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歳入 .1 地方税

ドキュメント内 フランスにおける国と地方の役割分担 (ページ 60-76)

4. 国と地方の役割分担

5.2 歳入 .1 地方税

  歳入についても経常部門と投資部門に大別でき、経常部門収入には地方税収入、国 からの交付金などの移転収入、諸収入が含まれ、投資部門収入には移転収入、地方債 収入、経常部門からの繰入が含まれる。

フランスの地方税制度は租税法典によって国税とともに規定されているため、わが 国のような法定外普通税のような税目を地方団体が創設することはできない。国の機 関である経済産業財政省税務総局が全ての地方税の課税標準と地方間接税の徴収に関 する事務を地方団体に代わって執り行い、同省公会計局が地方直接税の徴収事務を執 り行う。よって、地方団体は税の徴収を自ら行うことは無く、その対価として国に直

接税収の一定額を支払っている。また、地方団体が保有する現金の全額を国庫に預託 することが義務付けられている。国は、減免措置や未収の影響により地方税の徴収が 困難であっても、地方議会で議決された税収額の全額を保証しなければならない。

図表 7-28 地方税の税収(2004年度)

単位:100万ユーロ コミューン・

広域行政組

デパルトマ

レジオン 全地方団体

直接税 34,930 15,430 3,160 53,520

住居税 8,630 3,880 0 12,510

既建築固定資産税 10,660 4,650 1,160 16,470

未建築固定資産税 870 40 10 920

職業税 14,770 6,860 1,990 23,620

その他直接税 8,720 20 8,740

間接税・その他 3,620 5,040 1,620 10,280

合計 47,270 20,490 4,780 72,540

(出典)DCGL(2006a)より作成

地方税の区分については、コミューン税・デパルトマン税・レジオン税の区分、直 接税・間接税といった区分のほかに、税の賦課が法律によって義務付けられているか 否かによって区分される義務税・任意税や、他の税に付加しているか否かによって区 分される付加税・独立税と分類できる。図表 7-28をみると、地方税は主に直接税によ って賄われており、その大部分が住居税(taxe d’habitation)、既建築固定資産税(taxe sur le foncier bâti)、未建築固定資産税(taxe sur le foncier non bâti)、職業税(taxe professionnele) の4税からなる63。これらの4税は地方直接4税と呼ばれる。

住居税(taxe d’habitation)

  2004年度の住居税の税収は約125億ユーロで、このうち7割近くがコミューン及び 広域行政組織によって徴収され、残りはデパルトマンによって徴収されている。なお、

レジオンの住居税は2000年度をもって廃止された。住居税は居住用の家屋に対して課

63 地方直接4税以外の直接税として、家庭廃棄物収集税、清掃税、採鉱税、高圧線柱塔定額税、道路舗 装税、舗装税がある。間接税は譲渡税、地域計画関連税、その他の間接税に大別できる。地域計画に関 連した税として、地域建設整備税、建築密度超過税、土地利用基準超過税、自然環境保護税、イル・ド・

フランスレジオン事務所研究所・整備建設税、駐車場非設置税、公共交通税がある。その他の間接税に は、運転免許税、自動車登録税、自動車税、ボーリング場税、スキー場リフト等施設税、電気税、カジ ノ賭博収益税、ミネラルウォーター税、飲料販売許可税、狩猟許可税、滞在税、興行税、広告ポスター 税、自動車広告、屠畜場使用税がある。

税され、毎年 1 月 1 日現在の家屋の居住者(家屋の所有者であるかは問われない)が納 税義務者である。課税標準は家屋の土地台帳上の賃貸価額評価額である。評価替は、

制度上は6 年ごとの総評価替、3 年ごとの修正、毎年の物価上昇率に応じた修正が行 われることとなっている。しかし、評価替えを実施したときに高い税負担が予想され る納税者が強く反対しており、実際には評価替えはあまり実施されておらず、毎年の 物価動向などを考慮した一律の係数によって評価額を一括調整している。

既建築固定資産税(taxe sur le foncier bâti)

  既建築固定資産税はコミューン、デパルトマン、レジオンの義務税であり、その税 収は約165億ユーロである。既建築固定資産税の課税客体は建築物及びその用に供さ れる土地で、毎年1月1日現在の既建築固定資産の所有者が納税義務者である。課税 標準は土地台帳上の賃貸価額評価額から、経費等を考慮して50%を控除した額である。

