測定試料は、第15次調査SP13から出土した深鉢に付着した炭化物(試料No.1)1点と同貯蔵穴出土の堅果類
(No.2)1点である。SP1は、河道の南側斜面下端に形成された貯蔵穴群の1基である。径1.2m程の円形を呈し、
深さ0.33mが残る。貯蔵穴から出土した深鉢は福田K2式に含まれるものである。堅果類は貯蔵穴の下半から多く 出土したものの1点てある。密閉された状況にあるとみられ、測定試料の年代は、貯蔵穴使用時の年代と考えら れる。
試料No.3(縄文時代後期中葉)
(図19、阿部1994)測定試料は第5次調査SP1出土の深鉢に付着した炭化物である。本調査では河道斜面において貯蔵穴7基を検 出した。SP1は径1×0.9mの楕円形を呈し、深さは0.43mが残る。試料No.3は完形の深鉢でSP1に据えられた状 態で出土した。この土器の時期は、「後期Ⅳ群土器」として設定され、彦崎K2式よりも古い段階と位置付けられ ている。
試料No.4~7(弥生時代早期)
(図20、山本1992・2004)試料No.4は第3次調査SP1から出土した堅果類の1点である(図20a)。SP1は、径0.92~0.96mの円形を呈し、
深さは0.3~0.45mを測る。測定試料No.4の堅果類は最下層から出土した1点である。SP1の時期は上部を覆う包 含層の時期と出土遺物から弥生早期である。
試料No.5は第15次調査SP19から出土した堅果類である(図20b)。同貯蔵穴は、1.1×1.0mの不整円形を呈し、
深さ0.74mが残る。堆積状況から複数回の使用が指摘されており、その中の1点を測定した。貯蔵穴の最上層は 粘土で密閉されている。本遺構の時期は、検出面の共通性から第3次SP3と同時期と考えられる。
試料No.6は13層から出土した突帯文土器(図20c)の外面に付着した炭化物である。また試料7は第15次調 査「谷部」出土の突帯文土器(図20d)に付着した炭化物である。第3次調査13層と、第15次調査谷部包含層 は、両地点の位置関係から同一層にあたる。両試料とも、同層に一括廃棄された状況で出土した土器群に含まれ
図19 第5次調査SP1-縄文後期-
深鉢(試料 No.3)
(『津島岡大遺跡』4 図 12-6)
図20 第3・15次調査-弥生早期-
試料No.4
a.第3次調査SP1(試料No.4)
b.第15次SP19(試料No.5)
c.突帯文土器(試料No.5)
(『津島岡大遺跡3』図39-9)
d.突帯文土器(試料No.6)
(『津島岡大遺跡14』図85-187)
SP1
SP19
第3次SP1と第15次SP19の位置る。この土器群は「津島岡大式」と評価されている。
b.本分析の結果
小林報告、古環境報告の測定結果については表12にまとめている。両者の測定結果について比較するには、古 環境報告の数値を、小林報告と同基準のデータを用いた計算値に換算する必要があり、小林謙一氏により換算を 行った値(以下「換算値」と記する)を本書38頁図16に掲載する。この換算値での比較において、両測定結果は ほぼ合致していると評価され、より確実性の高い年代測定値であると理解される。
その中で、縄文時代後期前葉の測定値は、福田K2式土器(小林報告OKOD10、古環境報告No.2)の付着炭化 物の年代は、小林報告の較正年代で4815~4410年calBPとなり、小林報告でも指摘されているように福田K2式土 器の従来の年代観より古く出ている。この点の解釈については課題が残る。
弥生時代早期の測定値については、小林報告較正年代で2755~2491年calBPが得られている。発掘調査での一 括性の高い出土状況と合致する測定結果と評価される。また貯蔵穴出土堅果類の測定値についても、近接した値 であり、「津島岡大式土器」群と貯蔵穴群の同時期性を裏付けるものである。
津島岡大遺跡の放射性炭素年代測定についてはこれまでにも蓄積したデータがある1。本来ならばそれらとの 比較検討を行うことが必要であるが、年代較正の基準となるデータが異なっている測定値の扱い等、いくつか仮 題があり、機会を改めて整理することとしたい。
注
1.山本悦世2005「構内遺跡における発掘資料の自然科学的分析」『岡山大学埋蔵文化財調査研究センター紀要2004』岡山大 学埋蔵文化財調査研究センター
参考文献
山本悦世1992『津島岡大遺跡3−第3次調査−』岡山大学埋蔵文化財調査研究センター 阿部芳郎1994『津島岡大遺跡4−第5次調査−』岡山大学埋蔵文化財調査研究センター 山本悦世2004『津島岡大遺跡14−第15次調査−』岡山大学埋蔵文化財調査研究センター 表12 年代測定結果一覧
測定試料NO. 遺構 資料 報告 番号
小林報告 古環境報告
試料No. 較正年代
calBP 較正年代
calBP 較正年代 calBP 試料
No.
14C年代(年 BP) δ13C
(%) 補正14C年代
(年BP)
暦年代(西暦)
(1α:68%確率、
2α:95%確率)
1 15次 貯蔵穴SP13
後期前葉土器付着 炭化物
51−63図 OKOD
10 4815(19.3%)
4753calBP 4725(69.2%)
4511calBP 4484(6.9%)
4442calBP No.2 4010±40 -26.1 4010±40 交点;cal BC2550、2540、2490 1α:cal BC2580-2470 2α:cal BC2600-2460
2 下半出土
ドングリ OKOD
15 4420(93.9%)
4234calBP 4196(1.5%)
4184calBP −
3 5次 貯蔵穴SP1
後期中葉土器付着 炭化物
OKOD5 3978(80.2%)
3816calBP 3797(15.2%)
3723calBP No.3 3560±40 -26.0 3540±40 交点;cal BC1890
1α:cal BC1920-1870、1840-1780 2α:cal BC1960-1750 4 3次
貯蔵穴SP1
6層出土アラカシ OKOD
12 2750(40.5%)
2679calBP 2641(13.0%)
2608calBP 2601(41.9%)
2492calBP −
5 15次
貯蔵穴SP19 ドングリ OKOD
17 2703(23.0%)
2630calBP 2619(12.8%)
2559calBP 2543(59.6%)
2356calBP −
6 3次 13層
突帯文土器付着炭 化物
39−9図 OKOD
2 2755(43.8%)
2677calBP 2665(0.6%)
2658calBP 2643(51.0%)
2491calBP No.1 2570±40 -26.3 2550±40 交点;cal BC 780 1α:cal BC790-770 2α:cal BC800-750,700-540 7 15次
谷部 突帯文土器付着炭 化物
85−187図 OKOD
6 2755(43.8%)
2677calBP 2665(0.6%)
2658calBP 2643(51.0%)
2491calBP No.4 2490±40 -25.4 2480±40 交点;cal BC760,680,550 1α:cal BC770-520 2α:cal BC790-410