第 4 章 コラッツの手続きと関数
4.2 無限級数による関数 F
があります.関数h(x)の定義式は,xが偶数ならば2でわった数 x 2 , 整数xが奇数ならば3倍して1をたして2でわった数 3x+ 1
2 を表
します.関数h(x)はコラッツの奇数手続きを表現してしているもの ではありません.
関数h(x)の 区間−10< x <22でのグラフは次図.
-15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 35
-10 -5 0 5 10 15 20
y=h(x)
この無限級数の和として表されている関数F(x)は, 有限和
4
π2 cos2πx 2
n k=0
f(2k+ 1)
1
(x−2k−1)2 − 1 (2k+ 1)2
においてn→ ∞とするときの極限として与えられる関数です.
関数F(x)の 区間−10< x <22でのグラフは次図.
-5 0 5 10 15 20 25 30
-10 -5 0 5 10 15 20
y=F(x)
関数の微分や積分を扱う微分積分学において,三角関数cosπxは 次のような冪級数の和として計算できるとわかっています:
cosπx= 1 +∞
q=1(−1)qπ2qx2q (2q)!
= 1−π2x2
2! +π4x4
4! −π6x6
6! −π8x8 8! +· · ·.
このことを使って関数F(x)を実変数xの冪級数として表すと,
F(x) = 2 π2
2+
∞ q=1
(−1)qπ2qx2q (2q)!
∞
p=2
p∞
m=0
f(2m+ 1) (2m+ 1)p+1
xp−1
= 2 π2
4
∞ m=0
f(2m+ 1) (2m+ 1)3
x+
6 ∞ m=0
f(2m+ 1) (2m+ 1)4
x2
+
8 ∞ m=0
f(2m+ 1) (2m+ 1)5 −π2
∞ m=0
f(2m+ 1) (2m+ 1)3
x3
+
10 ∞ m=0
f(2m+ 1) (2m+ 1)6 −3π2
2!
∞ m=0
f(2m+ 1) (2m+ 1)4
x4+· · ·
となります.
このとき,微分係数 F(0) = 8
π2 ∞ n=0
f(2n+ 1) (2n+ 1)3
= 8 π2
∞ k=0
∞
n=0
6k+ 1
(4n(8k+ 1) + 4n−1+· · ·+ 4 + 1)3
+ 8 π2
∞ k=0
∞
n=0
6k+ 5
(4n(4k+ 3) + 4n−1+· · ·+ 4 + 1)3
( = 1.04· · · パソコンで計算して)>1 となります.
この事実は,0は F の反発的不動点であること,すなわち0の近 くでは関数Fを繰り返すときの点zごとの変化が激しいこと,を示 しています.さらに,F(1) = 0であることもわかっています.これ は1がF の超吸引的不動点だということ,すなわち1の近くでは関 数Fを繰り返すときの点zごとの変化が特に安定していることを意 味しているのです.
関数F(x)の実数変数xを複素数変数zに変えて複素数を変数と する関数F(z)を考えましょう.
図版のA図とB図,46頁のC図,47頁のE図は,関数F(z)を 複素数平面のある領域に含まれるz で繰り返し反復した関数 Fn(z) の複素数値から作画された図です.
limn→∞Fn(z) = 1 となる複素数zは黄色で,
limn→∞Fn(z) =z0 となる複素数z は白色で
表されています.この複素数z0 =−0.03· · ·は関数F の吸引的不動 点と呼ばれる点であって,z0の近くでは関数Fを繰り返すときの点 zごとの変化が安定していることがわかっています.
ある番号 n で複素数 u+iv = Fn(z) に対して, u > 2×106また
はv >70となる複素数z は銀灰色で表されています.
46頁のC図は,複素数平面の領域
z=x+iy −4< x <4, −1.5< y <4.5
に含まれるzで繰り返し反復した関数Fn(z)の複素数値から作画.
47頁のE図は,複素数平面の領域
z=x+iy2.9400< x <3.0200, 0.5950< y <0.6550
に含まれるzで繰り返し反復した関数Fn(z)の複素数値から作画.
さて,実変数xの関数cosπxが cosπx= 1 +∞
q=1(−1)qπ2qx2q (2q)!
= 1−π2x2
2! +π4x4
4! −π6x6
6! −π8x8 8! +· · ·
と表されるのであれば,実変数 xを複素変数z に変えて複素数を 変数とする関数cosπzが考えられます.
