2.2.1. 粉末X線回折測定1)
結晶を微視的に眺めた場合、ある原⼦網⾯からなる⾯指数(h k l)をもった平⾏な格
⼦⾯が無数にあり、それらはdという格⼦⾯間隔をもっていると考えられる。dは
⼀般的にオングストローム単位で測れる⼤きさを持っており、これらは X 線の波
⻑と同じオーダーである。このことから結晶は X 線に対して回折格⼦の役割を果 たす。この場合、X線の⼲渉によって波が強められる条件はラウエの回折条件を満
⾜した場合に次のブラッグの条件式で表される。
2dsinq = nl (式 2-1)
したがって、⼊射⾓度θを変えながらX線を⼊射すると、特定の波⻑の箇所で、
散乱強度の⼤きな回折線が得られ、結晶の構造に起因する情報を得ることができる。
このようにして得られた回折パターンはデータベース化されている回折パターン と⽐較することで、組成や構造を同定することができる。
実際に測定する⼿順としては、乳鉢を⽤いて測定する粉末を粉砕し、⼗分に細か くする。この粉末試料をスパチュラ、定規を⽤いてガラスホルダーに詰めた。ガラ スホルダーに詰める時は、詰めた試料の表⾯を平らにするようにした。
- 32 - 2.2.2. 密度の測定
得られた焼結体のかさ密度ρを測定した。かさ密度は開⼝気孔と閉⼝気孔の両⽅
を考慮した場合の密度であり、次式を⽤いて求めた。
ρ = de (式 2-2)
mは質量、Vは体積であり、Vはノギスで計測した試料の⼨法より決定した。
2.2.3. ⾛査電⼦顕微鏡とエネルギー分散型X線分光法による観察
⾛査型電⼦顕微鏡(SEM)は電⼦線をプローブとして、試料表⾯の形状を⾼倍率で 観察するための装置である。試料に電⼦線を照射すると、その表⾯からは電⼦や光、
特性 X 線など種々の信号が発⽣する。このうち⾼エネルギーで放出される電⼦は 反射電⼦(後⽅散乱電⼦)と呼ばれる。⼀⽅、数⼗eV 以下の、⼊射電⼦の⾮弾性散 乱過程で試料表⾯ から放出される電⼦は⼆次電⼦と呼ばれる。この⼆次電⼦は試 料表⾯から数⼗nm 程度の深さ以下では試料から抜け出すことが出来ないため、細 く絞った電⼦線を試料に当てて表⾯を操作し、⼆次電⼦を検出することで、⼆次電
⼦のコントラストによって試料表⾯の形状を観察することが出来る。
エネルギー分散型 X 線分析(EDS)は、SEM 観察時に⼆次電⼦や反射電⼦と同時 に放出される特性 X 線のエネルギーを測定することでスペクトルを得る測定⼿法 である。物質を構成する原⼦はそれぞれ固有の殻電⼦準位をもっており、ここにX 線や電⼦線などを照射すると特性X線が発⽣する。この特性X線は原⼦の内殻電
⼦の準位差、すなわち原⼦固有の準位間遷移エネルギーをもつ。半導体検出器に特 性 X 線が⼊射すると、X 線のエネルギーに相当する数の電⼦と正孔の対が⽣成さ れる。この⽣成数を測定することで X 線のエネルギーを知ることができ、存在元 素の同定や構成元素の含有率、試料表⾯の分析を⾏うことが出来る。
粉末試料を観察する場合、試料台にカーボンテープを貼り付け、その上に各試料
粉末をその上に付着させた後、クリーンスプレーにより余剰試料や粉塵を除去した。
焼結試料を観察する場合、焼結試料をアイソメットカッターにより試料台にのる サイズに切り出した。この試料の⽚⾯を#1000、#2000 ダイヤモンドパッドでそれ ぞれ 5, 20分程度 湿式研磨を⾏った後、アクアダイヤ液(粒径 3.0、0.5、0.125 µm、
MARUTO製)を⽤いてそれぞれ約 30 分間バフ研磨を⾏い、観察する⾯を作製した。
2.2.4. 誘導結合プラズマ発光分析分析
各試料を10 mg秤量し、塩酸(35.0〜37.0%)3 mlを加えた後に硝酸(69%)1 mlを加 えて試料を溶かしてから更にイオン交換⽔ 1 mlを加えた。その後、この溶液から
0.5 mlをイオン交換⽔により希釈して分析試料を調製した。各元素の濃度は計算値
から20 ppm以下となるようにした。
2.2.5. 導電率の測定
導電率の測定は直流四端⼦法により⾏った。この測定⽅法の模式図及び回路図は Fig. 2-1に⽰す。
図 2-1. 直流四端⼦法の(a)概要図および(b)回路図.
