【見直し後】
約半年から 1 年程度の間に、制度設計から周知まで行うこともある。
60 歳定年制を採用していた東北地方の中位銀行が賃金制度の2度にわたる見直しを行 う際に、従業員の 73%が加入する労組の同意は得たが、少数組合の同意を得ないまま就業
規則の変更を実施し、この変更に基づいて、いずれも当時
55歳以上の管理職・監督職階に あった少数組合の組合員が管理職の肩書きを失うとともに賃金が減額されたことについて、
第四銀行事件までの最高裁判決の考え方を踏襲しつつ、就業規則の変更は合理的なものとい うことができず、就業規則等変更のうち賃金減額の効果を有する部分は、不利益を受ける少 数組合の組合員にその効力を及ぼすことができないとされた事例。
(判決の要旨)
〈大曲市農業協同組合事件最高裁判決、第四銀行事件最高裁判決等の要旨を引用した上で、
〉
本件就業規則等変更は、被上告人にとって、高度の経営上の必要性があったということがで きる。
[中略]しかしながら、本件における賃金体系の変更は、短期的にみれば、特定の層の行 員にのみ賃金コスト抑制の負担を負わせているものといわざるを得ず、その負担の程度も前 示のように大幅な不利益を生じさせるものであり、それらの者は中堅層の労働条件の改善な どといった利益を受けないまま退職の時期を迎えることとなるのである。就業規則の変更に よってこのような制度の改正を行う場合には、一方的に不利益を受ける労働者について不利 益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきであり、それ がないままに右労働者に大きな不利益のみを受忍させることには、相当性がないものという ほかはない。本件の経過措置は、前示の内容、程度に照らし、本件就業規則等変更の当時既 に
55歳に近づいていた行員にとっては、救済ないし緩和措置としての効果が十分ではなく、
上告人らは、右経過措置の適用にもかかわらず依然前記のような大幅な賃金の減額をされて いるものである。したがって、このような経過措置の下においては、上告人らとの関係で賃 金面における本件就業規則等変更の内容の相当性を肯定することはできないものといわざる を得ない。
本件では、行員の約
73%を組織する労組が本件第一次変更及び本件第二次変更に同意している。しかし、上告人らの被る前示の不利益性の程度や内容を勘案すると、賃金面における 変更の合理性を判断する際に労組の同意を大きな考慮要素と評価することは相当ではないと いうべきである。
[中略]専任職制度の導入に伴う本件就業規則等変更は、それによる賃金に対する影響の 面からみれば、上告人らのような高年層の行員に対しては、専ら大きな不利益のみを与える ものであって、他の諸事情を勘案しても、変更に同意しない上告人らに対しこれを法的に受 忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるとい うことはできない。したがって、本件就業規則等変更のうち賃金減額の効果を有する部分は、
上告人らにその効力を及ぼすことができないというべきである。
93
大曲市農業協同組合事件(最高裁昭和63年2月16日判決)
(事案の概要)
七農協が合併したことに伴い長期勤続者にとって合併前より不利益な退職金規程に変更 されたことについて、旧七農協から引継いだ従業員相互間の格差是正と単一の就業規則を作 成、適用すべき必要性及び合併に伴う退職金算定基礎となる給与月額の増額、右給与月額の 増額の退職時までの賞与、退職金への反映による累積額、定年の1年(男子)ないし3年(女 子)の延長およびその他の労働条件の改善等の措置に照らし、法的規範性を是認できるだけ の合理性が認められた事例。
(判決の要旨)
〈秋北バス事件を引用した上で、〉右の判断は、現在も維持すべきものであるが、右にい う当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成又は変更が、その必要性及 び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、
なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を有するもの であることをいうと解される。特に、賃金、退職金など労働者にとつて重要な権利、労働条 件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、その ような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づい た合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。
(参考)秋北バス事件(最高裁昭和43年12月25日判決)
使用者が就業規則を変更し、これまでの定年制度を改正して、主任以上の職にある者 の定年を
55歳に定めた(一般従業員については
50歳)結果、主任以上の職にあり満
55歳に至っていた従業員が解雇通知を受けたことにつき、 「新たな就業規則の作成又は 変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、
