第 3 章 プロジェクトの内容
1) 無 線
通常消防車両に搭載する無線機に関しては「無線通信法」及び「電波法」などの制約を受ける事 になるが、既に構築された無線システムを使い、既存の車載無線機と同等品を調達する場合には、
特に許認可は必要ない。
2)
排出ガス規制ディーゼル車の排出ガス規制については「エ」国には法規が無いため、日本または
EU
の現行規 制値を適用することとする。(2)
準拠すべき設計基準消防車両に搭載する無線機は、既存の無線通信システムと同じ周波数帯域とし、紅海県は
VHF、
南シナイ県については
HF
を設計基準とする。また、消防車両に付属する吸管の結合金具は現有 機材との互換性のあるBS
規格(British Standard)を設計基準とする。3‑2‑1‑5 実施機関の運営・維持管理能力に対する対応方針
調達する機材は、現有機材との整合性に留意し、対象サイトの消防職員の機材運用技術、維持 管理能力の範囲内で十分対応できる、汎用性の高い機材とする。
3‑2‑1‑6 機材等のグレードの設定に係る方針
事業効果の持続性を図るため、計画機材は汎用性、堅牢性に優れ、また維持管理が容易である ことも必須条件となる。これらの観点から、高度な技術を適用した最新式の機材よりは実証済み の技術を適用し、製作実績・運転実績を有する機材の採用を方針とする。
3‑2‑1‑7 調達方法、工期に係る方針
(1)
調達方法調達品に関しては、「3-2-1-6 機材等のグレードの設定に係る方針」で述べた要件を満たす機 材とし、調達先については以下の事項を考慮する。
?? 消防車両の設計.・製造技術及び品質管理に優れていること。
?? 製造する消防車両の耐久性、堅牢性が優れていること。
?? 「エ」国に納入実績があり、地域の状況に精通していること。
?? 「エ」国に代理店が存在する等アフターサービス体制が整っていること。
?? 調達条件及び技術仕様を満足できること。
(2)
実施期間試験後の引渡しまでが単年度で完了するような工期設定を行う。
3‑2‑2 基本計画
3‑2‑2‑1 基本計画策定のプロセス
基本計画策定のプロセスを図
3-2-2-1
に示す。まず、それぞれの地区の消防を取り巻く環境(地 域特性)に対する既存消防署の現有消防力を検証し、それらを基本設計の方針と照合する。それ を受けて、消防戦術・部隊運用等のソフト面からの考察を加味し、あるべき消防力を配備計画に 反映させる。機材計画は、単に老朽化した機材の更新を目的とするものではなく、消防力の水準 を維持するために最少限必要な機材の種類、仕様、規模を設定するものである。図 3‑2‑2‑1 基本計画策定のプロセス
3‑2‑2‑2 消防車両の配備構想
(1)
現有消防車両対象
3
県における消防車両の種類及び現状の問題点は既に、「2-1-4 既存の施設及び機材」の 項目で記述した。これらの問題点を消防車両別に集計した結果及び要請のあった消防署を、「表
3-2-2-1
署別車両状態集計表」に示す。対象
3
県には、各消防局が所有し消防活動の主力車両となる消防ポンプ車が46
台配備されて いるが、出動不能な車両は13
台(不良)、出動可能であるものの何らかの問題のある車両(や や不良)は26
台で、全く問題無く出動可能な車両(良)はわずか7
台(うち、4
台はCDA
から の貸与車両)のみである。したがって、各県消防局が所管する消防車両で「良」の車両は、36の 消防署に対してわずかに3
台(CDA所管車両は除く)である。各消防署に配置されている「良」または「やや不良」と判定された消防車両の現状配備数に対 する割合を「充足率」として算定した(CDA所管車両は除く)。充足率算定式を下図に示す。
車両(種類・規模)
部隊(規模・水準)
消火戦術 部隊運用
車両・装備・要員統計
①面積
②人口
③観光客数
④火災件数
⑤充足率
調達車両の配備
基準車両
(種類・仕様・規模)
スペアパーツ 地域特性
基本設計の方針
現有消防力
消防戦術・部隊運用
機材配備計画
機材計画 協力対象範囲
対象サイトの設定 機材選定・規模の設定 その他の条件
充足率=(「良」消防ポンプ車+「やや不良」消防ポンプ車×0.5+「良」水槽車×0.2+
「やや不良」水槽車×0.1+積載車×0.2)÷現状配備数
消防ポンプ車:Chemical Truck, Water Tank Truck(化学消防ポンプ車、水槽付消防ポンプ車)
水槽車:Water Tanker(小型動力ポンプ付水槽車)
積載車:Pump Truck(小型動力ポンプ積載車)
現状配備数:現在、消防署に配備されている消防車両の台数
※水槽車及び積載車の放水能力は約
0.5m
3/分であり、消防ポンプ車(約 2.5m
3/分)の約 20%
であることから、充足率の計算ではそれらに
0.2
