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1 無線 LAN・小電力データ通信システムの概要

2,400MHz~2,497MHz においては、2.4GHz 帯無線 LAN(LAN:Local Area Network)が利用され ている。無線LANの規格としては、米国電気電子学会(IEEE:The Institute of Electrical and Electronics Engineers)により標準化された規格が広く利用されている。

我が国における2.4GHz帯の周波数使用状況を図参4-1-1に示す。

また、IEEE802.11bにおける20MHzシステムのチャネル配置を図参4-1-2に示す。2,412MHzか ら2,472MHzまでの5MHz間隔の計13チャネル(Ch1~Ch13)と、2,484MHzのCh14(我が国におい てのみ使用可能)の計14チャネルから構成される。

図参 4-1-2 2.4GHz帯無線LAN(IEEE802.11b:20MHzシステム)のチャネル配置 図参 4-1-1 2.4GHz帯の周波数使用状況

2 無線 LAN・小電力データ通信システムとの干渉の検討

表参 4-2-1 及び表参 4-2-2 に示した諸元並びに図参 4-2 に示した伝搬モデルを基に、本シス テムと無線LAN・小電力データ通信システムとの干渉の検討を行った。

表参 4-2-1 隣接検討諸元

「第二世代小電力データ通信システム(STD-T66)」

項目 単位 屋外使用モデル 屋内使用モデル

周波数 MHz 2,472

空中線利得 dBi 2.14

壁等による減衰 dB - 17

壁までの距離 m - 5

受信空中線利得

(衛星携帯電話端末) dBi 0.51

不要輻射 mW/MHz 0.025

dBm/MHz -16.02

表参 4-2-2 共用検討諸元

「小電力データ通信システム(STD-33)」

項目 単位 屋外使用モデル 屋内使用モデル

周波数 MHz 2,484

空中線利得 dBi 2.14

壁等による減衰 dB - 17

壁までの距離 m - 5

受信空中線利得

(衛星携帯電話端末) dBi 0.51

干渉波 mW/MHz 10

dBm/MHz 10

図参 4-2 伝搬モデル

表参 4-2-3 所用離隔計算の結果

許容干渉電力 所要離隔距離

隣接干渉

-119.4

(dBm/MHz)

屋内利用 0.9 m 屋外利用 71.5 m

共用干渉

屋内利用 3.7 m 屋外利用 288.9 m

所要離隔計算の結果を表参4-2-3に示す。

Wi-Fiに代表される、Ch1~Ch13までの無線LAN機器から衛星携帯電話端末への隣接干渉に対す る所要離隔距離は、干渉元が屋内使用では約1mであり影響は非常に少ないと考えられる。

一方で、屋外使用においては計算された所要離隔距離が約72mであり、一定の距離において、

衛星携帯電話の通信が困難になる事も考えられる。

周波数を共用する、Ch14を使用した無線LANから、衛星携帯電話への干渉については、屋内使 用では約3.7mであり、隣接干渉に比較すると必要な離隔距離は大きいものの、その影響は限定的 であると考えられる。また屋外使用においては計算された所要離隔距離が約290mであり、より広 い範囲で衛星携帯電話の通信が困難になる事も考えられる。

3 実環境での通話試験

Wi-Fi 利用機器が高度に普及した現在の状況で、本システムが実用に耐え得るかを実証するた

めに、幾つかの代表的な環境を選び、実験試験局を用いて通話試験を行った。

表参 4-3 試験運用の状況(一覧)

運用環境 利用想定 結果

Wi-Fi機器との 同時使用

衛星携帯電話の利用者が、Wi-Fi ル ータも携帯して同時に利用。

Wi-Fi ルータやスマートフォンのテ

ザリング機能が多用される公園等で の利用。

利用可能であった。

公衆無線LAN サ ー ビ ス エ リ ア 内での使用

繁華街等での衛星携帯電話の利用。 建物等により衛星が遮蔽されない場 合には利用可能であった。

事業用無線LAN との同時使用

使用チャネル を Ch14 に固定し た

Wi-Fi 機器を対向で設置し、相互に

通信を行なわせて、その周辺での衛 星携帯電話の利用。

直線見通しで50m離れた地点では、

利用可能であった。

距離が概ね 10m 以内近付いた場合 に、衛星からの電波が掴みにくい場 合があり、通話が途切れる場合もあ った。

3.1 Wi-Fi機器との同時使用

衛星携帯電話の利用者が、Wi-Fiルータも携帯して使用する場合を想定し、Wi-FiルータをCh13 に設定した状態で、実際に、衛星携帯電話の使用を試みたところ通話は可能であった。

