• 検索結果がありません。

第 3 章 堆積物と EGR クーラの熱交換性能

3.2 熱交換性能と堆積量の関係

ΔT :対数平均温度差 [K]

Tin-air :EGRクーラ入口空気温度 [℃]

Tin-water :EGRクーラ入口冷却水温度 [℃]

Tout-air :EGRクーラ出口空気温度 [℃]

Tout-water:EGRクーラ出口冷却水温度 [℃]

以上の計算式から,総括熱伝達率αを算出した結果を表 3-1 にまとめた.表 中には,熱交換量と総括熱伝達率を示している.算出された総括熱伝達率を 3 つのサンプル(Sample 1~3は全てSample Sの仕様)の平均値で表すと2時間の ときに 155 W/(m2・K),6 時間のときに 150 W/(m2・K),10 時間のときに 132 W/(m2・K),14時間のときに135 W/(m2・K),20時間のときに136 W/(m2・K), 30時間のときに127 W/(m2・K)という値であった.各運転時間の3つのサンプ ルについての測定結果は,ややバラツキが大きくなっているが,運転時間と熱 交換量の関係のように総括熱伝達率も運転時間とともに低下している.

図3-8に堆積量G0と総括熱伝達率αの関係をまとめた.この図からわかるよ うに,総括熱伝達率は堆積量の増加に伴い低下している.初期の総括熱伝達率 からの低下率に着目してみると,堆積量が約0.2gで10%程度低下し,堆積量が 約0.5gでは20%程度低下している.これを伝熱面積当りの堆積物でみれば3.8 g/m2のときに10%,9.5 g/m2のときに20%と言うことができる.

Table 3-1 Overall heat transfer coefficient

Overall heat transfer coefficient

α[W/(m2・K)]

Overall heat transfer coefficient

α[W/(m2・K)]

Overall heat transfer coefficient

α[W/(m2・K)]

Quality of heat transfer Q[W]

Quality of heat transfer Q[W]

Quality of heat transfer Q[W]

127.2 1,611 125.9 1,596 128.2 1,634 30 hours

138.3 1,713 131.8 1,651 140.1 1,726 20 hours

133.4 129.2

146.4 150.6

1,671 1,617

1,769 1,809

Sample 3

139.1 131.1

150.1 153.7

1,713 1,651

1,804 1,838

Sample 2

Elapsed time of bench test 14 hours 10 hours

6 hours 2 hours

1,674 1,676

1,845 1,897

Sample 1

134.2 135.2

154.4 160.2

Overall heat transfer coefficient

α[W/(m2・K)]

Overall heat transfer coefficient

α[W/(m2・K)]

Overall heat transfer coefficient

α[W/(m2・K)]

Quality of heat transfer Q[W]

Quality of heat transfer Q[W]

Quality of heat transfer Q[W]

127.2 1,611 125.9 1,596 128.2 1,634 30 hours

138.3 1,713 131.8 1,651 140.1 1,726 20 hours

133.4 129.2

146.4 150.6

1,671 1,617

1,769 1,809

Sample 3

139.1 131.1

150.1 153.7

1,713 1,651

1,804 1,838

Sample 2

Elapsed time of bench test 14 hours 10 hours

6 hours 2 hours

1,674 1,676

1,845 1,897

Sample 1

134.2 135.2

154.4 160.2

3.2.2 堆積物のかさ密度

ディーゼル機関から排出される微粒子状物質に関しては多くの機関で研究が 進められており,排出物による環境影響を評価するためいろいろな検討がなさ

れている[1]-[3].そのなかで,微粒子状物質のかさ密度に関しても報告がされて

いる.

ディーゼル排気 PM のようなナノメータサイズの粒径域に適用できる粒径分 析機器が広く利用されるようになってきている.空気動力学径をパラメータと するELPI(Electrical Low Pressure Impactor)や電気移動度等価径をパラメ ータとするSMPS(Scanning Mobility Particle Sizer)および過渡運転中の排 ガス中のPM特性測定を可能にしたDMS(Differential Mobility Spectrometer) やEEPS(Engine Exhaust Particle Sizer)などがその主な例である[3].

図 3-9 は,Keizo Saito ら[4]により報告された DMA-APM 法(DMA: Differential Mobility Analyzer,APM:Aerosol Particle Mass Analyzer)によ る微粒子直径とかさ密度の関係である.これは試験車輌の速度を 50 km/h,エ ンジン回転数1,600 rpmの定速走行時に,負荷率を変化させた場合の結果であ る.微粒子の直径が大きくなるにつれかさ密度(有効密度)が小さくなってい る.この文献では,粒子のかさ密度をアイドリング時で約0.6 g/cm3,負荷運転 時で約0.45 g/cm3と見積もっている.図3-10は,M. Matti Maricqら[5]により 報告されたDMA-ELPI法による微粒子直径とかさ密度の関係である.エンジン 運転モードについては,アイドリング,64 km/h,112 km/hの3種類の定常運 転について測定した結果である.また左下に示されているのは,SMPS による 粒径分布の測定結果である.粒径分布では 100 nm 程度の直径の粒子が多く,

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0

50 100 150 200

Mass of EGR deposits gG0 Heat transfer coefficient αW/(m2K)

Fig.3-8 Relation between mass of EGR deposits G0 and overall heat transfer coefficient α

このときの微粒子のかさ密度は0.6 g/cm3程度と読み取れる.

