数次のルジャンド ル陪関数 Pnm(x) のみである.
R(r)の微分方程式について
先の結果からR(r)の微分方程式は d2R
dr2 + 2 r
dR
dr −n(n+ 1)
r2 R = 0
となり ,これはr= 0が2階同次線形微分方程式の確定特異点である.指 数決定方程式の解がn, −n−1でその差が自然数であることに注意すれば,
独立な解として
R(r) =rn, R(r) =r−n−1 を得る.
ラプラス方程式の一般解
ラプラス方程式の一つの特殊解として
(αrn+βr−n−1)Pnm(cosθ) (γ·cosmϕ+δ·sinmϕ) (4.16) をうる.但し,α, β, γ, δは定数でnは負でない整数,mは0≤m≤nとなる整数であ る.ラプラス方程式の線形性から一般解は(4.16)の1次結合で表される.このことは,
ヒルベルト空間L2(0,2π)において,関数系{cosmϕ, sinmϕ,1} (m ≥ 1)が完全直交 系をなし,ヒルベルト空間L2(−1,1)において,関数系{Pnm(x)}(0≤m ≤n)が完全 直交系をなすことからも理解される.