を乗じた 図 3‑2‑2‑2 充足率算定式その結果、CDA 所管車両の一時供与により辛うじて消防力が確保されている署や「不良」車 両のみを所有している署では、充足率が著しく低く算定された。算定した充足率を「表
3-2-2-1
署別車両状態集計表」に示す。表3‑2‑2‑1 署別車両状態集計表 局所管 (1)CDA所管 El Sel121425%2 Atlas110%1 Aswan Dam West2250%アスワンハイダム管理庁所管 Aswan High Dam West1150%アスワンハイダム管理庁所管 Aswan High Dam East2250%アスワンハイダム管理庁所管 Kima Chemical Factory2250%産業省所管 Abu El-Reash11100%*車庫狭小 Aswan West1120%1 Abu Simble11220%1 Kom Ombo11225%1 Nasr El-Noba1120%1 Daraw11225%1 Banban11100%**管内道路狭隘 Idfu1150%1 El Sibayya1150% アスワン県 小計11114201424 54 Hurghada (HQ)111317%2 Hurghada City Point11230%1 Hurghada Magawish1125%1 Safaga220%1 Quseir2250%1 Marsa Alam110%1 Shaalaten110%1 Ras Gharib11225%1 紅海県 小計0156021015 54 Sharm El Sheikh Hataba21333%1 Sharm El Sheikh Naama1150%1 Sharm El Sheikh Al Roessat11275% Dahab City Point1110% Dahab Masabat1150%1 Nuweiba El Muzeina1150%1 El Gabriel1150% El Tur (HQ)12333%1 St. Chatherine1125%1 Oasis of Feiran1110% Abu Rudeis 11150%1 Abu Zenima11225%1 Ras El Sudr1150%1 南シナイ県 小計22103030020 45 342613252459 1413 59 局所管:消防局所管車両 CDA所管:CDA所管車両*: 現状配備数:現在、消防署に配備されている消防車両の台数**: 充足率=((1)+(2)×0.5+(3)×0.2+(4)×0.1+(5)×0.2)÷(6)
Chemical Truck, Water Tank Truck (消防ポンプ車)Water Tanker (水槽車)Pump Truck (積載車) (5)
現状 配備数 (6)不良良 (3)
やや不良 (4)不良充足率備 考 要請数 (4×2)要請数 (4×4)
要請車両 消防局名消防署名良やや不良 (2) アスワン県 紅海県 南シナイ県 合 計 車庫狭小であるため現状配備中のPump Truckで十分と評価 管内道路が狭隘であるため現状配備中のPump Truckで十分と評価
総 計461327
(2)
消防車両の配備計画対象
3
県の36
消防署の管内情勢・火災の状況等の調査結果は「表1-1-2
調査対象サイトの現 況」に示した。この表中に示す管内面積、人口、観光客数、火災件数と算出された充足率(表3-2-2-1
署別車両状態集計表に示す)の5つの指標で消防署の重要度を総合評価したものが「表3-2-2-2
評価表」である。これらのデータを基に以下のとおり消防署の重要度の評価基準を設定し、新規消防車両の配備台数を決定する。
1)
ランクA(配備計画対象サイト)
(a)
「本部署」県庁所在地にあって重要施設・地域を所管する消防署は、災害活動及び部隊運用上最も 重要であることから「本部署」とし、新規消防車両の配備数は各
2
台とする。(b)
「重点署」人口、管内面積が広く、重要施設が多い、又は観光施設等があって火災危険度が高い、
あるいは火災が年々増加している地域を所管する消防署のうち、表
3-2-2-2
の評価表で、評価
1〜5
の合計が30
ポイント以上の消防署を「重点署」とし、新規消防車両の配備数を 各1
台とする。2)
ランクB
(c)
「準重点署」(b)に準ずる消防署を「準重点署」とし、消防車両の配備数は各 1
台とする。配備は対象3
県消防局所管車両のうち「良」の消防車両を配置転換することにより対応する。3)
ランクC
(d)
「その他署」(a)〜(c)に該当しない消防署及び所管外の消防署を「その他署」とし、現状の消防車両
