金型を使わない高品質なものづくりを目指し、女性や文系出身者などの製造業未経験者を 採用する方針に転換、新たなビジネスモデルでの売上げ拡大を実現
背 景
・日本の製造業の危機に直面し、新しいビジネスモデルを考案
・既成概念にとらわれない製造業未経験者(性別、文理問わず)の活用 に活路を見出すも、未経験者が活躍できる環境整備が課題
取 組
・新たな設備である、数値入力で動作制御をするNC制御マシンの導入
・採用戦略の見直し(「概念化」能力、「なんとかなる」マインド人材の採用)
・多能工化による休みやすい働きやすい企業風土作り
・社員の自主性の醸成(正解を教えない指導手法)
・海外研修によるグローバル人材の育成 成 果
・「金型レス」による売上の拡大(年率約10%)
・残業時間の減少(2015年度:24.2時間/月→2017年12月時点:
14.8時間/月)
企 業 概 要
会社設立年 2001年 資本金 95百万円
本社所在地 千代田区飯田橋4丁目10-1
事業概要 精密機器の部品製作販売/各種精密機器の開発/金属加工用金型の設計・製作 等 売上高 8,590百万円(2017年3月期)
従 業 員 の 状 況
総従業員数 35(30) 人
女性 19(15) 人
外国人 0(0) 人
チャレンジド 0(0) 人
高齢者 1(0) 人
平均勤続年数 7.3 年
男性8.7年 女性5.9 年
※( )内は正規従業員数
ダ イ バ ー シ テ ィ 経 営 推 進 の ス ト ー リ ー
▲NC制御による機械を導入により、現場において製造業未経験である女 性が活躍している
建設業製造業情報通信業運輸業・郵便業卸売業・小売業金融業・保険業教育・学校支援業 宿泊業・飲食サービス業 製造業 対 象
女性 外国人 障がい者 高齢者
キャリア・スキル・経験 限定なし その他
取 組
役員層の多様化 経営会議等への
社員参画 柔軟な働き方
の整備 評価・報酬・登用 基準の明確化 管理職の行動・
意識改革 研修やスキル取得
環境の整備 キャリア形成意識
の醸成 資金調達や人材確保 のための情報発信 中小企業
その結果、女性でかつ製造業未経験、文系の応募が続いた。その後、
2010年から新卒採用を開始し、毎年5名程度採用している。
求める人材として、「概念化」能力と「なんとかなる」マインドを兼ね 備えた人材が必要だと考えている。「概念化」とは、問題についての論点 を把握する能力であり、「なんとかなる」マインドとは、一見、やり方が わからず、不可能と思われる問題であってもあきらめずに取組み、最終的 な解決までつなげる姿勢のことである。「なんとかなる」マインドで働く ためには知識と知恵を持っていて、なおかつ徳がある必要がある。徳があ ることで困ったときに周りから助けてもらえると考えている。
そういった人材を確保するため、実際の採用プロセスでは、トランプを 使った作業や、グループディスカッション、ロールプレイを課すことで精 神的に自立しているかどうか、自分を自分で育てていけるかどうか、諦め ずに取り組めるかどうかを判断している。
中途採用に関しては、同社に不足している経験や能力を補完するために 実施している。採用後は、積極的に上司や周りの社員が、中途採用社員と コミュニケーションを取ることで、社風になじんでもらうように心がけて いる。実際に、大手メーカー出身の従業員が中途採用で勤務しているが、
社風を理解し、経験やスキルを生かして活躍している。
多能工化による休みやすい働きやすい企業風土作り
同社は多能工化を進めており、工場で使用する機械ごとにスキル習得の 管理表を作り、複数の機械でスキル習得することを目指している。同社の 給与体系は、年功序列ではなく、習得したスキル数に応じて報酬が増える 仕組みとなっており、月に一度、上長との定期面談時にスキル習得状況を 確認し、結果に応じて昇給となる。
このような賃金体系は、お金の悩みがなくなるくらい安定した生活を社 員に提供したい、という社長の思いに基づくものであり、毎月昇給の機会 を設けている。
スキル習得が報酬に結びつくため、社員は多くのスキルを習得すること を目指しており、多能工化が進む結果となっている。理系出身の社員はほ とんどいないが、コンピューターを使って設計を行うCAD、製造、検査、
HP作成、知的財産管理の広範囲にわたる業務に携わっている。
多能工化を進めることで、自分にしか出来ない仕事を減らすことができ、
残業削減と休みやすい環境づくりに貢献している。
残業削減の取組と併せて、給与のベースアップを実施することで、残業 時間が減っても給料合計は減らないような仕組みを社長発案で設けてい る。
また、長期休暇を全社的に設けており、2017年度は、ゴールデンウィー ク10日、夏休み9日、冬休み11日間の休暇を設定している。
