や中国等の他国と比較すると,学生会員が非常に少ない
(フェロー数とほぼ均衡)と指摘されている.学生会員 の多い国では,その後会員として残る率が少ないという 問題も抱えており,会員継続率では,日本の各支部は,
常にトップクラスである.また,米国と比較すると大学 や研究所という研究機関所属の会員が多い.米国では,
研究機関よりも産業界の会員が多く,学会は仕事のパー トナー探しや,転職先探しの場として使われていると思 われる.
YP, WIE, SB は,次章以降で活動紹介があるので,
Life Member Affinity Group(LMAG)の活動について,
紹介する.65 歳以上で,年齢と会員継続年数の合計が 100 を超えた会員が,LMAG というグループに属して 活動する.会費が無料になる代わりに,IEEE のミッショ ンである人類の利益となるような技術的なイノベーショ ンや経験値を追求するために,いろいろなボランティア 活動を行っている.単独講演会を開催したり,YP, WIE, SB と連携して講演会を共催したり,各種講演者 を務めたりもしている.東京支部の LMAG は,年数回 ニュースレターを発行しているので,興味のある方は,
そちらを見て頂きたい (2).
技術分野として 39 個の Society があり,多くの会員 はどこかの Society に属している (3).筆者(原崎)は,
Signal Processing(SP),Communications(COM),
Computer(C),Consumer Electronic(CE) の 四 つ の Society と, 標 準 化 活 動 を 行 っ て い る Standards Association のメンバーとなっている.学会誌,Society 誌,各 Society 内の特定分野の論文誌等を発行しており,
近年は購読料の高騰から,印刷された雑誌でなく Web で見ることが多くなっている.
IEEE は年に 1,600 ほどの国際会議を主催しており,そ の多くは Society 単位で開催される.例えば ICASSP
(SP),ICC や GLOBECOM(COM)などは,1,000~2,000 名の参加者数となる.近年,社会課題の解決が急務となっ ており,従来の Society 制という専門分野の技術者だけ の集まりでは,良い解決策が見いだせないとか,各 Society で同じような社会課題に関した国際会議を別々に 主 催したりするような問 題 が 起きている.そこで,
Technical Committee や Technical Community という 連携のための組織を作り,複数 Society の関連する技術 者に情報提供している.Technical Community には,
Big Data, Cloud Computing, Cybersecurity, Green ICT, Internet of Things, Internet Technology Policy, Life Science, Rebooting Computing, Smart Cities, S m a r t G r i d, S o f t w a r e De f i n e d N e t w o r k s, Transportation Electrification などがある.
Senior Member, Fellow への昇格というのが,研究
者としてのステータスであることは,本会等と同じであ るが,IEEE には,多数の Medal, Award という表彰制 度があり,日本からも多数の受賞者が出ている (4).個人 やグループの業績に与えられる表彰とは異なり,開発か ら少なくとも 25 年以上を経過し,地域社会や産業の発 展に多大な貢献をしたと認定される歴史的業績を表彰す る制度として,IEEE Milestone がある.Milestone は,
企業・大学・研究機関などに与えられるもので,選定さ れると,その業績を記した銘板(Plaque)が贈呈され,
ゆかりの地に展示される.日本は,1995 年の八木・宇 田 ア ン テ ナ に 始 ま り,2015 年 8 月 ま で に 26 個 の Milestone を受賞している (5).全世界で 159 個,アジ ア太平洋地域で 28 個の中で,26 個の受賞は,いかに 日本が地域社会や産業の発展に多大な貢献をしてきたの かということを認めてもらったあかしである.
2 Young Professionals の活動紹介
Young Professionals(YP)は,(学部卒業後 15 年 までの)若手技術者・研究者の会であり,全世界様々な 支部において YP Affinity Group が存在し,活発に活 動が行われている.
2.1 Tokyo Young Professionals の活動紹介 筆者(西宮)は,東京支部の YP の Chair として,国 内外で多くの活動を行っている.国内では,学生及び若 手技術者のためのキャリアアップに関するワークショッ プを毎年行い,若手による若手の育成に力を入れている.
また,投稿者の世代を問わないキャリアアップ・スキル アップに関するエッセイコンテストを毎年開催し,優秀 なエッセイに対して賞を与えている.これからのキャリ アを考える若手の励みとして,海外からも高評価を得て いるイベントである.このように YP は学生会員から社 会人会員になるための橋渡し的な存在として,就職活動 をする学生の年代から,社会人になってまだ間もない世 代のサポートをすることで,将来を担う IEEE の若手会 員の育成に大きく貢献している.