原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的
かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいつて、当該規則条項が合理的なも
のであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適
用を拒否することは許されない」との判断を示した。
94
第一小型ハイヤー事件(最高裁平成4年7月13日判決)
(事案の概要)
タクシー乗務員の歩合給の計算方法の変更に関し、使用者は A 労働組合と 3 回にわたり団 体交渉を行ったものの合意に至らなかった一方で、新労働組合 B との間で新しい計算方法に ついての労働協約を締結し、その後、使用者が歩合給の計算方法を新しい計算方法による旨 の就業規則の変更を行ったことについて、合理性がないとした原判決が破棄・差戻しされた 事例。なお、A 労働組合の組合員数は114名、B 労働組合の組合員数は約180名であっ た。
(判決の要旨)
本件就業規則の変更の内容の合理性[中略]については、新計算方法に基づき支給された 乗務員の賃金が全体として従前より減少する結果になっているのであれば、運賃改定を契 機に一方的に賃金の切下げが行われたことになるので、本件就業規則の変更の内容の合理 性は容易には認め難いが、従前より減少していなければ、それが従業員の利益をも適正に 反映しているものである限り、その合理性を肯認することができるというべきである。し たがって、本件においては、まず、新計算方法に基づき支給された賃金額とそれまで旧計算 方法に基づき支給されていた賃金額とを対応して比較し、その結果前者が後者より全体とし て減少していないかを確定することが必要である。そして、これが減少していない場合には、
それが変更後の労働強化によるものではないか、また、新計算方法における足切額の増加 と支給率の減少がこれまでの計算方法の変更の例と比較し急激かつ大幅な労働条件の低下 であって従業員に不測の損害を被らせるものではないかをも確認するべきである。
このほか、新計算方法が従業員の利益をも適正に反映しているものかどうか等との関係で、
上告会社が歩合給の計算方法として新計算方法を採用した理由は何か、上告会社と新労との
間の団体交渉の経緯等はどうか、さらに、新計算方法は、上告会社と新労との間の団体交渉
により決められたものであることから、通常は使用者と労働者の利益が調整された内容のも
のであるという推測が可能であるが、訴外組合との関係ではこのような推測が成り立たない
事情があるかどうか等をも確定する必要がある。
95
ノイズ研究所事件(東京高裁平成18年6月22日判決)
(事案の概要)
研究所が就業規則を改定し、給与制度を従来の職能給から成果主義型賃金制度とし、また 新制度導入に伴って格付を新たに見直した結果、役職を解任され、賃金が大幅に低下したこ と等について、就業規則の変更には合理性があるとされた事例。
(判決の要旨)
本件賃金制度の変更は、 [中略]旧賃金制度の下で支給されていた賃金額より賃金額が顕 著に減少することとなる可能性があり、この点において不利益性があるが、控訴人は、主力 商品の競争が激化した経営状況の中で、従業員の労働生産性を高めて競争力を強化する高度 の必要性があったのであり、新賃金制度は、控訴人にとって重要な職務により有能な人材を 投入するために、従業員に対して従事する職務の重要性の程度に応じた処遇を行うこととす るものであり、従業員に対して支給する賃金原資総額を減少させるものではなく、賃金原資 の配分の仕方をより合理的なものに改めようとするものであって、 [中略]新賃金制度は、
個々の従業員の賃金額を、当該従業員に与えられる職務の内容と当該従業員の業績、能力の 評価に基づいて決定する格付けとによって決定するものであり、どの従業員にも自己研鑽に よる職務遂行能力等の向上により昇格し、昇給することができるという平等な機会を保障 しており、かつ、人事評価制度についても最低限度必要とされる程度の合理性を肯定し得 るものであることからすれば、上記の必要性に見合ったものとして相当であり、控訴人があ らかじめ従業員に変更内容の概要を通知して周知に努め、一部の従業員の所属する労働組 合との団体交渉を通じて、労使間の合意により円滑に賃金制度の変更を行おうと努めてい たという労使の交渉の経過や、それなりの緩和措置としての意義を有する経過措置が採ら れたことなど前記認定に係る諸事情を総合考慮するならば、上記のとおり不利益性があり、
現実に採られた経過措置が2年間に限って賃金減額分の一部を補てんするにとどまるもの
であっていささか性急で柔軟性に欠ける嫌いがないとはいえない点を考慮しても、なお、上
記の不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の、高度の必要性に基づいた合理
的な内容のものであるといわざるを得ない。
ドキュメント内
1(2アップ両面)【参考資料8-②】280411 「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」報告書(別添目次あり)
(ページ 95-103)