第 4 章 シミュレーション
4.6 歩行条件
第 2 章にて述べたようにニホンザルを含む霊長類とイヌやウマといった他の 代表的な四足歩行動物とで歩行パターンが異なる.本研究では,移動仕事率が歩 行パターンの決定因子の1つであると考え,これに着目し比較,検証を行う.比 較,検証を行うために作為的に重心の位置を前方に配置したモデルを開発した.
新たに開発したモデルは,3 章に示したモデルの身体全体の重量は等しいまま,
上半身のリンクの重量を増加,下半身にあたるリンクの重量を減少させた.また,
上半身体幹セグメントの重心位置を前方に移動した.差別化を行うため,3章ま でで説明した重心位置が後方寄りにあるモデルを「ニホンザルモデル」,新たに 重心を前方に配置したモデルを「仮想イヌモデル」と定義する.仮想イヌモデル の身体特性値をTable 4-1に示す.また,Fig. 4-3は実際のニホンザル,イヌそ れぞれの重心位置と開発したモデルの重心位置を示した図である.ニホンザル モデル,仮想イヌモデルそれぞれにて概ね重心位置が再現できていることが確 認できる.
Table 4-1 身体特性値(仮想イヌモデル) リンク長
[m] 質量[kg] 主慣性モーメント[kg・m2] 重心位置
Ixx Iyy Izz [m]
骨盤 1.19E-01 1.476 7.02E-03 6.94E-03 2.90E-03 5.76E-02 腰部 8.63E-02 1.021 2.10E-03 1.74E-03 2.48E-03 4.37E-02 頭胸部 1.90E-01 4 1.32E-02 1.32E-02 6.71E-03 1.75E-01 大腿部 1.50E-01 0.481 1.37E-03 1.61E-03 3.96E-04 6.50E-02 下腿部 1.65E-01 0.461 6.85E-04 7.01E-04 3.96E-05 6.80E-02 足部 6.00E-02 0.076 1.33E-04 1.21E-04 2.19E-05 2.50E-02 上腕部 1.65E-01 0.463 6.78E-04 7.58E-04 1.63E-05 7.32E-02 前腕部 1.55E-01 0.222 1.91E-04 1.93E-04 1.42E-05 7.50E-02 手部 3.80E-02 0.082 3.88E-05 3.37E-05 1.42E-05 2.00E-02
50
Fig. 4-3 モデルの重心位置比較[4]
ニホンザルの四足歩行に関し,前方交差型歩行,後方交差型歩行の優位性を調 べるために次の 4 通りの歩行条件を行う.なお,後方交差型歩行を行うときの 位 相 振 動 子 結 合 モ デ ル の 位 相 差 の 初 期 値 は
03 12 20 31
5 5 7 7
[ , , , ] [ , , , ]
12 12 12 12
とした.
① 前方交叉型歩行ニホンザルルモデル
② 後方交叉型歩行ニホンザルモデル
③ 前方交叉型歩行仮想イヌモデル
④ 後方交叉型歩行仮想イヌモデル
ニホンザルは平地同様上り坂においても前方交差型歩行を用いるのに対し,
下り坂を歩行する際,大半は前方交差型歩行を行うが極端に数は少ないが後方 交差型歩行を行うニホンザルが確認されている.こういった平地以外の環境の1
51
つである斜面と歩行パターンの関係を検証するために平地歩行とは別に⑤から
⑧の 4 通りのシミュレーションを行った.傾斜は下り坂,上り坂とも 5[deg]と した.この角度は歩行条件①のモデルが下り坂にて前方交差型歩行,後方交差型 歩行の両歩行パターンにて正常歩行を行うことができる最大の傾斜角度である.
⑤ 上り坂前方交差型歩行ニホンザルモデル
⑥ 上り坂後方交差型歩行ニホンザルモデル
⑦ 下り坂前方交差型歩行ニホンザルモデル
⑧ 下り坂後方交差型歩行ニホンザルモデル
52