C図
D図
E図
cosπz= 1 +∞
q=1(−1)qπ2qz2q (2q)!
= 1−π2z2
2! +π4z4
4! −π6z6
6! −π8z8 8! +· · · という関数です.
こうして複素数zを変数とする関数
g(z) = z
2 cos2πz
2 + (3z+ 1) sin2πz 2
= 1
2 +7z
4 −5z+ 2 4 cosπz
が考えられて,複素数z が実数xに等しいz =xのときには,
g(z) =g(x)となっています.
46頁のD図は,関数g(z)を複素数平面の領域
z=x+iy −4< x <4, −3< y <3
に含まれる z で3回反復した関数 g3(z) の複素数値から作画され た図です.
|g3(z)−1|<0.1 となる複素数z は銀灰色で,
複素数u+iv=g3(z)と置くときu >1020またはv >70とな る複素数z は青色で表されています.
この冊子で取り上げた図の中における黄色い領域や白い領域は,複 素関数F(z)による複素数平面上の複素力学系における点の収束の状 況を局所一様性の立場から示しています.
「複素数zが正の奇数であるときは,いつでも
n→∞lim Fn(z) = 1 となるだろうか?」
という意味で,これらの図はこの冊子の主題であるコラッツの問題に 関連しているわけです.
さて,数論の有名な研究者 ポール エルデス(Paul Erd¨os,
1913-1996)は,現在の数学はコラッツの問題などをあつかえるまでには進
歩していない( Mathematics is not yet ready for such problems. ) と言っていますが,多くの人々が新しい道を探し求めていますし空し い努力ばかりではないでしょう.というわけですので,もし参考書を というならば,
金子晃:数理系のための 基礎と応用 微分積分I-理論を中心に-, サイエンス社,2000.
をあげておきます.微分積分学と代数学をさらに進んでください.
コラッツの問題についての手に入れやすい参考文献を二つ挙げてお きます.
·Richard K. Guy(Ed.),一松信 監訳:数論における未解決 問題集(シュプリンガー・フェアラーク東京,1983).
·Jeffrey C. Lagarias : The 3x+ 1 Problem and its Generalizations, Amer. Math. Monthly 92(1985), 3-23.
http://www.cecm.sfu.ca/organics/papers/lagarias/
索引
あ〜しゅうき
f 3,8,27,28
f:GQ∗ → OQ 28
f:OQ∗ → OQ 29,30,33
F 42,44
f軌道 31
f 軌道の2-指数列 31
f(x)を不変にする変換a(x) 29 エルデス-シュトラウスの予想 26 カタラン(Catalan)の方程式 12 関数f(x)の反復 4 奇数型の有理数 27,28
吸引的不動点 45
奇整数の集合 27
(yの)軌道 2,9 コラッツの奇数手続き 3,21,24 コラッツの操作 1,22 コラッツの手続き 1,19,22
コラッツの問題 1
コラッツの予想 1
コラッツの予想の一般化 30 ゴールドバッハの予想 26
三角関数 39
3n+ 1問題 1
自然数の集合N 27
自然対数 16
周期 7
周期成分 33
周期的 31,33
周期点 7
周期軌道 2,7,8,14
しゅうごう〜わ
集合GQ 28
集合GQ∗ 28
集合OQ 28
集合OQ∗ 28
集合OZ 27
整数の集合Z 27
対数関数 14
多倍長計算 23
値域 28
超吸引的不動点 44
定義域 28
2-指数列 31
二進位取り記数法 34 2-進整数 34 2-進整数表示 34,35
二進符号 34,36,38
反発的不動点 44
複素力学系 48
複素数平面 45
不動点 4,30,33
BASIC 18
平均回数 22,24
フェルマーの最終定理 26 ポール エルデス 48
無限級数の和 43
有限二進数 34
有理数の2-指数 27
ラジアン 39
浦田敏夫(うらた としお)
1970年 東北大学大学院 理学研究科修士課程 数学専攻 修了. 現在 愛知教育大学 教授 理学博士.
愛知教育大学ブックレット 数学/数理科学セレクト 編集委員 石戸谷公直
渡邉 治
c
T. Urata 2002
愛知教育大学ブックレット 数学/数理科学 セレクト 1
コラッツの問題
初 版 2002年3月31日 著 者 浦田敏夫
印刷所 コームラ 発 行 愛知教育大学
企画担当;第三部数学教育講座 石戸谷公直 〒448-8542 刈谷市井ヶ谷町広沢1
(0566)26-2327/2315