第 5 章 世界のゴム市場と商品先物取引所
第 2 節 海外市場
第 1 項 シンガポール市場
シンガポールでは、2011 年 5 月 16 日に、シンガポール商品取引所(SICOM: Singapore Commodity Exchange)からシンガポール取引所(SGX)にゴム市場が移管され、引き続き RSS3 と TSR20 の取引が 行われている。SICOM 設立以前は、同国のゴム取引問題を所管していたシンガポールゴム協会(RAS=
Rubber Association of Singapore)がゴム市場の中心的役割を担っていた。
天然ゴムの輸出中継地点として発達したシンガポールにおけるゴム市場の歴史は古く、1920 年代からゴムの 先物取引が行われ、1980 年代までは、このシンガポールゴム先物市場が国際的な指標性を持っていた。現在 では、世界の指標市場は東京市場に移行しているが、シンガポール市場は世界の天然ゴム取引センターとして、
今でも産地市場を中心に参考市場として重要視されている。
現在、SGX で取引されている天然ゴムは、RSS3 と TSR20(FOB 約定)の 2 種類。取引時間は現地 時間の午前 7 時 55 分から午後 6 時まで(日本時間の午前 8 時 55 分から午後 7 時まで)で、取引単位は RSS3、TSR20 ともに 5 トン、呼値は 1kg 当たり US セントとなっている。
第 2 項 タイ市場
タイは世界最大の天然ゴム生産国であり、ゴム取引の長い歴史を持つ。タイは世界で最も輸出量が多かった ものの、昔から値段の決め方が買い手主導となっていたため、自身の国で価格の主導権を持ちたいとの意向から、
1990 年代にタイで 2 番目に大きい商業都市である南部のハジャイにあるタイゴム研究所内に現物取引所
(Central Rubber Market)を設立した。この Central Rubber Market とは農民がゴムを持ち寄り、値決 めをして売買する市場で、ここで値付けされた値段が、対外オファー(売り提示値段)の基準値となっている。
現在、タイの現物市場は全国で 3 カ所に増え、ハジャイの他にスラタニとナコンシータマラートにある。最近の取 引量の傾向としては、ハジャイ以外の地域が増加傾向を強めている。
日本は伝統的にタイ産 RSS3 の取引量が多いため、日本市場では、タイのシッパーが日々提示する対日商 社向けオファーをもとに算出される輸入採算価格が参考視されている。なお、タイのオファー価格を邦貨換算する 計算式は、([タイの現物オファー×為替)+輸入諸経費]となる。一般に、オファーは当該月より 2~3 カ月先 であるため、先積みに相当する為替先物を乗じて、それに海上輸送費(フレート)や輸送保険料(インシュラ ンス)、輸入関税等の諸経費を加算する。
一方、2000 年 4 月に「農産品先物取引法」が施行されたことに伴い、2001 年 9 月、商品取引所「タイ農 業商品先物取引所(AFET:The Agricultural Futures Exchange of Thailand)」が設立されると、
2004 年 5 月に RSS3 号、2005 年 9 月に STR20、2006 年 3 月にラテックスの取引が開始された。取引 は、ザラバ仕法で行われており、バーツ建てである。
タイにおける商品先物取引所の設立の背景には、農業分野が同国にとって非常に重要な位置を占め、全人 口の 40%がこの分野に関わっていること、また農産品の輸出が外貨獲得の主要な収入源となっていること等が ある。同国の農産品の輸出規模は、2011 年時点では年間 1 兆 4,477 億バーツで、中でも天然ゴムは約
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4,409 億バーツと 30%を占め、同国農産物のうち最大の輸出品目となっている。タイにおいては、従来は価格 変動によるリスクをヘッジできる場が国内になかったことから、農産品の市場流通システムに責任を持ち、またこの 効率化をはかるための商品取引所設立が不可欠となっていた。
しかしながら、長期に亘る取引低迷により 2016 年に AFET では全商品の取引停止を行うこととなり、現在 は「タイ先物取引所(Thailand Futures Exchange)」にて RSS3 号のみが取引されている。
第 3 項 マレーシア市場
マレーシアの天然ゴム先物市場は廃止されている。一方、現物については、マレーシア一次産業省に属するマ レーシア・ゴム局(MRB:Malaysian Rubber Board)の中にあるマレーシアゴム取引所(MRE:
Malaysian Rubber Exchange)が、天然ゴムの価格算出とその価格を公表する業務を所管しており、この 公表価格は、同省のホームページに日々掲載されている。
天然ゴム価格の算出は、MRB メンバーの中から任意に抽出された、SMR20 のプロデューサーとディーラーから のヒアリングによって集計される。ヒアリングした価格の平均値に調整を加えたものが、公表価格となる。公表価 格については、MRB のゴム特別委員会で定期的にチェックされている。問題が生じた場合は、マネージメント委 員会に報告され、審議を行うことになっている。
第 4 項 インドネシア市場
世界第 2 位の天然ゴム生産国であるインドネシアには、まだ公設の取引所が設立されていない。現物取引に 関しても、昔ながらの相対取引であり、産地の輸出業者がオファーを提示し、それに対し、輸入業者がビッド
(買い付け希望価格)を入れて値段を決めるというオーソドックスな取引形態となっている。
しかし、世界的に最も汎用されているスタンダード・グレードであるブロック状ゴム(TSR)はこのインドネシア産 が最も多く、米国の天然ゴム輸入のほとんどがこのインドネシア産 TSR で占められている。将来的には、タイを抜 いて世界最大の天然ゴム生産・輸出国となる可能性が高いことから、商業的な整備が急がれるところである。
第 5 項 中国市場
中国では、上海期貨交易所(SHFE : Shanghai Futures Exchange)に天然ゴムが上場されており、
同所では、ゴムの他に銅、金、亜鉛、アルミ、燃料油等の先物取引が行われている。
中国では、近年の急速な工業化に伴い、新ゴム消費量が伸びており、天然ゴム、合成ゴムともに世界最大の ゴム消費国となっている。中国の自動車産業は 2002 年の WTO 加盟以来、劇的な成長を遂げ、中国経済の 高度成長を後押しする牽引車となりつつある。中国の 2009 年の販売台数は 1,383 万台に達し、米国を超え て世界一となり、2010 年には 1,826 万台と、一国の年間自動車生産台数としては史上最高を記録し、その 後も増加を続けている。こうした背景もあり、2010 年の SHFE におけるゴム先物の年間出来高は 1 億 6,741 万枚に達し、ゴム市場としても世界一の規模となった(2011 年は 1 億 429 万枚、2014 年は 8,863 万枚と なり、世界最大を維持している)。今後も、ゴム需給の観点から中国の経済動向に注目する必要がある。
55 第 6 項 ゴムの OTC 市場(ゴム・フォワード市場)
ゴムの OTC 取引は、シンガポールで活発に行われている。シンガポールの OTC 市場は、「インター・ディーラー 市場」と呼ばれ、ゴム・ディーラー、シッパー、日本商社などがプレーヤーとなって TSR20 を中心に取引を行ってい る。
また、SGX では TSR20 を対象とした OTC クリアリングを行っている。
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