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次電池材料の解析

ドキュメント内 ( 2 ) (ページ 62-91)

(日産アーク)○今井 英人

リチウムイオン 2 次電池の高容量化、長寿命化に向けて、正極材料の精密な構造解析が必要となっている。中性子は、X 線にくらべ て、Li や酸素といった軽元素に対しても感度が高いため、Li、酸素、遷移金属の化合物からなるリチウムイオン 2 次電池の正極材料の 解析に適している。また、同位体に対して異なる散乱振幅を持っているため、適切なラベリングにより、特定のサイトの影響を強調し たり、逆に弱めたりすることも可能である。

本講演では、高容量正極材料の一つとして期待されている Li 過剰系正極材料の基本物質である Li2MnO3について、容量増加に関連す る構造の詳細や、電池動作に伴う容量劣化に関連があると考えられているカチオンミキシングについて解析した例を紹介する。

Li 過剰系固溶体系正極材料の高容量化、高耐久化の検討を行う上で、構造の乱れと容量の関係、スピネル化を含む劣化現象と構造の 関係を理解することが重要となっている、中性子回折では、Li 同様に酸素の位置情報についても、詳細に求めることが可能であり、Li 過剰系固溶体正極のレドックス反応・劣化現象に直接的に影響のある MnO6八面体の歪に関係する酸素サイトの詳細を明らかにする事 ができると期待される。

中性子回折では、同位体元素である6Li と7Li で、散乱長が正負の値を取るため(b(7Li)=−2.22 fm,  b(6Li)=2.00 fm)、適当な比率で 混合することにより、Li の散乱能を仮想的に 0 とする事が可能となる。この場合、Li を見かけ消してしまうことが可能であり、酸素原 子の情報をより詳細に検討することが可能になると考えられる。本研究では、固溶体正極材料の母物質である Li2MnO3に対し Li の散 乱能を 0 とした(7Li,6Li)2MnO3を用い、J-PARC に設置されている茨城県構造解析装置 iMATERIA を用いて構造解析を実施した。結晶 構造解析には、背面バンクのデータを使用し、Rietveld 解析プログラム Z-Rietveld および Z-MEM を用いた。

600℃熱処理に比べて 1000℃熱処理の試料では、Mn の Li サイトへの固溶が大きくなるとともに、MnO6八面体の歪みが減少する傾 向がみられる。こうした構造の乱れが、容量増加の要因の一つになっていると考えられる。

AS 3002

〔シンポジウム講演〕

中性子を用いた工学材料の内部応力及び金属組織の研究

(原子力機構)○Stefanus Harjo・相澤 一也・川崎 卓郎

J-PARC は、複数の陽子加速器と実験施設からなる複合体研究施設であり、

世界トップクラスの 1  MW 陽子加速器から生成された、中性子、ミュオン、

K 中間子、ニュートリノ、のような様々な二次量子ビームを用いた国際多目 的利用研究施設である。物質 · 生命科学実験施設(MLF)は、パルス中性子 を生成し、物質 · 生命科学の様々な研究を行うための J-PARC での施設であ る。高強度高分解能の工学材料回折装置(匠)は、材料の強度などのエンジ ニアリング科学を行うための専用装置として、MLF で建設され利用運転を 行っている。本装置は、中性子の大きな透過能力を活かし、飛行時間型回 折法で測定し、回折(ブラッグ)プロファイルの丁寧な解析により結晶材料 内部の応力・ひずみ、構成相状態、集合組織、その他微小組織情報等のよう

な試験体の重要な構造情報を取り出す。したがって、本装置のカバーする研究は、機械部品等内の残留ひずみ分布測定、様々な温度領 域での金属材料の変形機構、集合組織研究、および材料製造過程の組織変化研究等である。図 1 に匠の装置写真およびカバーする研究 範囲を示す。講演では、(ⅰ)機器仕様、(ii)応用範囲、(iii)ユニークな試料周辺環境装置と利用可能な実験、(iv)研究例、および

(v)新規チャレンジと高度化等に関する、匠の現状を紹介する。

AS 3003

〔シンポジウム講演〕

パルス中性子を用いたイメージング研究の現状

(J-PARC)○篠原 武尚

中性子を用いたイメージング法は、中性子の特徴である高い物質透過能力と軽元素との相互作用が比較的大きいことを活かし、大型構 造物や機械の非破壊検査や水素を多く含む試料、たとえば植物や生体中の水、液体の観察手法として利用されてきた。これまでの中性 子イメージングでは、主として原子炉等の定常中性子源からの白色中性子をそのまま観察対象へ照射し、吸収等による透過率の場所毎 の違いを得てきた。しかしながら、中性子と物質との相互作用は中性子エネルギー依存性を有するため、中性子の透過率は多くの場合 中性子エネルギーに依存する。そのため、物質による吸収や散乱、さらには中性子スピン状態や位相変化の結果として生じた中性子透 過率のエネルギー依存性を詳細に解析することによって、中性子と物質との間でどのような相互作用があったかを知ることができるこ とになり、これまでの中性子イメージングが対象物の内部の形状情報を与えたのに対して、エネルギー分析型の中性子イメージング法 は、対象物内部の物理的・化学的な状態についての情報を同時に与えるものとなりうる。

