3. 抗原抗体反応測定
3.3. 測定の結果及び評価
3.3.1. FET特性
生体分子検出測定においてSiNWバイオセンサから電界効果トランジスタ(FET)特 性を確認することは生体分子の検出が可能なデバイスであるかが判断可能という非常 に重要な意味を持つ。電界効果コンデンサはゲート、ソース、ドレインの3つの電極が あり、ゲート-ソース間に加える電圧によってドレイン-ソース間に流れる電流を制御で きる。電界効果トランジスタをSiNWバイオセンサに置き換えると、SiNWの両端のTi 電極がドレインとソースに対応し、生体分子が持つ電荷がゲートの役割を果たす。つま り、FET特性を確認することで生体分子の持つ電荷によって電流量の変化が得られるデ バイスであるかどうかを確認することができる。
FET特性の測定について今回、front gate印加法とback gate印加法を使用した。front gate印加法は図2.31に示した外部電極基板で作製したNW幅57.9 nmのSiNWバイオ センサのポリチューブ内にPBSを10 µL滴下し、電極間のSiNWに0.1 Vの電圧を印加 する。その後、ポリチューブ内のPBSにAgCl 参照電極を浸しそこから-1.0 V~1.0Vの
範囲を100 mVステップで20点電圧スイープ印加し、電流値を測定した。図3.3にNW
幅57.9 nmのSiNWバイオセンサの測定結果を示す。
Back gate印加法は図2.32に示した外部電極基板で作製したNW幅57.9 nmのSiNW バイオセンサのポリチューブ内にPBSを10 µL滴下し、電極間のSiNWに0.1 Vの電圧 を印加する。その後、導線を通じて底面の銅板から-1.0 V~1.0Vの範囲を100 mVステッ プで20点電圧スイープ印加し、電流値を測定した。図3.4にNW幅36.9 nmのSiNWバ イオセンサの測定結果を示す。
図3.3 NW幅57.9 nmのSiNWバイオセンサのFET特性測定結果
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図3.4 NW幅36.9 nmのSiNWバイオセンサのFET特性測定結果
図3.3よりNW幅57.9 nmのSiNWバイオセンサからはゲート電圧の増加によるチャ
ネル電流の増大が見られなかった。これは、NW幅が太いことや、均一エッチングがさ れておらずSi層がまだ残っている可能性があることが考えられる。
図3.4よりNW幅36.9 nmのSiNWバイオセンサは負の電圧を印加しているときには
電流が抑えられ、正の電圧を印加しているときには電流値の上昇が見られた。これは、
負の電圧の印加によりSiNW表面のキャリアが欠乏し、電流量が減少していることが確 認できる。逆に、正の電荷を印加することでSiNW表面にキャリアが蓄積し、電流量が 増加していることも確認できる。これらの結果からこのデバイスは生体分子の持つ負電 荷によって電流値の変化が得られるデバイスであることが確認された。
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3.3.2. 幅57.9 nmのSiNWバイオセンサを用いた生体分子の検出実験結果
図3.5はNW幅57.9 nmのSiNWバイオセンサによるPBSおよびアルブミン、BSA、
Rabbit-IgG、濃度0.6 fM~600 nMのIgG溶液を反応させたときの電流値の時間変化であ
る。測定を進めるごとに電流値は上昇している。n 型の SiNW バイオセンサに対して、
負電荷の生体分子が付着すると電流は本来減少するはずであるが、電流上昇が起きてい ることからバイオセンサとして動作をしていないことが分かった。考えられる原因とし ては SiNW の表面の繊維状のものにより NW表面状態が良くないこと、NW 幅が太い SiNW であったこと、基板の均一エッチングができておらず Si 層がまだ残っていたこ となどが考えられる。
図3.5 NW幅57.9 nm のSiNWバイオセンサを用いた 抗原抗体反応による電流連続モニタリングの結果
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図3.6にNW幅57.9 nmのSiNWバイオセンサにおける抵抗変化率の濃度依存性を示
す。それぞれの測定における抵抗変化率は、測定によって得られた抵抗をR、IgG反応 前で電流が最も低く安定しているアルブミン測定時の抵抗値を R₀とすると以下の式で 求められる。
(𝑅 − 𝑅0) 𝑅0
× 100 % (3.3.1)
IgG濃度の増加に伴い抵抗変化率は負の方向へ減少している。これはバイオセンサと して正しく動作していないことを示しており、SiNWに生体分子が付着することによる 電流値が減少を確認できなかったといえる。
図3.6 NW幅57.9 nm のSiNWバイオセンサを用いた 抗原抗体反応による抵抗変化率のIgG濃度依存性
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3.3.3. 幅36.9 nmのSiNWバイオセンサを用いた生体分子の検出実験結果
図3.7はNW幅36.9 nmのSiNWバイオセンサによるPBSおよびアルブミン、BSA、
Rabbit-IgG、濃度 6 aM~600 nM の IgG 溶液を反応させたときの電流値の時間変化であ
る。PBS溶液中の電流はだんだん下がっていて、500秒後に安定になった。PBS溶液中 の電流は基準電流とする。アルブミン溶液をセンサ部へ導入し、時間の推移による電流 値が下がっているためアルブミン分子がSiNW表面に付着したことが確認できた。BSA 溶液を導入し、電流の減少が見られなかった。それはSiNW表面がアルブミン分子に覆 われているため、非特異的結合がなかったということが分かった。Rabbit-IgGを反応さ せても電流が下がらなかったことからアルブミンと結合しないことを確認できた。IgG
濃度6 aM、60 aMでは電流値の減少は見られず、600 aMから電流値の減少が見られた
ことから検出限界の濃度は600 aMであると言える。IgG濃度600 aMから6 pMまでは 1000 秒時点での電流は順調に下がっているが 0~400 秒の間では低い電流値から上昇し ていきその後安定している。60 pMからは1000秒時点での電流値の上昇が見られた。6 pMから電流が下がらなくなったのは 6 pM で飽和したと考えられ、電流が上がったの は図3.7から分かるよう電流が安定していないためと考えられる。
図3.7 NW幅36.9 nm のSiNWバイオセンサを用いた 抗原抗体反応による電流連続モニタリングの結果
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図3.8にNW幅36.9 nmのSiNWバイオセンサにおける抵抗変化率の濃度依存性を
示す。それぞれの測定における抵抗変化率は、測定によって得られた抵抗をR、IgG 反応前で電流が最も低く安定しているアルブミン測定時の抵抗値をR₀として3.3.1式 で求めた。
IgG濃度6 aM、60 aMでは抵抗変化は見られなかった。これは、検出に用いた試料溶
液は10 µLなので、6 aMと60 aMのIgG溶液では分子量が36と360分子と僅かである
ため低濃度の生体分子ではキャリアの欠乏が十分に起きておらず、NW内の空乏層に変 化が起きていないと考えられる。600 aMから6 pMまで濃度の増加に伴い抵抗変化率の 増加が確認できる。これは SiNW に生体分子が付着することにより NW 表面のキャリ アが欠乏し空乏層が広がることにより電流値が減少したことを確認できたといえる。6 pMで抵抗変化率のピークを迎え、抵抗変化率は31.8 %であった。60 pMから抵抗変化 率の上昇が見られなかったのでここで飽和したと考えられる。
図3.8 NW幅36.9 nm のSiNWバイオセンサを用いた 抗原抗体反応による抵抗変化率のIgG濃度依存性
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