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3.3 結果

3.3.3 格子緩和の影響

一電子計算および多電子計算において格子緩和の影響は大きい。 例えば、Ti3+におい てd-d遷移の格子緩和の影響は-0.57 eV であるが、LMCTエネルギーの場合は-2.52 eV である。Ti-Oの緩和前と緩和後の平均結合距離の変化量は0.135 ˚Aであるため、LMCT エネルギーは結合距離に対して敏感であるといえる。

3.3.4 スピン状態

ScからMnの場合、スピン禁制遷移後の励起状態におけるスピン多重度は基底状態のス ピン多重度に対して2増加している。例えば、Scにおいて、その基底配置である3d02p36 配置では一つの一重項状態だけが存在する。一方、3d12p35励起配置は一重項状態と三重 項状態が存在する。励起された電子スピンの向きが逆転したとき、つまりスピン禁制遷移 のとき、その終状態のスピン状態は三重項となり、スピン許容遷移のとき、一重項となる。

一般的にスピン多重度が大きい電子状態のほうが交換相互作用によりエネルギーは小さく なる。交換相互作用によるエネルギーの分裂の簡単な模式図を図3.8に示す。また、それ ぞれの条件におけるスピン許容遷移およびスピン禁制遷移のLMCTエネルギーを図3.9 に示す。Feの場合、基底状態のスピン多重度は6であり、スピン禁制遷移後のスピン多 重度は4になる。したがってスピン禁制遷移のLMCTエネルギーはスピン許容遷移のも のより大きくなる。各遷移金属イオンの基底状態と励起状態のスピン多重度を表3.4に示 す。図3.9に示しているCDCおよび格子緩和を考慮したスピン禁制遷移のLMCTエネ ルギーとそのエネルギー変化の傾向は実験値と良く一致している。しかし、実験的に観測 されるエネルギーはスピン許容遷移のものであるため、計算によって得られたLMCTエ ネルギーは許容遷移のものと比較する必要がある。スピン許容遷移のLMCTエネルギー においても良い一致が得られている。それぞれの条件でのLMCTエネルギーを表3.5に まとめる。

3.3 DV-Xα法によるα-Al2O33価遷移金属イオンのLMCTエネルギーダイ アグラムおよびNamozov[14]Tippins[5]によって得られた実験値。図中の黒線は α-Al2O3のバンドギャップエネルギー(8.75 eV)[15]を表している。

3.4 配置間相互作用計算に考慮する軌道数を変化させたときの、DVME法による α-Al2O33価遷移金属イオンのLMCTエネルギーダイアグラム。

3.5 配置間相互作用計算に考慮する軌道数を変化させたときの、DVME法による CDCを考慮した α-Al2O3中の3 価遷移金属イオンのLMCTエネルギーダイアグ ラム。

3.6 DVME法によるα-Al2O3中の3価遷移金属イオンのLMCTエネルギーダイ アグラムおよびNamozov[14]Tippins[5]によって得られた実験値。図中の黒線は α-Al2O3のバンドギャップエネルギー(8.75 eV)[15]を表している。

3.7 DVME 法による CDC を考慮した α-Al2O3 中の 3 価遷移金属イオンの LMCTエネルギーダイアグラムおよびNamozov[14]Tippins[5]によって得られた 実験値。図中の黒線はα-Al2O3のバンドギャップエネルギー(8.75 eV)[15]を表して いる。

3.8 3d電子と2p軌道に残った電子の間の交換相互作用によるエネルギーの変化。

3.9 DVME法によるα-Al2O3中の3価遷移金属イオンのスピン許容遷移とスピ ン禁制遷移のLMCTエネルギーダイアグラムおよび Namozov[14]Tippins[5] よって得られた実験値。図中の黒線は α-Al2O3 のバンドギャップエネルギー(8.75 eV)[15]を表している。

3.4 各遷移金属イオンにおける基底状態およびLMCT状態のスピン多重度。

Ion Sc Ti V Cr Mn Fe

Ground state 1 2 3 4 5 6

Excited state after a spin-allowed transition 1 2 3 4 5 6 Excited state after a spin-forbidden transition 3 4 5 6 7 4

3.5 DV-Xα法および DVME法による α-Al2O3 中の遷移金属イオンにおける LMCTエネルギー(eV)。表中のa,b,cはそれぞれLMCTエネルギー[14, 5]および α-Al2O3のバンドギャップ[15]

Ion Experimental

Without LR

DV-Xα DVME without CDC DVME with CDC

spin-allowed spin-forbidden spin-allowed spin-forbidden

Sc 8.23a 12.99 13.34 13.13 10.42 10.20

Ti 6.9b 11.77 13.40 13.17 8.66 8.43

V 5.75b 10.51 13.84 13.56 7.61 7.33

Cr 6.94b 11.11 15.70 14.51 9.12 7.93

Mn 4.15b 9.34 14.80 13.18 7.37 5.74

Fe 4.78b 6.03 16.59 - 7.36

-Al 8.75c 14.33 18.19 17.63 12.48 11.92

Ion Experimental

With LR

DV-Xα DVME without CDC DVME with CDC

spin-allowed spin-forbidden spin-allowed spin-forbidden

Sc 8.23 9.16 11.10 10.97 6.90 6.77

Ti 6.9 9.25 12.00 11.79 6.43 6.22

V 5.75 8.57 12.67 13.31 5.87 5.51

Cr 6.94 9.39 14.37 12.91 7.81 6.15

Mn 4.15 7.22 12.65 10.82 5.36 3.51

Fe 4.78 4.40 13.89 - 4.69

-3.4 考察

これまでの計算結果に基づいてLMCTエネルギーにおける原子番号依存性について詳 細に解析していく。

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