土地台帳上の賃貸価額評価額と実際の賃貸価額に差がある場合には、1970年1月1日 の賃貸料を基礎として算出された額か、課税機関による評価によって定められた額が 評価額となる。評価替は住居税と同様の方法によって行われるものとされているが、

長く実施されておらず、現在では物価変動を考慮して毎年一括調整を行っている。

未建築固定資産税(taxe sur le foncier non bâti)

  未建築固定資産税はコミューン、デパルトマン、レジオンの義務税となっている。

税収は、地方直4税の中で最も少なく、約9億ユーロである。未建築固定資産税は農 地や空地等の建物の敷地の用に供されていない土地に対して課税され、毎年1月1日 現在の非建築地の所有者が納税義務者である。課税標準は土地台帳上の賃貸価額評価 額から、土地が賃貸されない場合のリスクとして一律20%を控除した額である。評価 額は土地の時価、近隣コミューンの賃貸価格、課税機関による直接評価等に基づき算 定され、評価替は住居税、既建築固定資産税と同様である。

職業税(taxe professionnele)

  職業税はコミューン(一部の広域行政組織を含む)、デパルトマン、レジオンの義務 税であり、その税収は約236億ユーロである。課税客体は事業用固定資産と支払給与 であったが、このうち支払給与については段階的に廃止されることが決定し、課税標

準からの控除額を1999 年から段階的に増やし、2003 年に支払給与部分が全廃される こととなった。支払給与部分の廃止は地方財政に与える影響が大きかったため、中央 政府は減収補填措置として、減収額と同額の交付金を創設し、各地方団体に交付する こととした。なお、2004年からはこの減収補填措置は後述する(DGF:Dotation Globale

de Fonctionnement)の中に組み込まれている。

納税義務者は給与所得者としてではなく、営業として職業活動を通常行う自然人又 は法人である。課税標準は事業用に納税者によって使用される有形固定資産の賃貸価 額の評価額である。

地方直接4税の税率

  上記の地方直接4税の税率は議会の議決を経て変更が可能である。税率の変更方法 は、同じ増減率で各税の税率を変動させる方法と、税ごとに異なった比率で増減させ る方法の2種類ある。後者の方法を採用する場合には、極端な変動を避ける観点から 租税法典による制限の範囲内で税率変更をすることができる。2003年の憲法改正以前 は地方団体に課税標準の設定権は無かったが、同年以降は法律に定める範囲で設定で きるようになった。しかし、実際には課税標準の設定権は非常に限定的にしか地方団 体に付与されていない。

図表 7-29 はコミューン・広域行政組織、デパルトマン、レジオンの 3 種類の団体

における地方直接4税の平均税率の推移を示したグラフである。この図から、コミュ ーン・広域行政組織の税率が、デパルトマン及びレジオンの税率の合計よりも高いこ とがわかる。また、レジオンが2001年に住居税を廃止したことを除けば、どの階層の 地方団体も、税率が増加傾向にあることが伺える。

1996年度と2005年度の地方直接4税の税率を比較すると、1996年度のコミューン・

広域行政組織における地方直接 4 税の税率は、住居税 13.14%、既建築固定資産税

16.62%、未建築固定資産税 39.81%、職業税 14.54%であった。2005 年度には、地方

直接4税いずれの税も平均税率が上昇し、住居税14.29%(1.15%ポイント上昇)、既建 築固定資産税 18.22%(1.60%ポイント上昇)、未建築固定資産税 43.61%(3.80%ポイン ト上昇)、職業税15.44%(1.00%ポイント上昇)となっている。

次にデパルトマンでは、1996年度の地方直接4税の税率は、住居税5.78%、既建築 固定資産税7.92%、未建築固定資産税 19.19%、職業税6.68%であった。2005 年度に