図参 4-3-1 Wi-Fi機器との同時使用の様子①

また、今日では、複数の携帯端末を効率的に利用するために、多くの利用者が、日常の通信手

段としてWi-Fiルータを使用、また、スマートフォンのテザリング機能を活用している。

このため、公園のように多くの人が集まる場所では、多くのWi-Fi電波が送信されている状況 が想定され、実際にパソコンやスマートフォンのWi-Fi検索機能によって、複数のWi-Fi機器が 存在することが確認できる。

このような状況において、実際に衛星携帯電話の使用を試みたところ、通話は可能であった。

図参 4-3-2 Wi-Fi機器との同時使用の様子②

これらは一例に過ぎず、隣接するWi-Fi 機器の種類や台数によって、影響の度合いは変化する ことが考えられるが、利用者がWi-Fi機器からの影響受ける場合があり得ることを理解し、運用 場所を適切に選択することで、多くの場合、衛星携帯電話の利用は可能であると考えられる。

3.2 公衆無線LANサービスエリア内での使用

今日では、主要な鉄道駅や繁華街等において、通信事業者、地方公共団体、施設の運用会社な どによって、公衆無線LANアクセスポイントが設置され、一般の利用者にインターネット接続サ ービスが提供されている。

都市部においては、周辺の建物の遮蔽によって、衛星までの伝搬路が確保できず、本システム の衛星携帯電話を安定して使用することは、通常は困難である場合が多い。しかしながら衛星の 通過軌道によっては、短時間利用可能になる場合もある。

このような状況において、実際に衛星携帯電話の使用を試みた。その結果一時的に衛星からの 電波を受信することはでき、その際の通話は可能であった。

これは非常に極端な例ではあるが、本システムの利用者がこのような衛星携帯電話の特性を理 解し、運用場所を適切に選択することで利用可能な場面を拡大することができると考えられる。

図参 4-3-3 公衆無線LANサービスエリア内での使用の様子

3.3 事業用無線LANとの同時使用

工場などで、無線LANを、特にWi-FiのCh14で使用した場合を想定し、使用チャネルをCh14 に固定した Wi-Fi機器を対向で設置し、相互に通信を行なわせて、その周辺で衛星携帯電話の使 用を試みた。

無線LAN機器から、直線見通しで50m離れた地点では、特段の支障はなく通話が出来た。距離 が概ね10m以内近付いた場合に、衛星からの電波が掴みにくい場合があり、通話が途切れる場合 もあった。

これは一例に過ぎないが、Wi-FiのCh14が使用されている事業の周辺等でも、一定の距離が確 保できれば、衛星携帯電話を使用することは可能であると考えられる。

図参 4-3-4 事業用無線LANとの同時使用の様子

4 災害発生時の利用シーン

本システムが導入の目的として関心の高い、災害時の利用シーンについても検討を行った。

利用シーン1:災害発生時(陸上)

想定の状況:

広域災害が発生し、停電などで固定電話回線が利用できず、また携帯電話網は基地局の被災、

利用者急増による輻輳が発生し、回線がつながりにくい状況となる。

衛星携帯電話の利用:

衛星携帯電話網を利用し、災害を受けた場所近くにある避難場所(学校、避難場所に指定され た公園などの広場)から音声回線を通じて避難状況の報告や救助を求める。

想定利用者:

避難所に避難している地域住民をはじめ、各地方自治体、自衛隊、警察、消防、災害救助隊、

海外からの災害救助隊、米軍関係者 想定利用場所:

住宅地に点在する学校、公民館、避難場所に指定された公園など 他システムとの電波干渉:

衛星携帯電話が工場施設などでの利用が残るCh.14の無線LAN設備等からの被干渉を受けるが、

被災地で指定された避難所や避難場所に指定された公園は、工場からの一定の離隔距離が保たれ るので、影響が極めて小さく、利用に支障がない。

図参 4-4 利用シーン1:災害発生時(陸上)イメージ

5 無線 LAN・小電力データ通信システムとの共用条件の検討

所要離隔計算、及び実環境での試験運用から、無線 LAN・小電力データ通信システムの内、特 に広く普及している、Ch1~Ch13 までを使用した機器からの、有害な干渉を受け可能性は低く、

周波数の共用は可能であると考えられる。

無線LAN・小電力データ通信システムの内、Ch14の帯域を使用する機器の周辺に於いては、一

定の距離内で、衛星携帯端末が、衛星からのダウンリンク信号を受信する事ができない場合が考 えられるが、その場合でも干渉を受ける範囲は限定的であり、本システムの利用者がこのように、

他システムからの干渉を受ける可能性を理解し、運用場所を適切に選択することで、利用可能な 場面を拡大することができると考えられる。

衛星携帯電話は、固定電話、携帯電話、Wi-Fi の電波が届かないエリア(陸上、海上・洋上)

にて、より利用されることが想定され、多くの場合、必要な離隔は得られるものと考えられる。

これらの考察から、本システムと、無線 LAN・小電力データ通信システムとの周波数共用は可 能であると考えられる。

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