社員の自主性の醸成(正解を教えない指導手法)
同社では、自主的に考える社員を育成することで、高品質の商品製造や、
新しいビジネスモデルの創出に繋がると考えている。
社員の自主性を高めるために、何かを教える際、やり方をあえて教えず、
方向性を指示するだけといった指導方法を採っている。答えを教えてしま うと、教える人のレベルを超えることは出来ない。やり方を教えず、自ら 考えて答えに達することで、会社全体として成長できると考えている。例 えば、NC制御の機械を操作する現場での仕事は、数字に強い必要がある が、数字が苦手だから操作できないと考えるのではなく、どうやったらで きるか考えさせるようにしている。この指導方法で、従来の製造業に少な かった、女性や文系出身者といった製造業未経験者による高品質なものづ くりに成功している。
製造業未経験であった女性社員が、独自の指導方法に基づく人材育成を 受け、主力として高品質なものづくりを担っている等、女性が活躍できる 環境が整っている。その結果、女性管理職比率も高水準となっており、主 任以上で6割、部長以上では7割を超えている。
海外研修によるグローバル人材の育成
また、グローバル人材を育成するため、3年目の若手から若手管理職を 中心に、海外研修を実施している。異なる文化、価値観に触れることで、様々 な感性が磨かれ、その結果新しい考え方が生まれるという考えのもと、同 社で扱う機械の製造元であるヨーロッパの工場へ派遣している。最先端の 工作機械業界の動向を肌で感じ、同社で使用する機械が作られた背景や理 念を知ることで、実際の業務での機械の扱い方が変わるとも考えている。
2017年には海外研修に3名参加しており、研修後には、管理職向けの 報告会を実施する。その後、全社に向けて参加者から研修での気づきの共 有を行っている。
ダイバーシティ経営による成果
「金型レス」による売上の拡大
「金型レス」という新たなビジネスモデルが、顧客ニーズである金型の 作成・管理コストの削減を実現した。板金加工(金属の板を加工する方法)
の精度は、金型を用いたプレス加工(金型に材料を挟みプレス機で強い力 を加え加工する方法)に比べて低いと考えられているため、「金型レス」
を打ち出した当初は、金型で加工する精度と同等の精度の加工を板金加工 で実現するというアイディアが、顧客から受け入れられなかった。そのた め、無料の試作品を作り、地道な営業努力を行った。板金加工でも、±
0.01mmの加工精度を実現出来る(高精度・安定供給)ことは、同社の 最新鋭のマシンと製造業未経験者である多様な社員による徹底したデータ 収集と管理・分析・活用の結果であることが理解され、受注増大に繋がっ ていった。
さらに、同社のブランド力、高付加価値が認められたことで、「金型レス」
だけでなく「切削レス」として、切削加工でしか製作できない高精度な部 品を扱うメーカーの市場に参入することが可能となった。今では、大手重 工企業等から加工依頼を受注するに至っている。
その結果、年率約10%の売上の拡大を達成している。このことは、多 様な人材が集まり、高い技術力による高品質なものづくりを成し遂げた結 果である。
残業時間の減少(2015年度:25.2時間→2017年12月時点:14.8 時間)
多能工化や人員の増加に伴い、残業時間削減にも成功している。創業当 時は、深夜まで働くようなことも珍しくなかったが、近年は減少傾向にあ り、2015年度の残業時間は月平均25.2時間だったものが、2016年度 は18.1時間、2017年12月現在は、14.8時間となっている。
ダイバーシティ経営の今後の展望
社内ノウハウの外販
経営理念の下、多様な社員がアイディアを持ち寄り、新たな構想を打ち 立て、進めていく。現在進行中のアイディアとして、同社ノウハウの外販 が挙げられる。
これは、データベースの単なる社内利用に留まらず、「これいくら(板 金部品見積ソフトウェア)」の開発販売や、知的財産戦略を踏まえて、ノ ウハウをブラックボックス化し、技術をフランチャイズ化するものである。
フランチャイズ化した技術を、国内外問わず販売し、事業拡大を図る考え である。現在進行中の新たなビジネスモデルであり、かつコンサルティン グについても並行して進めている段階である。
海外人材のさらなる拡大
現在、子会社「なんとかなる」にシンガポール人を採用し、現地での販 売会社担当としており、現地特有の顧客事情を踏まえた営業戦略展開の足 掛りとなっている。今後は、将来的なノウハウの外販を見据え、海外人材 をさらに採用したいと考えている。
▲ 海外研修として社員をヨーロッパへ派遣し、同社が使用する機械が作ら れた工場の視察を行っている