は、地方直接4税いずれの税も平均税率が上昇し、住居税6.60%(0.82%ポイント上昇)、

既建築固定資産税9.21%(1.29%ポイント上昇)、未建築固定資産税22.54%(3.35%ポイ

ント上昇)、職業税7.82%(1.14%ポイント上昇)となっている。

図表 7-29 地方直接4税の税率の推移

そしてレジオンでは、1996年度の地方直接4税の税率は、住居税1.56%、既建築固

定資産税1.90%、未建築固定資産税4.60%、職業税1.90%であった。2000年度をもっ

てレジオンの住居税が廃止されたが、それ以外の3税の税率は上昇し、2005年度には、

既建築固定資産税 2.38%(0.48%ポイント上昇)、未建築固定資産税 5.93%(1.33%ポイ

ント上昇)、職業税2.48%(0.58%ポイント上昇)となっている。

5.2.2 国交付金

  フランスの財政移転制度は、経常・投資部門、制度改革、税制改革等に応じて国支 出金が創設されていることが特徴的である。図表 7-30 にあるように、国支出金は経 常部門交付金(権限移譲に伴う経常部門交付金、法定税減免補償を除く)、投資部門交

住居税の税率の推移

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 年度

コミューン・広域行政組織 デパルトマン レジオン

既建築固定資産税の税率の推移

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 35.00

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 年度

コミューン・広域行政組織 デパルトマン レジオン

未建築固定資産税の税率の推移

0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 60.00 70.00 80.00

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 年度

コミューン・広域行政組織 デパルトマン レジオン

職業税の税率の推移

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 年度

コミューン・広域行政組織 デパルトマン レジオン

(出典)DGCL(2006a)より作成

付金(権限移譲にともなう投資部門交付金を除く)、権限移譲の財源措置、法定税減免 補償の4つに分けることができる。このうち、経常部門交付金と法定税減免措置は地 方団体の経常部門に計上され、投資部門交付金は投資部門に計上される。権限移譲の 財源措置のうち、地方分権化一般交付金(DGD:dotation générale de décentralisation)、 職業教育訓練交付金(dotation relative à la formation professionnele)、コルス地方分権化一 般交付金(dotation générale de décentralisation Corse)は経常部門に計上され、中学校施設 整備デパルトマン交付金(dotation départementale d’equipement des colléges)は投資部門 に計上される。

図表 7-30 国交付金の種類

国支出金を一般交付金か特定補助金かによって分類すると、経常部門、投資部門を 問わず国交付金の大部分を一般補助金が占め、特定補助金としての性質を持つ各省補 助金の割合が少ないことも特徴的である。

また、図表 7-30 から 2004 年から経常部門交付金のうち経常費総合交付金(DGF: Dotation Globale de Fonctionnement)の額が急増し、地方分権化一般交付金(DGD:dotation

générale de décentralisation)、法定減免補償の合計額が急減していることがわかる。こ

単位:100万ユーロ 2003

2004

2005

総額の伸び率の決定方法 1.経常部門交付金・補助金合計 20,702 38,091 38,348

経常費総合交付金(DGF) 18,812 36,826 37,095 物価上昇率(たばこを除く)

+実質GDP成長率×50 教員特別交付金(DSI) 243 188 165 経常費総合交付金と同率 地方議員交付金(dotation élu local) 46 47 49 経常費総合交付金と同率

各省補助金 734 892 902

天然資源収入の補填 0 138 138

その他 547 0 0

2.投資部門交付金・補助金合計 6,257 6,392 6,445

建設整備費総合交付金(DGE) 872 904 932 公的資本形成の伸び率と同率 農村発展交付金 0 116 120 建設整備費総合交付金と同率 TVA補償基金(FCTVA) 3,664 3,710 3,791

各省補助金 1,147 1,124 1,006

その他 574 537 597

3.権限移譲の財源措置合計 8,690 3,799 4,089

地方分権化一般交付金(DGD) 6,198 797 858 経常費総合交付金と同率 職業教育訓練交付金 1,389 1,862 2,053 経常費総合交付金と同率 中学校・高校施設整備デパルトマン交付金 841 895 921 建設整備費総合交付金と同率 コルス地方分権化一般交付金 240 245 257 経常費総合交付金と同率

4.法定税減免補償合計 22,197 11,871 12,543

合計 57,846 60,153 61,426

(出典)DGCL(2005c)及びDGCL(2006)より作成

ドキュメント内 フランスにおける国と地方の役割分担 (ページ 60-76)

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