以上の文献をふまえ,微粒子のかさ密度と堆積層のかさ密度という相異はあ るものの,第3章から第5章においては堆積層のかさ密度を0.6 g/cm3と仮定し て検討を行う.ここでの相異とは,「粒子」と「凝集体」と「堆積層」の3つの 異なる堆積物の概念の相違に基づくものであり,この三者に関するイメージを 図3-11に示した.

Fig.3-9 Effective density of diesel exhaust particulateDMA-APM method[4]

Fig.3-10 Effective density of diesel soot particles DMA-ELPI method[5]

Fig.3-11 Images of particle, agglomerate and EGR deposits Particle Agglomerate

EGR deposits Deposits

3.2.3 堆積層厚さ

ディーゼル機関から排出される成分がEGRクーラ内に堆積層し,これにより 熱交換性能が劣化していると考えられる.3.1.1項ではエンジン運転時間ととも に堆積量は増加し熱交換量は低下することを示した.こうした熱交換性能の劣 化は,堆積物の増加によって起こっていると考え,堆積物の特性を検討するた め,3.2.2.項で仮定した堆積層のかさ密度0.6 g/cm3と伝熱面積Aを用いて堆積 物の厚さhPMを算出した.

サンプルとして使用したEGR クーラの伝熱面積A は0.0524 m2であった.

EGRクーラにはらせん溝つき管を使用しているため,伝熱面は凹凸形状となっ ており,堆積物の不均等な堆積が考えられるがここでの検討では内部には堆積 物が均一に堆積しているとみなして,堆積物の層厚さ hPM を算出した.この結 果を表3-2に示した.この表では運転時間thrごとの堆積量G0と堆積層厚さhPM

をまとめた.ここでの堆積量G0の値は,重量計による測定結果を用いた.ガス 分析による結果には灰分が含まれないので,堆積層の厚さに換算する際には灰 分の厚さを考慮し,重量計の測定結果を採用した.表 3-2 において,運転時間 の短い2,6時間では堆積量が少ないため測定誤差による堆積量の厚さのバラツ キは大きいが,運転時間の増加とともに堆積量が安定して増加している.算出 された堆積層の厚さを平均値で表すと2時間のときに6μm,6時間のときに8.5 μm,10 時間のときに 11μm,14 時間のときに 13μm,20 時間のときに 15 μm,30時間のときに20μmとなった.

3.2.4 総括熱伝達率と堆積層厚さの相関

3.2.1 項で示した総括熱伝達率αと 3.2.3 項で示した堆積層厚さの関係を図

3-12に示した.図3-12は横軸に堆積層の厚さhPMをとり,左側の縦軸に総括熱 伝達率α,右側の縦軸に堆積量G0をとって示した.堆積層厚さと堆積量の関係

Table 3-2 Thickness of cooler deposits

Thickness of EGR deposits hPM[μm]

Thickness of EGR deposits hPM[μm]

Thickness of EGR deposits hPM[μm]

Mass of EGR deposits G0[g]

Mass of EGR deposits G0[g]

Mass of EGR deposits G0[g]

21.31 0.67 20.99 0.66 19.40 0.61 30 hours

15.27 0.48 14.63 0.46 14.63 0.46 20 hours

13.04 11.45

8.91 5.41

0.41 0.36

0.28 0.17

Sample 3

11.77 12.09

8.59 3.18

0.37 0.38

0.27 0.10

Sample 2

Elapsed time of bench test 14 hours 10 hours

6 hours 2 hours

0.47 0.31

0.26 0.29

Sample 1

14.95 9.86

8.27 9.22

Thickness of EGR deposits hPM[μm]

Thickness of EGR deposits hPM[μm]

Thickness of EGR deposits hPM[μm]

Mass of EGR deposits G0[g]

Mass of EGR deposits G0[g]

Mass of EGR deposits G0[g]

21.31 0.67 20.99 0.66 19.40 0.61 30 hours

15.27 0.48 14.63 0.46 14.63 0.46 20 hours

13.04 11.45

8.91 5.41

0.41 0.36

0.28 0.17

Sample 3

11.77 12.09

8.59 3.18

0.37 0.38

0.27 0.10

Sample 2

Elapsed time of bench test 14 hours 10 hours

6 hours 2 hours

0.47 0.31

0.26 0.29

Sample 1

14.95 9.86

8.27 9.22

はかさ密度を0.6 g/cm3で一定としているため,比例関係となっている.総括熱 伝達率に関しては,堆積層厚さの増加とともに低下していることがわかる.エ ンジンベンチ運転時間 10 時間でのデータに着目してみると総括熱伝達率は約 132 W/(m2・K)であり,堆積層厚さは約11μmである.この総括熱伝達率は,初 期の総括熱伝達率約170 W/(m2・K)から2割程度減少している.したがって,10 μm 程度の堆積物の層により総括熱伝達率が 2 割低下したと解釈することがで きる.