再生可能エネルギーとは、自然界に常に存在する、繰り返し起きる自然現象により得られるエ ネルギーのことであり、海洋に目を向けると、波、潮流、海流、潮汐など海水を媒体とする運動 エネルギーに加え、海水温などの熱エネルギー、塩分濃度などの化学エネルギーも再生可能エネ ルギーである。また、風のような大気を媒体とする運動エネルギーや、太陽光エネルギーなどの 自然エネルギーも海洋空間においては豊富に得られる。
自然の持つエネルギーは、輸送しやすく利用しやすい電気エネルギーへと変換することが一般 的である。
洋上の風エネルギーを電気エネルギーに変換する洋上風力発電については、陸上風力発電でエ ネルギー変換技術の基本形はほぼ確立されており、実用化されている。洋上風力発電では、より 規模の大きな発電のための技術開発や、厳しい設置環境に適合させるための技術開発が進んでお り、商業化や実証研究が進展している。
波力、潮流、海洋温度差などを利用した発電に関しては実用的なエネルギー変換の方法を模索 している段階にある。
本章では、各発電システムについて概説するとともに、洋上風力発電を主体に開発作業の工程、
具体例について紹介する。
4.1 発電システム
4.1.1 洋上風力発電システム
(1) 風車
流体の持っているエネルギーを回転運動に変換する原動機を総称してタービンと呼ぶ。
風力発電では、空気の運動エネルギーを風車すなわち風力タービンによって回転エネル ギーに変換し、次に風車の回転エネルギーによって発電機を駆動させ、電気エネルギーに 変換している。
風車は昔から動力源として利用されており、さまざま形状がある。羽根の形や風に対す る羽根の回転面の向きなどの特徴によって、図 4.1.1 のような分類がされている。羽根の 回転軸が風向きに対して水平となる水平軸タイプと、回転軸が風向きに対して鉛直となる 垂直軸タイプとに大別し、次に作動原理として羽根に生じる揚力を利用するものと抗力を 主に利用するものとに区別している15。
水平軸・揚力型風車では、プロペラ型風車が、風力発電機としてはもっとも多く利用さ れている。セイルウィング風車は羽根に三角帆を張ったものであり、オランダ風車も羽根 として帆を張ったものである。ともにゆっくりと回転し、主に揚水ポンプの原動機として 利用されている。
一方、垂直軸・揚力型風車では、ダリウス型風車や直線翼式(ジャイロミル型風車)が
15 揚力と抗力:気流の進行方向に対して飛行機の翼のような形状が、翼の上面と下面に生じる圧力差により受ける垂直方向の 力を揚力、気流の進行方向の物体にあたる力を抗力といい、主として揚力で回転力を得る風車を揚力形風車、主として抗力で回 転力を得る風車を抗力形風車と呼ぶ。
ある。ダリウス型風車やジャイロミル型風車の羽根は、ともに飛行機の翼と同じ断面をし ており、ダリウス型風車では羽根を弓形に曲げている。これら風車は、小型の風力発電機 に使用されることが多い。
垂直軸・抗力型には、サボニウス式、パドル式、クロスフロー式、S 型ロータ式などが ある。サボニウス風車は円筒を縦半分に切って円周方向にずらした形をしたものである。
パドル風車は、風速計によく使われている半球形の受風面を持つ風車である。
図4.1.1 風車の分類
(出典:西華産業ウェブサイト)
(2) 風車の構造
プロペラ式風力発電システムを例として、風車の構造を図4.1.2に示す。風力発電シス テムは、機能ごとに区分すると、①風力エネルギーを機械的動力に変換するブレードなど のロータ系、②ロータの回転動力を発電機へ伝える伝達系、③発電機本体などの電気系、
④発電機の運転・制御を行う制御系、および⑤発電機本体などを支持する基礎・構造系か らなっている。
図4.1.2 洋上風車(着床式)の構造例
(出典:「再生可能エネルギー技術白書初版」2012、NEDO)
それぞれの系に含まれる代表的な構成要素を表 4.1.1に示す。
表 4.1.1 プロペラ式風力発電機の構成要素例
(出典:「風力発電導入ガイドブック」2008年2月改訂第9版、NEDO)
主な機器の特徴を次に記す。
① ブレード
