1486. 教育講演等教育に関する業績、活動
5. 歯科麻酔学講座
プロフィール
1. 教室員と主研究テーマ
教 授 金子 譲 痛み反応を必要としない局所麻酔薬の効果判定法-局所麻酔薬の局在の光学的計 測-(A99-0500-10)
一戸 達也 全静脈麻酔に使用する薬物の抗侵害作用からみた薬物相互作用(A03-0500-2)
講 師 櫻井 学 鎮静・催眠効果に対するアデノシンの役割(A04-0500-1)
間宮 秀樹 ラジオアイソトープを用いた歯科用局所麻酔薬浸透経路の解明(A04-0500-2)
笠原 正貴 三叉神経節歯髄駆動ニューロン(痛覚特異的ニューロン群)の特性解明 助 教 松浦 信幸 全身麻酔下歯科口腔外科手術における低侵襲心機能評価法の検討
ビデオ硬性挿管用喉頭鏡を用いた経鼻気管挿管時の循環動態の変動と術後合併症に 関する検討
IT環境を利用した心肺蘇生法の技能評価システム 松木由起子 静脈内鎮静法使用薬剤の適応基準
湯村 潤子 気管挿管用チューブの物理学的特性について
大学院生 蔡 鵬飛 プロポフォールを使用した静脈内鎮静法が生体機能に及ぼす影響 小鹿恭太郎 全身麻酔下に使用する薬剤が口腔組織血流量に及ぼす影響 後藤 隆志 ラジオアイソトープを用いた歯科用局所麻酔薬の局在性 寺川 由比 星状神経節ブロックによる組織血流分布の検討
西澤 秀哉 レミフェンタニルによる口腔組織血流量の変化に対する各種薬剤の影響 黄 明裕 障害者歯科治療における全身管理
佐塚祥一郎 デクスメデトミジンが口腔組織血流量に及ぼす影響
冨田 智子 ミダゾラムとプロポフォール併用の静脈内鎮静法が生体機能に及ぼす影響 川口 潤
神戸 宏明 黒田 英孝 中村 瞬
レジデント 二宮 麻子 局所麻酔薬に添加されたアドレナリンが筋弛緩薬の効果に及ぼす影響 専 攻 生 杉平 亮介
山村 紘子 エアウェイスコープを用いた経鼻挿管の検討 武田 慶子 全身麻酔下での安全で確実な胃管挿入法の検討
2. 成果の概要
口腔顔面における組織血流分布の検討
全身麻酔下に各種薬剤を投与し、兎の下顎骨骨髄及び舌粘膜の血流量に与える影響について検討した。日本白 色種系雄性家兎を用いてイソフルランによる全身麻酔導入後、人工呼吸下に収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧、
心拍数、総頚動脈血流量、下顎骨骨髄血流量、舌粘膜血流量をポリグラフに連続記録した。維持薬はプロポフォー ルとし、循環動態の安定を待ってから、アデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP 群)または塩酸デクスメデトミジン(Dex 群)を投与した。結果は ATP 群では投与前後の比較で心拍数以外の項目は全て有意に減少し、心拍数は有意に
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増加した。Dex 群では全ての項目が有意に減少した。投与後の収縮期血圧、総頚動脈血流量、下顎骨骨髄血流量、
舌粘膜血流量について両群間に差はなく、塩酸デクスメデトミジンは口腔組織血流量に対してアデノシン三リン酸二 ナトリウムと同様な作用がある可能性が示唆された。
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 67:1245-1250, 2009
星状神経節ブロック(SGB)では、交感神経遮断により同側頭頸部と上肢の血流量が増加する。施行側の血流 量増加は反対側からの血流の再分布によるといわれているが、その他の部位については明らかにされていない。本 研究では日本白色種系雄性家兎を用いて、SGB 後の血流の再分布について検討した。1% リドカイン塩酸塩 0.2ml
(Lidocaine)または、生理食塩水 0.2ml (Saline)を用いて SGB を行った。Lidocaine では SGB 直前(Pre)
と左側総頸動脈血流量(CCBF)の最大変化時(Post)を、Saline では SGB 直前(Pre)と SGB 施行後 3 分(Post)
を観察時期とした。心拍数、収縮期圧、拡張期圧、平均動脈圧、CCBF、左側(L)と右側(R)の下顎骨骨髄血 流量(BBF)、咬筋血流量(MBF)、舌粘膜血流量(TMBF)、肝右葉血流量(LBF)、左側腎皮質血流量(RBF)、
左側大腿四頭筋血流量(QBF)を観察した。Lidocaine と Saline の Pre に有意差はなかった。Saline では Pre と Post のすべてに有意差はなかった。一方、Lidocaine では、SGB 後、CCBF、L-BBF、L-MBF、L-TMBF は 増加し、R-BBF、R-MBF、LBF、RBF、 QBF は減少した。末梢組織血流量の減少に比べて、内臓血流量の減少 はわずかだった。SGB 施行後には反対側だけでなく下肢や内臓からも血流が再分布することが示された。SGB 後 の血流の再分布には内臓よりも末梢組織の影響が大きいと考えられた。
