HACCPシステムは、食品の安全性を保証する ための最善の考え方であるとして、各国でその 適用が進められている。
わが国でも、日本再興戦略(平成25年6月)の
閣議決定で、その積極的導入が求められている。
H A C C P
Hazard Analysis and Critical Control Point
HACCPは「ハセップ」、「ハシップ」とも言われ、
「危害(要因)分析・重要管理点方式」と訳されている。
その意味は、
HA(危害要因分析)により最終製品に存在してはなら
ない重要な危害要因(ハザード)を具体的に予測し、
危害要因を管理する方法(管理措置)を明確にして、
危害要因分析に基づいて決定された製造加工工程の CCP(重要管理点)で、管理措置を適用して危害要因 を食品から健康を損なわないレベルに確実に予防/
減少/除去するシステム。
今までの安全管理
経験と勘に基づく安全管理
最終製品の検査
HACCPシステムによる安全管理
安全な食品を製造加工するための手順が良く 整理されている
科学的根拠(過去の情報やデータ)に基づいて 危害要因とその管理措置が具体的に明確
12手順7原則
危害要因分析
検査しない製品は安全 ?
HACCPシステムの概念は、今までの食品安全管理
とあまり変わらない。新しい高度で難しい管理法で
はない その適用は食品企業の責務
HACCPチームの編成 製品とその原材料の把握 製品の意図する用途の把握 製造工程一覧図の作成 製造工程一覧図の現場確認
危害要因分析の実施
重要管理点(CCP)の決定 管理基準(CL)の設定 モニタリング方法の設定 改善措置の設定
検証方法の設定
文書の作成手順および 記録の保管方法の設定
HACCPプラン作成の予備的段階
HACCPシステムの7原則
経営者の認識と自覚
組織の 体制づくり
製品特性の 把握 (製品説明書)
工程の 現状把握
把握した 情報の分析
管理の運用 方法の計画
運用後の改 善ルールの
明確化
<塚下氏の図を引用・改変>
HACCPシステムの12手順7原則とは?
食品から重要な危害要因を、健康を損なわないレベルに確実 に予防/減少/除去するためのHACCPプラン作成の手順
危害要因分析とは?
<食品安全管理(HACCPシステム)の基本>
HACCP12手順の予備的段階(手順2~5)で収集した 現場の実態を反映した情報やデータに基づいて、
原材料から最終製品に至る全工程に沿って、
最終製品に存在が予想される重要な 危害要因
その危害要因を減少/除去するための 管理措置
具体的に危害要因リストに示す
重要管理点(CCP)の決定
(管理手段)
原材料/ 発生が予想さ 食品から減少/除 (3)の判断根拠は何か? (3)で重要と判断(〇) この工程は 工程 れる危害要因 去が必要な重要 された危害要因の管理 CCPか?
は何か? な危害要因か? 措置は何か?
(1) (2) (3) (4) (5) (6)
危害要因リストのワークシート
1. 原材料
31.最終製品
保 管
生物的:
化学的:
物理的:
〇 または X
〇と判断した場合:
危害要因の発生要因を 示す
Xと判断した場合:
その理由を示す
管理措置が後の工程 にある時は、当該工 程を明示
(2)欄に列挙された作業環境に由来する危害要因は 通常、一般的衛生管理プログラムで管理。
(3)欄に X と記載し、(4)欄に対応する一般的衛生 管理プログラムの作業手順の内容を記入。
(注)
CCP 管理措置を具体的に
記入
現場を反映した科学的根拠に基づいた 危害要因分析はなぜ必要か?
危害要因を具体的に予測しないと、
管理措置を具体的に明確にしないと、
特に、食中毒微生物は種類により汚染源や特性 が異なるため、製造加工工程で的確に管理され ないで最終製品に残る恐れがある。
CCPを的確に決定できないため、食品中に存在が 予想される重要な危害要因が管理されない。
HACCPプランに示さなければならない内容に
ついて、情報やデータを収集できない。
危害要因分析で必要な食中毒微生物の留意点
管理対象は、細菌か、ウィルスか、寄生虫か?
管理対象の細菌は、感染型か、毒素型か?
