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照明光の分光放射輝度計測および色再現

ドキュメント内 第 5 章 化粧料の反射特性のデータ化と再現 (ページ 32-38)

4. 反射モデルによる推定結果比較

5.5. 照明光の分光放射輝度計測および色再現

 照明光の色計測、モニタにおける再現として、分光反射率計測に用いた D65 光源と、

江戸時代に歌舞伎の照明で用いられたろうそく照明のサンプルの分光放射輝度計測、RGB 色空間における色再現をおこなった。D65 照明の分光放射輝度に関しては規定値を用い た。分光放射輝度は、5.3-1 節と同様に、分光放射輝度を CIE1931 に従い三刺激値 XYZ に変換し、sRGB モニタ出力のため RGB に変換する。ろうそくの光は (R:388.26, G:191.99, B:-) と、sRGB モニタの再現域から外れたため ( 図 5.5)、R を最大値 255、B を最低値 0 とし、

G の値は、計測時の R との比を保存することにより補正して用いることとする。計測結果 は小数点以下を四捨五入し、整数値として用いる ( 表 5.5)。ろうそく照明のサンプルとし ては、カメヤマローソク 30 号 ♯ 211 大ローソク を用いた。

      表 5.5.D65 光源とろうそくの色 D65 光源 ろうそくの光

X 89.04 127.03

Y 93.47 93.47

Z 100.72 10.80

x 0.3143 0.5492

y 0.3300 0.4041

R( 使用値 ) 248.90 (249) 388.26 (255) G( 使用値 ) 247.34 (247) 191.99 (192) B( 使用値 ) 246.25 (246) - (0)

ろうそく (0.54,0.40) ろうそく補正

(0.48,0.46)

図 5.5.D65 照明とろうそく照明の xy 値

5.6. 3DCG と模型による歌舞伎化粧の再現

 5.4 節でパラメータ推定した Torrance-Sparrow(G=1) モデル、5.5 節で行った D65 照 明光の色再現結果を用い、3DCG ソフトによるレンダリングをおこなった。照明光は 平行光とし、反射モデルのプログラミングは C for graphics 言語を用いて行い ( 付録 )、

Autodesk Maya 9.0 により DirectX 3D によるハードウェアレンダリングをおこなった。

3DCG でレンダリングを行った光源方向と同様に測色用 D65 蛍光ランプを模型に照射し、

3DCG のカメラ方向と同様の方向から模型を撮影した。3DCG におけるレンダリング、

模型の撮影の幾何図を ( 図 5.6-1) に示す。また照明方向、視点方向を同様に設定した撮影 結果を ( 表 5.6) に示す。

45 45

D65 Light D65 colored

Directed Light

-90

30 -30

60 -60

0

3DCG 模型

SIDE TOP

図 5.6-1. 模型と3DCG の撮影に関する幾何図

表 5.6. 照明、視点方向による模型と3DCG の撮影結果 入射方向 ( 水平方向 ,

垂直方向 )/ 視点方向

視点位置から撮影した模型 視点位置からレンダリングした3DCG

-60,0/-90

入射方向 ( 水平方向 , 垂直方向 )/ 視点方向

視点位置から撮影した模型 視点位置からレンダリングした3DCG

0,0/-60

-90,0/-30

-60,0/0

-30,0/30

入射方向 ( 水平方向 , 垂直方向 )/ 視点方向

視点位置から撮影した模型 視点位置からレンダリングした3DCG

-30,45/60

 鏡面反射のピークが正反射方向より水平方向にずれる Off-Specular 現象を表現する Torrance-Sparrow モデルの適用により、顔の前面のなだらかな凹凸より輪郭のような急 激なほうが際立って見え、深い皺や鼻のような視線方向と水平な面方向からなる極端な凹 凸がある箇所はよく表現ができているといえる ( 図 5.6-2)。また、模型におこなった詳細 表現が照明方向によっては強調される場合もある。( 図 5.6-3) のような模型の血管の強調 は鏡面反射面が視点方向と水平に近くなった場合におこっている。

 

図 5.6-2. 反射特性推定結果から見られた off-specular 反射 左:模型 右:3DCG によるレンダリング結果

 

図 5.6-3.off-specular 反射による詳細な凹凸の強調 左:模型 右:3DCG によるレンダリング結果

 また、( 図 5.6-4) では3DCG によるレンダリング結果において実際におこらない耳の輝 度の差が確認できる。耳の部分に白粉を塗っていない模型に対して、3DCG では顔モデル 全体のマテリアルとして反射モデルを適応してあるため、急激な凹凸のある耳の部分でハ イライトが多く起こってしまったためと考えられる。また、( 図 5.6-5) のような耳部分の ハイライトや頬部分の影の差は、光源の違いが原因と考えられる。本研究でレンダリング に用いたライトは平行光であり、模型に照射した蛍光ランプは平行成分が主であるが完全 な平行光ではなく、光源からはなれた箇所では光の減衰も起こるため差が現れてしまった。

この問題を解決するためには、照明光の方向や減衰を含めた光源のモデル化が必要である と考えられる。また、白粉だけでなく肌や、他の化粧料に関しても反射モデルを適応させ る必要があるが、テクスチャの座標とモデルの座標が同一でないため、化粧のパターンの テクスチャに合わせた形状モデルデータを顔モデルと別に作成するか、反射特性の適応範 囲をテクスチャに合わせて設定する必要があり不便である。スペキュラマッピング技術な どを応用し、一つの形状データで複数の反射特性を表現することができれば、反射特性の パターンへの応用もスムーズになると考えられる。

 

図 5.6-4.off-specular 反射による耳部分の凹凸の強調 左:模型 右:3DCG によるレンダリング結果

 

図 5.6-5. 照明の違いによる頬部分、耳部分の輝度の差 左:模型 右:3DCG によるレンダリング結果

ドキュメント内 第 5 章 化粧料の反射特性のデータ化と再現 (ページ 32-38)

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