35
36
3. 2 発生漏れ電流
電子-正孔対の発生割合𝑈は、
𝑈 =
𝜎𝑝𝜎𝑛𝑣𝑡ℎ𝑁𝑇𝑛𝑖𝜎𝑛𝑒𝑥𝑝(𝐸𝑇−𝐸𝑖
𝑘𝑇 )+𝜎𝑝𝑒𝑥𝑝(𝐸𝑖−𝐸𝑇
𝑘𝑇 )
,
(3-1)σn , σp:電子/正孔の捕獲断面積 vth :キャリアの熱速度 NT :トラップ密度 ni :真性キャリア濃度 ET :トラップ準位 Ei :真性フェルミ準位 k :ボルツマン定数
T :温度
で表される。[1, 2]
σn =σp = σと仮定し、トラップ準位がバンドギャップの中心Eiに近い場合を考 えると、
𝑈 =
12
𝜎𝑣
𝑡ℎ𝑁
𝑇𝑛
𝑖 (3-2)と単純化できる。キャリア発生が空乏層中で均一であれば、発生リーク電流𝐽𝑔𝑒𝑛は
𝐽
𝑔𝑒𝑛= 𝑞𝑈𝑊 =
12
𝑞𝜎𝑣
𝑡ℎ𝑁
𝑇𝑛
𝑖𝑊
(3-3)と表される。式(2-1)と式(3-3)から、トラップ密度𝑁𝑇が一定の場合、発生リーク 電流𝐽𝑔𝑒𝑛は、逆バイアスVRの1/2乗と真性キャリア濃度𝑛𝑖
に
比例する。n-ドリフトのL(r)の領域中のトラップ準位が𝑁𝑇(𝑟)で一定であるとした場合、
𝐽
𝑔𝑒𝑛=
12
𝑞𝜎𝑣
𝑡ℎ𝑛
𝑖∑𝑁
𝑇(𝑟)𝐿
(𝑟) (3-4)37
で、計算できる。ここで、”r”は、p-n接合面に垂直な方向に対して複数に分割され たr番目の領域を示す。
次に、式(3-1)、および、式(3-3)で𝐽𝑔𝑒𝑛が発生割合Uに比例することから、トラッ プ準位ETが𝐽𝑔𝑒𝑛に与える影響を考える。σn =σp = σと仮定した場合、式(3-1)の分 母は、hyperbolic cosineの形になっており、ET‐Eiが 0の時、すなわち、トラップ準 位がバンドギャップ中心に一致した時に最小値を取り、ETが Eiから離れるほど値が 大きくなる。つまり、ETがバンドギャップ中心に近いほど𝐽𝑔𝑒𝑛は大きくなり、離れる ほど漏れ電流が小さくなる。
ET‐Ei を 0.06eVから 0.10eV ずつ増やした場合、すなわち、Siのバンドギャップ
を1.12eVとして、EC‐ETを0.50eVから0.10eVずつ増やした場合の漏れ電流への影 響度を表 3-1 に示す。ここでは EC‐ET =0.5eV の時の係数を 1 に規格化している。
EC‐ETが 0.1eV 減る(エネルギー準位が浅くなる)ごとに漏れ電流は 1/48 ずつ減少し
ており、ETが漏れ電流に大きな影響を与えることがわかる。
表 3-1 SRH モデルによる E
C-E
Tの漏れ電流への影響度
ET‐Ei (eV) 0.06 0.16 0.26 0.36
EC‐ET (eV) 0.50 0.40 0.30 0.20
漏れ電流への影響度 1 0.021 4.4×10-4 9.3×10-6
比率 1/48 1/48 1/48
3. 3 拡散漏れ電流
図 3-1のダイオードで、n-ドリフト領域の比抵抗が高い(NDが低い)場合、p+コ レクタで発生する電子よりも、n-ドリフト中で発生する正孔の方が圧倒的に多いた め、拡散漏れ電流は正孔成分が支配的である。拡散漏れ電流𝐽𝑑𝑖𝑓は、
38
𝐽
𝑑𝑖𝑓= −𝑞𝐷
𝑝𝑑𝑝𝑛𝑑𝑥
= −
𝑞𝐷𝑝𝑝𝑛0𝐿𝑝
(𝑒
−𝑞𝑉𝑅𝑘𝑇− 1)
(3-5) で与えられる。[3]Dp :正孔の拡散係数
𝑝𝑛 :空乏層端のホール濃度
𝑝𝑛0 :平衡状態でのn-ドリフト中の正孔濃度(= 𝑛𝑖2⁄𝑁𝐷) Lp :正孔の拡散長
逆バイアスVRが𝑘𝑇
𝑞に対して十分大きいときは、
𝐽
𝑑𝑖𝑓=
𝑞𝐷𝑝𝑝𝑛0𝐿𝑝 (3-6)
で表される。
Lpは、正孔のライフタイム𝜏𝑝を使って、下式で表される。
𝐿
𝑝= √𝐷
𝑝𝜏
𝑝. (3-7)拡散係数はキャリア移動度 μ を用い、下記のアインシュタインの関係式から得ら れる。
𝐷 =
𝑘𝑇𝜇𝑞 (3-8)
最終的に、拡散漏れ電流𝐽𝑑𝑖𝑓は、
𝐽
𝑑𝑖𝑓= √
𝑞𝑘𝑇𝜇𝜏 𝑝𝑝
𝑝
𝑛0. (3-9)で計算できる。式(3-9)からわかるように、拡散漏れ電流は、逆バイアスVRに依存 しない。