2.2 IEEE Region 10 Student/YP/WIE Congress 2015 の紹介
東京 YP は海外との交流も積極的に行っており,国際 的な YP 交流会にも参加している.2015 年 7 月,日本 からの若手技術者の代表として,筆者はスリランカにて 開催されたIEEE Region 10 Student/YP/WIE Congress 2015 に参加した.この Congress は 2 年に一度開催され,
アジア太平洋地域の学生,若手,女性会員を対象にして おり,講演会やグループディスカッション,ポスターセッ
解説 IEEE の紹介と日本での学会活動 229
小特集 学会とは
Technology Reviews and Reports
解 説
ションなどを盛り込んだ大規模な会議である.学会で会 議や大会と言えば,通常は専門・技術的な内容について 議論を交わす場というイメージがあるが,本会議は,技 術的な内容よりも,国際的なリーダとしての資質を高め るためのイベントであり,各国で行われているボランティ ア活動の紹介などを交えて,異国との文化交流を行うも のである.本会議を通して筆者が学んだことを紹介する.
まず日本人の長所として実感したのは,空気をよく読 み,他人の話をよく聴き,それをうまくまとめていくの が得意であることだ.しかしそれは同時に,自分自身の 意見をはっきり持ち,それを伝えるのが少し苦手である という短所にもつながっているように感じた.もちろん 個人差はあると思うが.一方でインド系の方々は,非常 に自分の意見をはっきり持っていて,ディスカッション のときにも常に率先して意見を発していて,若干の遅れ を取ってしまった.しかしその分,相手の意見に耳を傾 ける余裕が少なくも感じた.そしてつまるところ,どの 国にも長所と短所が存在することが分かった.しかし,
一番強く印象に残ったことは,特に優れた人たち,今回 の場合 IEEE のトップマネージメントの方々を見ている と,自国としての国民特有の短所を克服し,他国の長所 もしっかりと取り入れているという点である.それゆえ 彼らからは,どこの国の人っぽいな,という印象を受け なかった.正にグローバル人という雰囲気で,そういう 人は同じ共通したすばらしさを持っていると感じた.こ のことから学んだ大切なことは,他国の短所を見て,
「あぁ,自分はまだまだ大丈夫だ」と思うことではなく,
常に他国の長所を見て,そして自国の短所を見つめ直し,
改善していくことでグローバルな人間になっていく,と いうことである.もう一つ印象に残ったのは,異文化交 流イベントである.それぞれの国の伝統的な音楽を演奏 したり一緒に踊ったり,各国の文化の紹介をするという ものである(図 4,5).各国の伝統は本当にすばらしい ものであり,筆者は日本人として日本の文化に誇りを 持っているが,他国の文化に触れてみて,その文化のす
ばらしさをたくさん体験できた.どれが一番というもの ではなく,どの国もすばらしく,単純にどの国も「違っ たすばらしい文化」を持っているということを実感した.
セッション中,話がなかなか合わないなぁと思っていた 国の人とも,彼らの文化紹介でうれしそうに話をしてい るのを聴くと,「何だかこの人,いい人だなぁ」と感じ ている自分がいた.グローバルに生きていくためには,
ただ相手と話をするだけではなく,その国の文化を知る ことが何よりも大切なのかもしれない.本当にすばらし いイベントであった.また,音楽や踊りのパフォーマン スを通して,「音楽」や「感情」は世界共通のコミュニケー ション手段であり,誰もが一緒に喜び,楽しめるすばら しいものだと確信した.言葉で話しているときには相手 に対してまだまだ大きな壁を感じていたが,一緒に踊っ ているときは,本当に,誰とでも心を通わせることがで きた.どこの国でも「うれしい」や「楽しい」という気 持ちは,言葉を使わなくても感情や表情のみで世界共通 で表現し合えるのだ.海外が母体の学会に所属している と,こういう機会に恵まれるのが筆者にとって非常に幸 せなことだ.技術的な研究を進めるのももちろん当然で あるが,それと同時に今回のようなボランティア活動や 国際交流を通した学会の運営という視点からの活動も,
今後もより活発に行っていきたいと思う.技術的な面と,
国を越えた交流,この二つをしっかりと保って初めて世 界に通用する科学・技術が生まれるのだなと最近では感 じている.
3 Women in Engineering の活動紹介
Women in Engineering(WIE)は,年齢には関係せ ず,女性技術者・研究者を inspire, engage, advance することを目的とした組織として 1994 年に設立したグ ループである.現在は全世界に 1 万 6,000 名を超える 会員がおり,そのうちの約半分をアジア太平洋地域の会 員が占めている.各地域における WIE の活動の単位と 230 通信ソサイエティマガジン No.36 春号 2016
図 4 IEEE R10 SYW Congress での異文化の伝統音 楽交流
図 5 IEEE R10 SYW Congress での伝統文化紹介