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浮上分離、泡沫分離、溶媒浮選

気泡が水中を浮上するという特徴と界面がものを吸着するという 特徴を生かした水の浄化方法が浮上分離である。界面活性を有する 溶質は、特に気泡表面に吸着されやすい性質を持つ。このため、古 くから実験室的には、界面活性を持つ物質の濃縮に用いられてきた。

浮上分離の一種である泡沫分離の論文としては、1937年にはコール 酸やヘモグロビンの濃縮が報告されている67)。浮上分離は、下水の 浮遊物の分離法として一時期はよく利用された。また、金属イオン

(陽イオン)が脂肪酸などの陰イオンと難溶性の物質を作ることを利 用して、重金属の分離法としても使われている。これをイオンフロ

浮上分離、泡沫分離、溶媒浮選

表4.2 おもな浄化対象と適用単位操作

単位操作     沈殿 凝集 ろ過   化学処理 生物処理      攪拌 浮上分離   活性炭    塩素殺菌

オゾン酸化(無害化、殺菌、

脱色など)

マイクロバブル適用報告

上水 

       

(高度処理)

(高度処理)

下水 

(高度処理)

(活性汚泥、

メタン発酵)

(高度処理)

(高度処理)

化学工場 排水

○ 

○  

○ 

○ 

○  

(浮上分離)

部品工場・

洗浄排水

  ○

   

○(油)

   

(浮上分離)

浮上分離、泡沫分離、溶媒浮選

対象水 地下水 

○  

○    

○ 

○  

○(促進)

食品工場 排水

○  

○    

  

○ 

   

○    

(酸素富化、

浮上分離)

厨房排水

○ 

○      

     

(酸素富化、

浮上分離)

池・湖沼・

ダム湖  

○ 

○(曝気) 

○(曝気)

     

(酸素富化、

浮上分離、

殺菌)

灌漑水

       

○(曝気)

   

○    

(酸素富化、

殺菌)

ーテーション法とも呼ぶ。

また、疎水性の粒子に気泡を付着させ分離することもできる。コ ロイドなどの親水性固体の除去には凝集剤や気泡促進剤、疎水化剤 などを添加することがある。加圧溶解法など、水中でマイクロバブ ルを発生する気泡析出型発生法を適用する場合には、固体表面やコ ロイド凝集体内を気泡核として発生する場合が多く、比較的気泡の 付着しにくい親水的な物質に対しても、浮上分離を適用利用しやす い。浮上分離によるさまざまな物質の除去の基本原理を図4.1にま とめて示した。

水面で気泡が崩壊して、被分離物のみが水面に浮く場合や(被膜 浮遊法)、水の上に水より比重の小さい被水溶性の有機溶媒層を設 け、そこに被分離物である有機物などを溶解濃縮する場合(溶媒浮 選法)、あるいは水面に生成した泡沫とともに、被分離物を除去す

図4.1 浮上分離によるさまざまな物質の除去の基本原理 固体表面での気泡発生

吸着物質への結合 疎水化後

吸着

気泡内同伴 両親媒性物質の 吸着

凝集して内部 で気泡発生

疎水性微粒子 の吸着

る方法がある(図4.2)。最後の方法は泡沫分離法と呼ばれるが、最 初の2つの場合を含めて泡沫分離と呼ぶ場合もある。さらには、溶 媒浮選の場合には、気泡内への揮発同伴による揮発性有機物の除去 にも利用できる。他の場合には除去すべき物質が大気に拡散するた め好ましくない。

気泡として、マイクロバブルを使う場合には、ゆっくり浮上する ために吸着する時間を長くできること、ボイド率を上げられ、かつ 総気泡体積当たりの気液界面面積が大きいことから、溶液中の気液 界面面積が大きいため、吸着量を増やすことができる。そのためマ イクロバブルが古くから利用されてきた。ただし、あまりに気泡が 小さいと浮上速度も小さすぎるため、せっかく吸着した被除去物を 水面に移動できない。また、気泡総体積が大きいことが必要である。

つまり、ボイド率が大きくないと、気泡が小さいだけでは一定体積の 水中での気液界面は大きくならないことに留意しなければならない。

浮上分離、泡沫分離、溶媒浮選

図4.2 浮上分離による有機物質の分離方法 被洗浄水

有機溶媒

吸着 同伴

皮膜

泡沫分離法:

泡沫として分離

皮膜浮遊法:

水面浮遊膜として分離

溶媒浮選法:

被水溶性有機溶媒に溶解 泡沫

吉田らは、泡沫塔での泡沫分離のための最適気泡径も試算してい る68)。さまざまな仮定の下に、0.8 mmが最適であると試算した。か ろうじて、本書の対象とするマイクロバブルの範疇に入る。仮定 がマイクロバブル領域で成り立つかという議論は残るが、小さけ ればよいというものではないのは明らかである。もちろん、マイ クロバブルになれば、特別な吸着力が生じるのであれば話は変わ ってくる。