管理対象の細菌は、少量菌量が存在しただけで 食中毒を起こすのか?
発育した結果、食中毒を起こすのか?
管理対象の細菌は芽胞を形成するか?
管理対象の細菌の温度などによる影響は?
原材料由来
生材料 農産物:野菜、穀類、香辛料、果実・・・・
畜産物:生乳、獣肉・鶏肉、卵 水産物(淡水・海水):魚介類 各種添加物、食塩、砂糖、油・・・・
加工済み材料(単一、混合物)
包装材 水
製造加工由来:施設により状況が様々であり、具体的な菌種の特定は難しい。
環境汚染 環境温度
処理作業:混合、加熱、冷却・・・・・等の食品の取扱い
食品を汚染する微生物の由来
汚染、発育、生残 食中毒細菌の発育
一次汚染
二次汚染
食品原材料と主な食中毒微生物の汚染
<一次汚染微生物>
サ ル モ ネ ラ 属 菌
、 腸 炎 ビ ブ リ オ
、 カ ン ピ ロ バ ク タ
-・
ジ ェ ジ ュ ニ/ コ リ
、 腸 管 出 血 性 大 腸 菌、 そ の 他 の 病 原 大 腸 菌
、
ぶ ど う 球 菌
、 セ レ ウ ス 菌
、 ウ ェ ル シ ュ 菌
、 ボ ツ リ ヌ ス 菌
、
コ レ ラ 菌
、 赤 痢 菌
、 チ フ ス 菌
、 パ ラ チ フ ス A 菌
、
エ ル シ ニ ア・ エ ン テ ロ コ リ チ カ
、 ナ グ ビ ブ リ オ
、
プ レ シ オ モ ナ ス・ シ ゲ ロ イ デ ス 、 そ の 他 の 細 菌
( エ ロ モ ナ ス・ ヒ ド ロ フ ィ ラ/ ソ ブ リ ア
、
ビ ブ リ オ・ フ ル ビ ア リ ス
、 リ ス テ リ ア・ モ ノ サ イ ト ゲ ネ ス 等
)
ウィ ルス
: ノ ロウ ィ ル ス
、
野 菜 穀 類 畜産物 水産物 使用
果 実 香辛料 乳 食肉 卵 海産 淡水産 水
サルモネラ属菌 〇 〇 〇 〇 〇 〇
腸炎ビブリオ 〇
カンピロバクター属菌 (〇) 〇 〇
(鶏肉)
病原大腸菌 〇 (〇) 〇 〇 〇
(牛肉)
黄色ブドウ球菌 〇 〇
セレウス菌 〇 〇 〇 〇
ウェルシュ菌 〇 〇 〇
ボツリヌス菌 〇 〇 〇 (〇) 〇
エルシニア・エンテロコリチカ 〇 〇 〇
(豚肉)
リステリア・モノサイトゲネス 〇 〇 〇 〇 〇 〇
ノロウイルス 〇
(かき)
サ ル モ ネ ラ 属 菌
、 腸 炎 ビ ブ リ オ
、 カ ン ピ ロ バ ク タ
-・
ジ ェ ジ ュ ニ/ コ リ
、 腸 管 出 血 性 大 腸 菌、 そ の 他 の 病 原 大 腸 菌
、
ぶ ど う 球 菌
、 セ レ ウ ス 菌
、 ウ ェ ル シ ュ 菌
、 ボ ツ リ ヌ ス 菌
、
コ レ ラ 菌
、 赤 痢 菌
、 チ フ ス 菌
、 パ ラ チ フ ス A 菌
、
エ ル シ ニ ア・ エ ン テ ロ コ リ チ カ
、 ナ グ ビ ブ リ オ
、
プ レ シ オ モ ナ ス・ シ ゲ ロ イ デ ス 、 そ の 他 の 細 菌
( エ ロ モ ナ ス・ ヒ ド ロ フ ィ ラ/ ソ ブ リ ア
、
ビ ブ リ オ・ フ ル ビ ア リ ス
、 リ ス テ リ ア・ モ ノ サ イ ト ゲ ネ ス 等
)
ウィ ルス
: ノ ロウ ィ ル ス
、
危害要因の管理措置とは?
