3.5 実装例
3.5.1 概念の触知化
文字情報や膨大なデータ情報を見やすくするために,グラフや表などにして視覚的 にその情報をより見やすくする手法がある.また,これら以外にも普段は目に見えな い,人間の思考パターンや,対人関係などを図や表などにして視覚的に表現すること も行われている.さらに,野間らは人間の思考概念図にバネモデルを用い,力覚装置 を用いて触覚情報としてユーザが体験でき,操作する研究を行っている.紙の上では 体験できないバネモデルの力を体験することで,新しい発想が生まれるかの支援を行 っている.
このように,従来は眼に見えず,我々人間が便宜上などの理由で視覚的に表示した
ものを力覚など視覚とは違う多感覚による情報提示によって,新しい物事の捉え方が できるのはと仮定する.二次元平面に触覚情報を組み込むことで,ユーザは実際に画 面を触っているかのような操作感覚を享受できる.このように,何か物に触れること は,触れた物体に機械的な変化を発生させるだけでなく,局所的ながら多次元の情報 をユーザに提示する双方向性の高い行為と考えられる.
本研究では,この概念事例を星座について考える.プラネタリウムや天文学を博物 館において,星座や星に関する展示がいくつかある.元来,空に数え切れないほどあ る星の中から,古代の人たちが星の特徴点を見つけ出し,神話や伝説などの登場人物 におきかえて,あてはめたものである.そこには,古代の人間たちによる概念などが 含まれている.本実装では,この概念を触覚情報とし,古代人が数多くある星の数々 から,ある複数の星を選択し線で結んだのかを想像する場所を提供しようと考える.
しかし,いきなり星の絵を渡され,「○○座を作ってください」と言われても難易度 が高いなどの問題点もあるため,触覚情報によって星座線を触知化して利用者に気づ きを与えるものである.
視覚的に線を表示すれば,何ら面白みもなく絵本などで十分であるが,星座線を触 覚情報としてディスプレイに埋め込むことで,ユーザは何かに気づきそれが,何であ るかを考えることを支援するものである.
触覚情報のレイヤー
視覚情報のレイヤー 触覚情報のレイヤー
視覚情報のレイヤー
図 3.6 星座線を触覚情報として体験できるアプリケーション
星座の線に引き込まれる判定 エリア
マウスポインタが線に引き寄せられる.
星座の線に引き込まれる判定 エリア
マウスポインタが線に引き寄せられる.
図 3.7 星座線とマウスの当たり判定モデル図
本実装での初期状態において,利用者はディスプレイの中に星しか見えない.しか し,ディスプレイの上でForcerを動かすと,あらかじめ触覚情報を埋め込んでおいた 部分で,段差のような情報を享受できる.このとき,埋め込んでおいた線に Forcer
が近づくと,星座に引っ張られるような力を提示し,星座線が周りの部分に比べると くぼんだ形状の力を発生させている.つまり,ユーザはキャンバスの中にいくつもの 溝(=星座線)を見つけることができ,その溝をつなぎ合わせることで,星座を考え ていく.また,星が表示されているだけでは,星座線を見つけるのが困難な場合には,
図のように星座の絵柄を表示させることもできる.最後までわからなかった人には,
正解として,実際の星座線をディスプレイに描画するような実装を行っている.