Regional Anesthesia and Pain Medicine 34:553-556, 2009
ロクロニウムとベクロニウムを持続投与し、口腔組織血流量の変化を比較検討した。日本白色種系雄性家兎を用 いた。ロクロニウム(Group R)の投与量は 7μg /kg/min (R-7)、14μg/kg/min (R-14)、28μg /kg/min(R-28)
とし、この順で各々 20 分間持続投与した。ロクロニウムの投与中止後、体動の発現を確認し、ベクロニウム (Group V) を 1.6μg/kg/min(V-1.6)、3.2μg/kg/min(V-3.2)、6.4μg/kg/min(V-6.4)の順で各々 20 分間持続投与 した。収縮期血(SBP)、拡張期血圧(DBP)、平均動脈圧(MAP)、心拍数(HR)、総頸動脈血流量(CCBF)、
舌粘膜血流量(TMBF)、下顎骨骨髄組織酸素分圧(PbO2)、咬筋組織酸素分圧(PmO2)を観察した。HR は 両群とも投与速度依存性に減少する傾向を示した。R-7 に比べ R-28 は 6% 減少した。また V-1.6 に比べ V-6.4 は 5% 減少した。CCBF は、Group V は大きな変化を示さなかったが、Group R は投与速度依存性に増加した。
R-7 に比べ R-28 は 24%有意に増加した。TMBF は、Group R は大きな変化を示さなかったが、Group V は投 与速度依存性に減少した。V-1.6 に比べ V-6.4 は 19%有意に減少した。SBP は Group R および Group V の全て のデータに大きな変化はなかった。DBP、MAP、PbO2、PmO2 では Group R および Group V の全てのデータ に有意差はなかった。ロクロニウムとベクロニウムは、体循環に大きな影響を与えず、下顎骨骨髄血流量と咬筋血 流量を増加させないので、周術期において問題なく使用できることが示唆された。
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 68:15-20, 2010
静脈内鎮静法に使用する各種薬物のストレス軽減効果に関する研究
歯科診療時の全身的偶発症の原因は、痛みや緊張といったストレッサーによる急激な自律神経活動が多いと考え られる。静脈内鎮静法は、これらのストレッサーを軽減するのに非常に有効である。静脈内鎮静法に用いられる薬 剤のほとんどがミダゾラムかプロポフォールであるが、これらがストレス負荷時の自律神経にどのような影響を及ぼす か比較検討した論文はほとんどない。そこで両薬剤を用い、軽度鎮静下に一定のストレスを負荷し、ストレス負荷時 の自律神経活動を心拍変動の周波数解析を用いて検討した。男性健康成人ボランティアを対象とし、ミダゾラム群 とプロポフォール群に分け、ストレス負荷として 3 桁の減算の暗算負荷試験を行った。暗算負荷試験は、安静時に 1 回、ミダゾラムまたはプロポフォールによる静脈内鎮静下で 1 回、合計 2 回行われた。交感神経活動の指標として、
心拍変動の低周波成分・高周波成分の比(LF/HF)を用いた。結果は、両群において 1 回目と 2 回目の負荷試験 の回答数、正答率に差はなかった。2 回目の負荷試験後、LF/HF はプロポフォール群と比較し、ミダゾラム群で抑 制された。軽度鎮静状態下において、ミダゾラムはプロポフォールよりもストレス負荷後の交感神経活動を抑制した。
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 68:590-596, 2010
静脈内鎮静法は、患者のストレス軽減に非常に有用であるが、最も使用されているプロポフォール(PROP)と歯 科領域での静脈内鎮静法の薬剤として、近年期待されるデクスメデトミジン(DEX)がストレス負荷に対する自律神
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経の変動にどのような影響を及ぼすかを比較検討した報告は少ない。そこで、両薬剤を用いた軽度鎮静下に精神的 ストレスを負荷し、その時の自律神経変動を心拍変動(HRV)の周波数解析を用いて測定し、被験者のストレスが 軽減したのか自覚的評価と併せて比較検討した。対象は男性健康成人ボランティア 25 名とし、暗算減算負荷(MA)
によって、精神的ストレスを被験者に 2 回与えた。1 回目の MA は非鎮静下、2 回目の MA は PROP または DEX 鎮静下で行った。自覚的評価として、Faces Anxiety Scale (FAS)を使用し、加えて、PROP または DEX どちら をより好むかを鎮静後にインタビューした。各薬剤は 1 週間間隔でクロスオーバーにランダムに投与した。自律神経 活動は HRV の周波数解析を用い、0.04-0.15Hz の低周波成分(LF)、0.15-0.40Hz の高周波成分(HF)、それ ぞれの比である LF/HF を測定し、交感神経活動の指標は nuLF、LF/HF、副交感神経活動の指標は nuHFとした。