気泡、特にマイクロバブルの発生方法はすでに述べたようにさま ざまなものがあり、浮上分離においても加圧溶解法(この場合には、

被浄化水を直接加圧する場合と、他の水を加圧して混合するときに 気泡を発生させる場合がある)、多孔体吹き込み法、ベンチュリー 法、沸騰法、電気分解法(主に水素と酸素)、化学反応利用(主に二 酸化炭素)、生物発酵法など、ほとんどのマイクロバブル発生手段 が使用可能である69)

大成らは、圧力差により多孔体から直径数十μ

m

〜数百μ

m

の微 細な気泡を内部に発生させ浮上分離槽に供給する特許を出願して いる70)

泡沫分離法は気液界面への吸着力を利用する分離法であるが、泡 沫体積当たりの吸着能力(濃縮能力)は、たとえば、有機溶媒に比較 して数桁低い。簡単に試算してみると半径

rの気泡が、面積 Aの水

面に

1層並んだ泡沫を考えるとき、気泡1個の表面積S

は、S=4π

r

2。一辺2rの正三角形を単位面積とすると、この中に気泡の1/2個 分が含まれる。この正三角形の面積は

T 3 r

2。よって、単位水面面 積当たりの気泡表面積は

2

π/

T 3

3.63

であり全表面積Stotal

3.63 A。よって、rに依存しないことがわかる。しかし、その体積V

はV=

2Ar

で泡沫体積当たりの表面積はStotal

/ V=1.81/rとなり

(気泡 の重なりや接合部を無視)、rが小さいほど大きくなるのでこの点で は、マイクロバブルから作られた泡沫が通常気泡の泡沫よりも有利 となる。このとき、吸着密度Γとすると、泡沫体積当たりの吸着量

は、Γ

S

total

/V= 2

Γ

/r

である。さて、界面において、被吸着分子当た

りの占有面積を50Å2とすると、Γは約3×10−10

mol/cm

2=3×10−6

mol/m

2となる。よって気泡半径r=1mmのときと

10

μ

mの時で泡沫

体積当たりの吸着量を試算すると、それぞれ、6×

10

−3

mol/m

3(6×

10

−9

mol/mL)

、6×

10

−1

mol/m

3(6×

10

−7

mol/mL)となる。ところ

が、泡沫と同体積の有機溶媒が1mol/Lで被除去物を溶解できると仮 定すれば、1×10−3

mol/mLであるから、泡沫は溶媒にはとうてい

かなわない(泡沫内の液体体積当たりで比較すれば別の議論となる)

(図4.3)。

すなわち、単純に濃縮能のみを比較すると、溶媒浮選の方が泡沫 分離よりも有利である。また、振とうによる溶媒抽出などと比べる と、有機溶媒と水溶液を接触させるためには、大きな容積と多大な エネルギーが必要となる。必要なエネルギーは、被除去物の濃度が 薄くなればなるほど処理すべき量も大きくなるので大きくなる。さ

浮上分離、泡沫分離、溶媒浮選

図4.3 1層泡沫と有機溶媒の濃縮率の比較 1層泡沫 有機溶媒

らには、難水溶性の有機溶媒を使うにしても、水への溶解や大気へ の揮発飛散は完全には避けられないので、溶媒浮選を、自然界の水 や飲用水に適用することは望ましくない。よって、環境や健康に留 意する場合には、泡沫分離や浮上分離(水面浮遊膜)が有利となる。

これは、後述する脱脂洗浄の場合と同様である。ただし、この場合 にも分離した物質の環境への拡散を防ぐ手段が必要である。

竹村らは、溶媒浮選装置を用い、界面活性を持つヘキサノールの 除去試験を行った。水にヘキサノールを約100mg/L溶解させた水溶 液を水槽に入れ、さらに水に難溶性の有機溶媒であるオクタンを水 溶液の上に置いた。ベンチュリータイプのマイクロバブラー(図

3.6)

を用いて、マイクロバブルを水槽の底から導入した。液流量は7L / 分、空気流量は1L /分とし、水中の全炭素濃度の時間変化を測定し た。その結果、時間経過と共に水中の全炭素濃度が減少した。

固体粒子の除去に関しては、どのような場合に気泡が付着し浮上 除去可能かという理論的検証もあるが割愛する。親水性の物質に吸 着して疎水性にする捕捉剤(疎水化剤)としてはオレイン酸Na、粒子 表面のイオン基と結合する金属イオンなどがある。起泡剤としては、

適度な泡沫形成が可能な、2-エチルヘキサノールなどが使われる。

芝田らは、論文中にはマイクロバブルとの表記がないが、有害な 有機塩素化合物の水中からの除去のための溶媒浮選の実験を行って いる72)。彼らの除去機構モデルは、単に吸着や気泡内への同伴だけ ではなく、気泡の境膜での同伴、有機溶媒/水界面での直接除去も 考慮している。有機化合物として、モノクロロベンゼン、トリクロ ロベンゼン、ナフタレンなど、蒸気圧や水への溶解度の異なる多く の物質について調べた。溶媒はケロシンやオクタノールを用いてい

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