3. 4 漏れ電流の温度依存性
発生漏れ電流と拡散漏れ電流は異なる温度依存性を持つ。実測した漏れ電流の温
39
度依存性を調べることにより、発生、もしくは、拡散漏れ電流のどちらが支配的か理 解するのに役立つ。
発生漏れ電流は真性キャリア濃度 niに、拡散漏れ電流は ni2にそれぞれ比例する。
[4]
niの温度依存性は、次式で表される。[5]
𝑛
𝑖∼ 𝑇
3/2e
(−𝐸𝑔/2𝑘𝑇) (3-10)𝐸
𝑔 :半導体のバンドギャップ式(3-3)における𝑣𝑡ℎは𝑇1 2⁄ に比例し、その他のパラメータの温度依存性は小さいこ とから、式(3-10)を用いて、発生漏れ電流の温度依存性は、
𝐽
𝑔𝑒𝑛∼ 𝑇
2e
(−𝐸𝑔/2𝑘𝑇) (3-11) となる。𝐸𝑔も温度依存性を有し、Siに関しては、実験的に求められた次式が知られている。
[6]
𝐸
𝑔= 1.170 −
4.73×10−4 ×𝑇2𝑇+636 (3-12)
拡散漏れ電流𝐽𝑑𝑖𝑓の温度依存性は、
𝐽
𝑑𝑖𝑓∼ 𝑇
(3+𝜔/2)e
(−𝐸𝑔/𝑘𝑇) (3-13) で表される。[3] ここで、パラメータ𝜔は定数である。また、
𝑝
𝑛0= 𝑛
𝑖2/ 𝑁
𝐷 (3-14)が成り立つ。式(3-9)において、𝜇𝑝 と𝜏𝑝 の温度依存性を考慮しない場合、式(3-10)、式(3-14)から、𝜔 = 1となる。𝐽𝑔𝑒𝑛、𝐽𝑑𝑖𝑓とも温度 T を含んだ指数関数を有する ため、Tnの項は、温度依存性に大きな影響を与えない。
式(3-11)、式(3-13)から、横軸を1/T、縦軸に𝐽𝑔𝑒𝑛と𝐽𝑑𝑖𝑓の自然対数を取れば、その
40
傾きはそれぞれ−𝐸𝑔/2𝑘𝑇と−𝐸𝑔/𝑘𝑇になり、𝐽𝑔𝑒𝑛に比べて𝐽𝑑𝑖𝑓の方が温度依存性が大き くなることがわかる。
図 3-1 ダイオードにおける漏れ電流の発生メカニズム
p+コレクタ n- ドリフト n+ エミッタ
空乏層 (幅: W) 電子
正孔
発生電流Igen
拡散電流 拡散電流
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参考文献
[1] R. N. Hall, “Electron-Hole Recombination in Germanium” Physical Review 87, 387, 1952.
[2] W. Shockley, and W. T. Read, “Statistics of the Recombinations of Holes and Electrons”, Physical Review 87, 835, 1952.
[3] S. M. Sze, "Physics of Semiconductor Devices, 2nd Edition”, (Wiley Interscience Publication, 1981), pp. 87-88.
[4] B. J. Baliga, “Power Semiconductor Devices”, ( PWS Publishing Company, 1996), pp. 169-171.
[5] S. M. Sze, "Physics of Semiconductor Devices, 2nd Edition”, (Wiley Interscience Publication, 1981), p. 19.
[6] C. D. Thurmond, “The Standard Thermodynamic Functions for the Formation of Electrons and Holes in Ge, Si, GaAs , and GaP” Journal of the Electrochemical Society 122, 1133, 1975.
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