鎮静の有無にかかわらず、HR、LF/HFと nuLF は MA 負荷により両群で増加し、nuHF は両群で減少した。しか し、鎮静下での nuHF の変化率は PROP 群が DEX 群より大きかった。FAS、SpO2、MA の正答率は PROP 群 が DEX 群より低かった。ストレスの自覚的評価と被験者へのポストインタビューで PROP を DEX より好むとういう 意見が多かった点から考えると、PROP が DEX より不安患者に対する静脈内鎮静法として適していることが示唆さ れた。
Anesthesia and Analgesia 110:415-418, 2010
ラジオアイソトープを用いた歯科用局所麻酔薬浸透経路の解明
口腔組織に投与した局所麻酔薬の経時的な浸潤状態を明らかにするために放射性同位元素(以下 RI)およびイ メージングプレート使用したマクロオートラジオグラフィ(以下マクロ ARG)を使用して視覚的に観察した。浸潤面 積と、口腔組織内各部での局所麻酔薬の分布の割合から、局所麻酔薬の浸潤状態を比較・検討した。実験動物は 日本白色種系雄性兎、体重 1.7-2.1kg、8-10 週齢 24 羽を使用した。局所麻酔薬として 14C 標識 2% 塩酸リドカ イン(1/80,000 エピネフリン添加)を使用し、これらを LE 群とした。対照薬は 14C 標識 2% 塩酸リドカイン(エ ピネフリン無添加)を使用し、L 群とした。投与部位は下顎左側前歯歯肉口唇移行部粘膜とした。傍骨膜麻酔法と して 0.06ml を注入した。局所麻酔薬投与後、それぞれ経過時間 1 分群(LE-1 群)(n=6)、5 分群(LE-5 群)(n=6)、
10 分群(LE-10 群)(n=6)、の 3 群に分けて観察し、対照薬群も同様の 3 条件で観察した。(L-1 群、L-5 群、
L-10 群)(各 n=2)投与後それぞれの時間が経過したのち、チオペンタールナトリウム大量投与により屠殺し、厚さ 50ミクロンの切片を作成した。イメージングプレートと90 分間接触させ、BAS imaging system2000(富士フイルム . 日本)を用いて撮像した。撮像後、標本をスキャニングし、画像データを作成した。得られた二つの画像を重ね合 わせ、集積像の位置を決定した。浸潤面積は得られた画像の中の 14C の集積部位を選択し、画像解析ソフトを用 いてヒストグラムから面積(Pixel 数)を計測した。口腔組織内各部での局所麻酔薬の分布の割合は、a. 刺入部粘 膜下組織、b. 歯槽骨周囲骨膜近傍組織(歯牙長約 1/2)、c. 根尖相当部骨膜近傍組織、d. 根尖相当部歯槽骨骨 髄の計 4 部位(Fig.3)をサンプリング(直径 13pixel 相当円)し、得られた円内の濃度を濃度値 ×Pixel 数で求め、
a 部に対する変化率で比較した。浸潤面積は、LE 群では局所麻酔薬投与後、経過時間の増加に伴って増加してい た。このことから、投与された局所麻酔薬が、経過時間の増加により広範囲に浸潤していくことが視覚的に確認さ れた。L 群では、局所麻酔薬投与後 10 分群で集積像が得られなかった。血管収縮薬が未添加の L 群では、投与 された局所麻酔薬は投与部位の毛細血管に速やかに吸収され、組織への貯留時間が短いということが示唆された。
1/80,000 エピネフリン添加群では局所麻酔薬投与後、経過時間の増加に伴って浸潤範囲が増加していた。根尖相 当部歯槽骨骨髄では、投与後 1 分から 5 分にかけて分布の割合が増加し、10 分経過時には再び減少して、1 分 経過時と同様の分布となることが視覚的に確認できた。
Journal of Hard Tissue Biology 18:95-100, 2009
エアウェイスコープを用いた経鼻挿管の検討
喉頭鏡(以下 LS)使用下に経鼻挿管をする際、気管チューブが気管前壁に当たり、挿管困難となることがあるの に対し、エアウェイスコープ(以下 AWS)ではこれが認められない。この違いは上中咽頭境界部から声門に向かう 気管チューブと喉頭軸の角度によるものと考えられる。そこでわれわれは LS と AWS の喉頭軸に与える影響につい て観察し、AWS の有用性について検討した。20 症例を対象とし、患者入眠後、LS(LS 撮影時)および AWS(AWS 撮影時)を使用し、Cormack grade I の視野が得られたときの右側側貌をデジタルカメラで撮影し比較した。写 真分析は、基準点を眉毛基部、鼻翼基部、上中咽頭境界部(A)、喉頭蓋基部(B)、輪状甲状間膜(C)、甲状腺 切痕、オトガイ、耳珠、胸骨切痕、前腋窩ヒダとし、それぞれの距離と各点を結ぶ直線がなす角度を測定すること によって行った。点 A から喉頭軸(点 B と点 C を結ぶ線と仮定)へ引いた線と喉頭軸のなす角度では、角 ABD(喉