<危害要因を管理するための処置または活動>
食中毒微生物に対応する管理措置の例
細 菌 1) 時間/温度管理 2) 加熱調理処理 3) 凍結処理
4) 発酵あるいはpH管理
5) 食塩あるいはその他の防腐物質 6) 乾燥処理
7) 生産元の管理
8) その他の加工(例:高水圧、照射)
ウィルス 1) 加熱調理処理 2) 生産元の管理 寄生虫 1) 加熱調理処理 2) 凍結処理
<National Seafood HACCP Alliance:HACCP教育訓練カリキュラム 第5版より>
食中毒細菌の種類に 対応した管理措置を 具体的に設定
食品を汚染する微生物の管理措置に
影響する主な要因
食品自体の特性
食品自体の成分、水分活性、pH、酸化還元電位、
抗菌性成分、浸透圧、汚染微生物の相互関係・・・
食品周囲の環境
貯蔵温度、加熱温度、湿度、ガス類の存在と濃度、
紫外線・・・
食品の取扱い
包装、除菌、静菌、殺菌 組合せ管理
微生物の発育条件
温度 水
栄養源
(食品成分)
酸素 pH
酸化還元電位
食品を汚染する細菌は発育する (細菌の発育曲線)
時間
菌数の対数
死滅期
対数増殖期 定常期
誘導期
細菌は2分裂して増殖
<世代時間>
温度管理と食品汚染細菌
1 2 3 4 5 6 7 8 9
10 30℃
10℃
細菌を発育させない→低温で保つ
℃
5 0 10 30 40 60
65 63℃以上
10℃~55℃
4℃以下
菌数
時間
多くの細菌は死滅
細菌が発育して、
安全性低下
細菌の発育を抑制。
低温細菌が発育して 品質低下。
<細菌の発育と温度>
→時間管理が重要
殺菌:病原菌や腐敗菌の大部分は死滅するが、
無菌ではない。
滅菌:すべての微生物は死滅。
加熱処理と食品微生物
加熱処理における注意事項
加熱前の汚染菌数が多ければ、加熱後に生残する確率は 高くなる。
加熱後は迅速に冷却して、生残芽胞の発芽/発育を防ぐ。
食品の成分、水分、pH、保存料などにより加熱効果は 異なる。食品の加熱処理の概念 D値=菌数の90%減少時間
食品の種類 殺菌条件
・特定加熱食肉製品 55℃/97分~63℃/瞬時
(35→52℃/170分、55→25℃/200分)
・加熱食肉製品、鯨肉製品 63℃/30分 乳・乳製品
・アイスクリーム類原料 68℃/30分
・魚肉ねり製品 製品により75℃、80℃/20~45分
・大量調理施設衛生管理 75℃/1分
(ノロウィルス対応:85~90℃/90秒)
・鶏卵(液卵) 56~61℃/3分30秒(連続式)
54~59℃/10分(バッチ式)
63~68℃/3分30秒(加塩、加糖卵)
70℃/1分(原材料として使用)
・レトルト殺菌食品 120℃/4分
わが国における主な法的殺菌基準
CCPとは最終製品に存在してはならない危害要因を
適切な管理措置を適用して健康を損なわないレベルに 確実に予防/減少/除去する工程。
食品中に存在の可能性が高く、重要な危害要因は、
いずれかの工程でCCPとして必ず予防/減少/除去 する必要がある。
CCPは施設自身が決定して、管理基準を設定して 管理できること。
判断に迷う時は、コーデックス委員会のガイドライン に示された4つの質問からなる判断手順を適用
重要管理点(CCP)とは?
CCPの対象になる可能性のある管理措置
原材料受入れ 証明書の添付(原料仕入れ先の管理)
食品原材料の温度
食品原材料の物性(pH、Aw・・・)
加熱前処理 温度/時間
添加物の適正な使用(計量 等)
中間製品の物性(pH、Aw・・・)
加熱殺菌
温度/時間、
製品の大きさ(重量、厚さ ・・・)
冷 却
温度/時間
検 品
異物の除去(金属探知、X線探知・・・)
表示の確認 製品保管