V
L
V RV
RS
- 34 -
ここでは試料に巻きつけたPt線電極間の距離をL、測定試料の抵抗をRs、電圧計 の内部抵抗を Rvと置く。試料と Pt 線および Pt ペーストの接触抵抗は Rvおよび Rsと⽐較し⾮常に⼩さく無視できるものとする。Rsが Rv と⽐較し⾮常に⼩さい 場合、Rvを流れる電流は無視できるため、
𝐼 = 𝐼g+ 𝐼h≈ 𝐼gとなる。測定試料の電流が流れる断⾯の⾯積をAとすると、試料の 導電率は(2.1)式で表されるため、電圧及び電流値を測定できれば試料の導電率σを 求めることができる。
𝜎 = klm]j (式 2-3)
2.2.6. ゼーベック係数の測定2)
測定に⽤いられる回路の電位についての模式図を図2-2に⽰す。電圧計で測定さ れるこの回路ループの電圧は(2.2)式で表される。
𝐸 = 𝐸o+ 𝐸p+ 𝐸g = 𝑆o(𝑇q− 𝑇=) − 𝑆p(𝑇r− 𝑇=) + 𝑆(𝑇r− 𝑇=)
= 𝑆o𝑇q− 𝑆p𝑇q+ 𝑆(𝑇r− 𝑇q) + 𝑇=(𝑆o− 𝑆p) (式 2-4) ここでEB、EAは試料と計器+及び-曲の電位、ESは試料にかかる電位、T0は電圧計 の温度、Eは試料に発⽣した温度差DTによる熱起電⼒、TH及びTCは⾼⾳部と低⾳
部の温度、SAおよび SBは各々接触している熱電対線のゼーベック係数で、S は試 料のゼーベック係数である。測定される熱起電⼒SMは、以下のように表される。
𝑆s =t m
u[tv =wxtv[wytvzw(tt u[tv)zt^(wx[wy)
u[tv (式 2-5)
よって試料のSは以下のようになる。
𝑆 = 𝑆s+wytu∆t[wxtv+t^(w∆tx[wy) (式 2-6) つまり、未知の値である試料のSは計測されたSMと計測で使われた熱電対のSAの 和であり、SAが既知の値であれば試料のゼーベック係数Sを求めることができる。
図 2-2. ゼーベック係数の測定回路(左図)と電圧ループ(右図).
2.2.7. 熱伝導率の測定
熱伝導率κは試料の密度ρ、⽐熱Cp、熱拡散率αが既知であれば、 (式2-7)で算出 される。
𝜅 = 𝜌𝐶6𝛼 (式 2-7)
(a) 熱拡散率α
レーザーフラッシュ法による測定の理想条件(試料が外界と断熱されていることや 試料が均質かつ緻密であること等)を仮定して熱拡散率⽅程式を解くと、試料表⾯
の温度応答として(式2-8)が得られる。
𝜃 = 𝜃•{1 + 2 ∑ (−1)‚∙ exp (−‚†‡†ˆ‰
]† )
Š‚‹? } (式 2-8)
ここでqは温度の上昇幅、qmは試料の温度上昇最⼤値、aは熱拡散率、tはレーザー 照射してからの時間、L は試料厚さである。𝜃/𝜃• = 1/2に達するまでの時間を t1/2
とすれば、熱拡散率は(2.9)式により算出される。
𝛼 = 0.1388‰]†
•/† (式 2-9)
(+) (−) T0
T0
TH
TC
B A
voltmeter
E field
Loop (+) (−)
(−)
EB = SPT(TC – T0) ES = S(TH – TC)
EA= SPT(T0 – TH)
E= EA + EB + ES
- 36 - (b) ⽐熱Cp
レーザーフラッシュ法にて α と同時に測定する場合、断熱保持された試料表⾯を レーザービームで照射加熱した場合の試料への⼊射エネルギーと試料の温度上昇 の関係は⽐熱の定義より(式2-10)で表される。
𝑎𝐴𝑞 = 𝑚𝐶”∆𝑇 (式 2-10)
ここでaは照射⾯の吸収率、Aは試料の照射表⾯積、qはパルスレーザーのエネル ギー密度、mは質量、DTは温度上昇である。
レーザーフラッシュ⽰唆熱量法では、表⾯および裏⾯が⿊化された⽐熱既知の参 照物質と試料に均⼀なパルスレーザービームを照射加熱されているとき、エネルギ ー密度qのレーザービームが均⼀に照射された場合の参照物質の温度上昇DTrおよ び試料の温度上昇DTmは、両試料の照射⾯の吸収率が共通ならばそれぞれ(式2-11)、
(式2-12)のように表される。
∆𝑇• = – k
d—˜™
•
𝑞 (式 2-11)
∆𝑇•= – k
d—˜™
•
𝑞 (式 2-12)
添字のrとmはそれぞれ、参照物質および試料を表している。従って、試料の⽐熱 Cp,mは参照物質の⽐熱 Cp,rが既知で温度上昇⽐が測定されれば(式2-13)より求めら れる。
𝐶6,• =kk›dœ∆tœ
œd›∆t›𝐶6,• (式 2-13)
実際の測定ではセットされた試料に対し、断熱保持された状態で、表⾯にエネルギ ー密度が均⼀なレーザービームをパルス状に照射加熱し、試料裏⾯の温度上昇曲線 を解析することで熱拡散率を求める。また、参照試料と測定試料を同時に均⼀照射 加熱し、両試料裏⾯の温度上昇を⽐較することで⽐熱を求めることができる。