中大型のプロペラ型風力発電機では、ブレードの回転により生じる騒音、ブレードの 製作コスト、製作工場から設置場所への輸送などの得失から、3枚翼型が主流となって いる。ブレードの材質は、軽量で耐久性のあるガラス繊維強化プラスチック(GFRP)
が主として使用され、必要に応じて雷対策、塩害対策などの工夫がされている。
② 発電機
発電機には、交流発電機である誘導発電機あるいは同期発電機が使用される。誘導発 電機には出力変動による電圧変動の問題があるが、発電機の構造が簡単で製造コストが 低い。同期発電機は電圧制御が可能であり、電力系統(electric(al) power system)* への影響が少なく、コスト高だが発電電力の品質が良く実用機への採用が増えている。
③ 増速機
増速機は、ロータ軸の回転数を交流発電機が要求する入力回転数に増速するための歯 車装置で、ブレードと発電機の中間に置かれる。
④ 運転・制御系
風車は、風速が上がればブレードの回転速度は上がり発電機の出力が増える。しかし、
一定の速度を超える強風では、ブレードの回転速度が過大となってブレードの破損事故、
あるいは発電機の出力が過大となって発電機の焼損事故等が引き起こされる恐れがある
ため、風車の出力(回転)を制御する必要がある。
風車の回転速度を制御する代表的な方法にはピッチ制御があるが、これは風速と発電 機の出力を検知して発電機出力が目標値(定格値)となるようにブレードの取付け角
(ピッチ角)を変化させ、風車の回転速度を制御するものである。ピッチ制御は、台風 等の強風時にブレードのピッチ角をゼロ度、すなわちブレードを風向に平行(フェザー 状態)にすることで、ロータを停止させる機能としても利用されている。
その他、風車の回転速度を制御する方法には、ストール(失速)制御がある。ストー ル(失速)現象とは、流れの中で翼の迎角を大きく(流入角度を大きく)していくと、
翼の上面で流れの剥離が起こり、急激に揚力を失う現象のことである。
ピッチ角を固定した風車では、流入する風の風速でブレードへの相対流入角が変わる。
一定以上の風速ではストール現象が起き、ブレードが揚力を失うようなブレード形状で、
風車の出力(回転)を抑制する方法をストール制御と呼んでいる。
図 4.1.3 は、ピッチ制御・ストール制御の出力特性を模式的に示したものである。一 定風速以上になると発電を開始(カットイン)し、発電機定格出力に達する風速以上で は、ピッチ制御もしくはストール制御により出力制御を行い、さらにある風速以上では 危険防止のため発電を停止(カットアウト)する制御を行う。
ピッチ制御はピッチ角を変えるための油圧装置等が必要となりコスト面では割高にな るが、ストール制御に比べて定格風速付近での発電効率を良くすることができ、定格風 速を超えた領域においても細かい制御が可能である。
図 4.1.3 ピッチ制御機・ストール制御機の出力特性
(出典:「エネルギア総研レビューNo.9 風力発電における運転制御方法 ピッチ制御・ストール制御」
中国電力)
風車のロータを風向きに追従させる制御をヨー制御という。
プロペラ型風車には、タワーやナセルの風下側でロータが回転するダウンウィンド型 風車とロータがタワーやナセルの風上側で回転するアップウィンド型風車とがある。そ れぞれの違いを図 4.1.4に示す。
図 4.1.4ダウンウィンドロータ方式とアップウィンドロータ方式の違い
(出典:日立製作所ウェブサイトを参考に作成)
ダウンウィンド型風車では、ロータに働く空気力そのものが自動的にロータを風向き に追従させる力として働くため、ヨー制御に特別な駆動機構は必要としない。しかし、
タワーによる風の乱れを受けるなどのデメリットもあって、タワーの風上側にロータ面 が向くようにしたアップウィンド型風車が大型風車の主流となっている。
アップウィンド型風車では、ナセル上に設けた風向センサーで風向を検出し、ロータ を風向きに追従するよう旋回させる駆動装置をナセルとタワーの間に設け、ヨー制御を 行っている。
その他、ナセル内に安全のため台風時や点検時にロータの回転を停止させるブレーキ 装置が設けられている。