で対応する。表3‑2‑2‑2 (1) 評価表(アスワン県) 消防 局名№消防署名管内面積 (km)評価1人口 (人)評価2観光客数 (人/年)評価3火災件数 (平均/年)評価4充足率 (%)評価5評価1〜 5合計総合評価要請数 (4×2)要請数 (4×4)配備計画数 (4×2)配備計画数 (4×4)備 考 ア1El Sel6,6111565,71811169,600155213251266本部署22 ス7Atlas6,6111544,316892,0001435701559重点署11 ワ16Idfu9726318,7241592,00014731450958重点署11 ン15Kom Ombo772268,8701492,000148515251257重点署11 県3Nasr El-Noba565475,050121,710104812201250重点署11 6Kima Chem. Factory6,6111549,35290039950942その他署車両は産業省所管につき配備対象外 2Abu Simble6,611152,390118,20011233201242重点署11 5Aswan West6,6111512,5163004010201240重点署11 12Daraw565479,4421300368251237重点署11 11Aswan High Dam East6,6111534,99970028550936その他署庁舎、車両はアスワンハイダム管理庁所管 につき配備対象外 4Abu El-Reash6,6111557,15710004511100036その他署車庫狭小につき中型消防車両の配備不可 10Aswan High Dam West6,6111532,73360026450934その他署庁舎、車両はアスワンハイダム管理庁所管 につき配備対象外 9Aswan Dam West6,611157,3022006250928その他署庁舎、車両はアスワンハイダム管理庁所管 につき配備対象外 17El Sibayya972614,8355003150921準重点署(1)「良」の現有車両の配置転換 14Banban77213,802400296100012その他署 62,7271,077,206465,510569545 (1)4( ) 内は外数 車両合計( ) 内は外数 管内面積評価1*人口評価2*観光客数評価3*火災件数評価4*充足率評価5評価1〜5 合計総合評価 1位151位151位151位150-191530-重点署 2位142位142位142位1420-391220-29準重点署 3位133位133位133位1340-599-19その他署
…
…
…
…
…
…
…
…
60-796 13位313位313位213位380-993 14位214位214位114位21000 15位115位115位015位1 *:消防署が15署あるので、各評価項目の順位にしたがって15〜1点までの点数を付けた。ただし、観光客数0人/年の署は評価3を0点とした。
合 計 99 (1) 評価ランク
表3‑2‑2‑2 (2) 評価表(紅海県) №消防署名管内面積 (km)評価1人口 (人)評価2観光客数 (人/年)評価3火災件数 (平均/年)評価4充足率 (%)評価5評価1〜 5合計総合評価要請数 (4×2)要請数 (4×4)配備計画数 (4×2)配備計画数 (4×4)備 考 21Safaga5,950833,00010113,000105331601660重点署11 18Hurghada (HQ)5,000627,0008403,0001450014171658本部署22 20Hurghada Magawish3,000425,0006403,000122151251650重点署11 23Marsa Alam26,4001417,000460,0006157801648重点署11 19Hurghada City Point925240,00012403,00016814301246重点署11 22Quseir11,0001041,0001460,0008140650846重点署11 25Ras Gharib15,3001275,000168,0004682251246重点署11 24Shaalaten66,4251613,0002001631001644重点署11 134,000271,0001,450,0001,8575454 車両合計 管内面積評価1*人口評価2*観光客数評価3*火災件数評価4*充足率評価5評価1〜5 合計総合評価 1位161位161位161位160-191630-重点署 2位142位142位142位1420-391226-29準重点署 3位123位123位123位1240-598-25その他署
…
…
…
…
…
…
…
…
60-794 6位66位66位66位680-992 7位47位47位47位41000 8位28位28位08位2 *:消防署が8署あるので各評価項目の順位にしたがって8〜1点までの点数を付け、他の2県との整合を図るため2倍した。ただし、観光客数0人/年の署は評価3を0点とした。
合 計 99 評価ランク
表3‑2‑2‑2 (3) 評価表(南シナイ県)
