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第 4 章  法的論点の整理及び分析

4.3.  修正和解案の論点・問題点

4.3.3. 権利者(特に孤児作品・米国外作品の)に対する手続保障(前記 4.2.2.3. 参照)

(1) 適切代表性

まず孤児作品については、修正和解案における以下の条項により、孤児作品の権利者と それ以外の権利者(レジストリへの登録を行った権利者=和解案にいう「登録権利者」)と の間における利益相反の問題が軽減されたといえる。

・第 6.2(b)(iii)条…未請求の作品については、レジストリの権限は独立の受託者(未請求

作品受託者)に委ねられる。これは、原和解案のもとでレジストリが未請求作品の権 利者及び登録権利者の双方を代理するという利益相反状態を解消する趣旨と解される。

・第6.3(a)(i)条…未請求資金は如何なる場合もレジストリまたは登録権利者には配分され

ず、権利者探索に用いられるか、効力発生日から10年経過後は裁判所の監督下で慈善 団体に配分される。これは、未請求資金の分配に関する登録権利者と未請求作品の権 利者との間における利益相反を解消する趣旨と解される。

しかし、新・米国政府意見書は、未請求作品受託者はレジストリからの独立性が不明で あるため、未だ懸念の払拭には至っていない旨を指摘している。

次に米国外作品については、修正和解案において「書籍」の定義が狭まり(第 1.19条)、

外国作品の多くは和解範囲外となったことから、その意味では、そもそも米国外の権利者 に関する適切代表性の問題を生じ得る範囲が狭まったといえる。

しかし、新・米国政府意見書、新・独政府意見書及び新・仏政府意見書が指摘している とおり、米国で登録されているため修正和解案の適用を受ける米国外作品が少なくないこ とから、未だ問題の払拭には至っていないといえる。

(2) クラス構成員への通知

修正和解案の通知は、補足通知(修正和解案別添N)の様式で、修正和解案第12.2 条に 定める方法(請求フォーム、オプトアウト申請、異議申立書及び第三者意見書の提出者等 への個別通知、原和解案の通知に関与した権利者団体への個別通知、並びにウェブサイト への掲載等の併用)によって行うものとされている。

修正和解案の通知も、原和解案の通知と同様、以下の二種類の通知を兼ねているようで ある(前記4.2.2.3.(2)参照)。そこで、これら通知が①②の各根拠条文に定められた要件を充 足しているか否か、検討する。

① クラスアクションの内容等の通知(根拠条文はRule 23(c)(2)(B))

② クラスアクション和解案の通知(根拠条文はRule 23(e)(1))

(i) クラスアクションの内容等の通知(上記①)の要件充足性

上記のとおり、修正和解案の個別通知は専らグーグルに連絡先情報を提供した者に対 してのみ行われるものであり、容易に特定可能な日本の権利者に対して個別通知がされ ることは想定されていない(実際にも、されていない)ようである。

そうであれば、原和解案と同様、「合理的な努力により特定可能な構成員の全員に対す る個別通知」がされたとは言い難い。

従って、日本の権利者に関する限り、原和解案の通知は Rule 23(c)(2)(B)の要件を充足 していない可能性が高いように思われる(なお、補足通知の日本語版は原和解案の日本 語版に比べて相当にわかり易くなっており、「明瞭かつ簡潔に、平易で理解しやすい用語」

による説明に近づいているが、それのみによって Rule 23(c)(2)(B)の要件が充足されるわ けではない)。

(ii) クラスアクション和解案の通知(上記②)の要件充足性

前記(i)に述べた個別通知の欠如という問題点からすれば、日本の権利者に関する限り、

修正和解案の通知は「合理的な方法」とは言い難く、従って、Rule 23(e)(2)の要件をも充 足していない可能性が高いように思われる。

なお、参考までに、以下の点を補足する。

 和解案の修正によって和解クラスから外れた権利者に対する通知は、Rule 23によって は要求されていない。但し、必要に応じて合理的な通知をなすべきとの見解もある(前

記3.2.3.3.参照)。特に本件では、本和解がこれ程の社会問題となった後、和解クラスか

ら外れた旨の網羅的な通知を関係者におこなわず、いわば「放置」することの是非は、

別途問われ得る。

また、上記の方法による修正和解案の個別通知の対象者に含まれていたり、和解管 理ウェブサイトを閲覧した者は、事実上は通知を受けたのと同様の結果になる。また、

かかる権利者にとっての情報源として、「グーグル・ブックス」のウェブサイトがある。

グーグルは、和解案の修正によって和解クラスから外れた(すなわち、本和解の適用 対象外となった)権利者が採り得る選択肢(パートナーシップ・プログラムへの参加 による配信許諾や、デジタル・コピーの削除要求等)について、ウェブサイト上で情 報提供を行うこととしている(http://books.google.com/support/partner/bin/answer.py?answ er=166297)。

 オプトアウトした権利者に対する通知は、Rule 23によっては要求されていない。但し、

上記のとおり、修正和解案第12.2条に基づき補足通知の個別送付が行われる。