エネルギー分析型中性子イメージングを実施する上で、飛行時間分析法によってエネルギーを精度良く決定することができるパルス中 性子は非常に効率が良く、J-PARC のような大型のパルス中性子実験施設の建設によってこれまでは中性子強度の観点で困難であった イメージング実験も可能となった。特に、J-PARC は短パルス・低繰返し周期のため、高エネルギー中性子から低エネルギー中性子ま でを一度に使用することができるため、高い中性子エネルギー領域に現れる原子核種に依存した中性子共鳴吸収現象や、熱・冷中性子 領域に現れる結晶構造に由来するブラックエッジ、低エネルギー領域で顕著に現れる中性子の波動性に基づく物理現象などを同時に測 定することができる。その結果、原子核種情報、温度情報、結晶組織情報、磁場情報といった観測対象が持つ物理量の空間分布を画像 として取得するとともに、それらの定量化することが可能となる。

現在、我々は J-PARC の物質生命科学実験施設に、世界で初めて本格的なエネルギー分析型中性子イメージング実験を行うための専用 ビームラインを建設し、手法開発およびユーザー利用研究を進めている。本講演では、これまでのパルス中性子を用いた中性子イメー ジング技術の開発および応用研究の現状について紹介するとともに、今後の研究の展望について述べる。

AS 3004

〔シンポジウム講演〕

水素貯蔵材料の水素吸蔵過程の in situ 観測

(産総研)○中村 優美子・榊  浩司・Hyunjeong Kim

1. はじめに

地球温暖化およびエネルギーセキュリティへの対応に向けて、水素エネルギーの利用拡大が望まれている。そのためには、水素の製 造・輸送・貯蔵それぞれのフェーズにおける技術開発が必要である。中でも貯蔵に関しては、水素を安全かつコンパクトに貯蔵できる 技術および必要な材料の開発が課題となっている。

我々のグループでは、水素を比較的低圧かつ室温付近で固体中に貯蔵することが可能な「水素貯蔵材料」の研究開発を進めている。

この材料は金属の結晶からなり、原子状の水素が結晶格子間に入り込むことにより高密度な貯蔵を実現する。この材料の開発にあたっ ては、水素と材料との反応を詳細に解析することが不可欠である。中性子は、水素原子の存在位置を詳細に解析することのできるほぼ 唯一のプローブであるため、中性子回折(散乱)は水素貯蔵材料の解析に欠かせない手法といえる。本講演では、中性子を用いた水素 貯蔵材料の構造研究の例として、水素吸蔵・放出反応中の材料の構造変化のその場観察法などを中心に紹介したい。

2. 中性子回折を用いた水素吸蔵・放出反応の解析

前述のように、金属系の貯蔵材料では、水素の吸蔵・放出反応は水素原子の金属格子への出入りと金属格子の構造変化を伴う。そこ で、水素の吸蔵量に応じてどのように構造が変化するか、そのとき水素はどの位置を優先的に占有するかなどを調べることが重要であ る。さらに,それらの構造的特性が水素吸蔵特性とどのように関連づけられるかを検討し,材料の開発や改良につなげていきたいと考 えている。

【LaNi5系合金材料の中性子回折その場観察】

1 つめの例は、室温付近での速やかな吸蔵・放出特性で知られる LaNi5系の合金材料に、段階的に水素を吸蔵・放出させながら、各 状態において中性子回折を測定した例である。得られたデータから、水素吸蔵(放出)に伴う相の変化、各相の構造(格子定数・金属 原子の位置、水素原子の位置と占有率)などが解析できる。

相変化に関してはある水素吸蔵量に達すると格子定数が 7%程度大きい水素化物相が部分的に生成し 2 相共存状態となること、その 後は水素吸蔵量の増加とともに水素化物相の分率が増加し、最終的には水素化物単相となることが示された。2 相共存状態を経るかど うか、およびその 2 相の構造の違い(対称性および格子定数の差異)は、水素化物相内における欠陥や格子ひずみの生成と材料の吸蔵 特性や耐久性との間に相関があることが知られているため、この解析結果は材料の設計や改良のための有用な情報となる。

より詳細な構造データを得るために、得られた粉末回折データの Rietveld 解析を行った。この材料では 4 つの水素占有位置があり、

水素吸蔵状態に応じて、各水素位置の占有率が独立に変化する。傾向としては、La と Ni を含む面の面内位置はほぼフルに占有される が、他の 3 つの位置は部分占有となり、とくに面間の位置は水素圧力に依存して占有が増加・減少する傾向にあることがわかった。ま た、吸蔵時と放出時とでは変化の仕方が異なることは、放出時に水素占有による金属格子への局所応力を緩和するような水素の再配置 を反映したものと考えられる。

【中性子全散乱・PDF 法を用いた局所構造解析】

2 つめの例として、中性子全散乱・二体分布関数(PDF)法を用いた局所構造解析の例を紹介する。通常の中性子回折は平均構造を 捉えるものであるが、材料によっては局所的に平均とは異なる構造をとるものがある。このような場合、中性子全散乱・二体分布関数

(PDF)法を用いると、局所的な構造を捉えることができる。

合金材料の場合、ある元素を別の元素で部分的に置換することにより、水素吸蔵圧力などの特性を制御することがよく行われる。こ の場合、元素が置換された部分とそうでない部分が混在するため、格子間水素の周りの局所構造は部分により異なることになる。多く の場合、平均構造の解析にとどまっていたため、局所構造に関する理解はこれまで進んでいなかった。近年、中性子全散乱・PDF 法 が水素貯蔵材料にも適用されるようになり、局所的な金属組成の違いによって格子間水素が平均位置から変位したり、占有の有無が変 わったりすることを捉えることが可能となりつつある。講演では、最近の解析例について紹介する。

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