消防 局名№消防署名管内面積 (km)評価1人口 (人)評価2観光客数 (人/年)評価3火災件数 (平均/年)評価4充足率 (%)評価5評価1〜 5合計総合評価要請数 (4×2)要請数 (4×4)
配備計画数 (4×2)配備計画数 (4×4)備 考 南33El Tur (HQ)10,5001265,4001312,90051481333952本部署12 シ26Sharm El Sheikh Hataba1,760626,5009472,400131201133948重点署11 ナ34St. Chatherine17,0001316,100637,100766851347重点署11 イ39Ras El Sudr9,5001140,0001149,6009108950646重点署11 県31Nuweiba El Muzeina900519,6008114,600101301250641重点署11 27Sharm El Sheikh Naama330335,30010472,4001310250634重点署11 29Dahab City Point3,12599,500220,700661710933重点署1 36Abu Rudeis 12,295812,6003001091050930重点署11 35Oasis of Feiran3,6001018,40070027310929準重点署(1)「良」の現有車両を配置転換 30Dahab Masabat385414,300444,600843450626準重点署1(1)管内面積、人口、火災件数が比較的少 なく、「良」の現有車両を配置転換 することが適当と評価 28Sharm El Sheikh Al Roessat2,25078,8001472,400137175325その他署 32El Gabriel24143,600120047550624その他署 38Abu Zenima53215,90050051625922その他署1管内面積、人口、観光客数、火災件数 が少なく、新規車両の配備先として は不適当と評価 51,722326,0001,696,700928454 (2)5( ) 内は外数 車両合計( ) 内は外数 管内面積評価1*人口評価2*観光客数評価3*火災件数評価4*充足率評価5評価1〜5 合計総合評価 1位131位131位131位130-91330-重点署 2位122位122位122位1210-39926-29準重点署 3位113位113位113位1140-596-25その他署
…
…
…
…
…
…
…
…
60-793 11位311位311位211位380-991 12位212位212位112位21000 13位113位113位013位1 *:消防署が13署あるので、各評価項目の順位にしたがって13〜1点までの点数を付けた。ただし、観光客数0人/年の署は評価3を0点とした。
合 計 99 (2) 評価ランク
3‑2‑2‑3 機材計画
(1)
消防車両1)
車種の計画ナイル川流域のアスワン県と砂漠地域である紅海県、南シナイ県とでは水利条件が異なってい るものの、各県とも現状では中型消防車により初期消火活動を行うことが基本となっている。こ れは、以下の観点からみても妥当であり、本プロジェクトにおいても中型消防車を計画する。
?? 活動範囲が広範囲に広がっているため、機動性が要求される
?? 大型車両では進入できない市街地が多い
?? 道路状況の良くない砂漠地域では大型車の走行が困難な場合がある
?? 中型消防車は、走行性・機動性に優れているとともに消防活動に必要な人員、機材、消火 用水を全て積載できる
2)
ポンプ性能対象
3
県にはホテル、工場といった大規模な施設が多く、これらの施設で火災が発生した場合 は、鎮火に長時間の消火活動が必要となるが、基本的には消防ポンプ車は各消防署に1
台の中型 消防車のみの配備となるため、長時間の放水が可能であることが要求される。日本の消防車のポ ンプは非走行時において、8時間以上の連続運転が要求され、この規格を満足している消防車が 配備されている。連続長時間運転は、エンジンの冷却機能を強化(サブラジエターの設置)する ことにより、可能となるので、消防車両の設計仕様に反映させる。3)
消防車両の駆動方式対象
3
県の主要道は一般的によく整備されているが、主要道を外れると傾斜地、未舗装道路、不整地などの地域を管轄する消防署が少なからずあり、またナイル川流域では耕作地内の未舗装 の農道を走行する場合がある。このような地域においても、早期に火災現場の直近まで確実に到 達し、迅速な消火作業を開始するためには、機動性、走破性の高い四輪駆動車の導入が不可欠で ある。四輪駆動車は車台が高いため、ぎ装上の制約が伴うが、悪路の走破性能に優れているため 上述の、悪条件(傾斜地、未舗装道路など)の地域には適している。
したがって、次の条件に当てはまる地域を管轄する消防署には四輪駆動車を計画する。
?? アスワン県の田園地域