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株価反応

ドキュメント内 中国株式市場における増資の実証分析 (ページ 57-61)

第 2 章 中国における第三者割当増資の実証分析

4. データと株価反応

4.2 株価反応

本研究では、第三者割当増資のアナウンスメントに対する企業の株価反応をイベント・ス タディの手法を用いて実証する。つまり、アナウンスメント日(イベント日)前後で有意な 超過収益率が生じているか否か、実証分析を行う。なお、アナウンスメント日は、各証券取 引所で適時開示情報が公表された日とする。

まず、サンプル企業の株価データを用いて、以下のマーケットモデルの推定を行う。ここ で、推定期間は、イベント日の 150 取引日前から 11 取引日前までの 140 日間とし、RMt は t 期における日次市場収益率(上海総合指数、深セン成分指数、そして新興企業ボード指数の 日次収益率)、Ritは t 期における第 i 銘柄の日次収益率、そしてutiは誤差項を示している。

𝑅𝑡𝑖 = 𝛼𝑖+ 𝛽𝑖𝑅𝑡𝑀+ 𝑢𝑡𝑖

次に、推定されたパラメータを用いて、各銘柄における日次超過収益率:ARitを求める。

また、イベント期間((t1, t2))における日次累積超過収益率:CARi(t1, t2)も下式のように求 める。

𝐴𝑅𝑡𝑖 = 𝑅𝑡𝑖− 𝛼̂𝑖− 𝛽̂𝑖𝑅𝑡𝑀

𝐶𝐴𝑅𝑖(𝑡1, 𝑡2) = ∑ 𝐴𝑅𝑡𝑖

𝑡2

𝑡=𝑡1

株価反応を検証するにあたっては、以下で求められるような平均超過収益率:AR̅̅̅̅̅tと平均 累積超過収益率:CAR̅̅̅̅̅̅(t1, t2)の有意性をt検定によって実証する(N はサンプル数を示す)。

𝐴𝑅̅̅̅̅̅ =𝑡 1

𝑁∑ 𝐴𝑅𝑡𝑖

𝑁

𝑖=1

𝐶𝐴𝑅̅̅̅̅̅̅(𝑡1, 𝑡2) = 1

𝑁∑ 𝐶𝐴𝑅𝑖(𝑡1, 𝑡2)

𝑁

𝑖=1

イベント・スタディの結果を市場別に示すと、第 21 表のようになる。ここで、平均累積 超過収益率(CAR̅̅̅̅̅̅(−10, t − i) ))は、イベント日(t)の 10 日前からt − i日までの平均超過 収益率(AR̅̅̅̅̅t)を累積している。 平均超過収益率は、いずれの市場においても公表日(t)

に 1%、ないし 5%の水準で有意に正の値となっている。これは、中国株式市場で第三者割 当増資が公表されると、その日に株価が上昇することを示している。

さ ら に 、 ア ナ ウ ン ス メ ン ト 日 の 10 日 前 か ら 2 日 前 ま で 平 均 累 積 超 過 収 益 率 : CAR̅̅̅̅̅̅(−10, t − 2)を見ると、上海証券取引所メインボードに上場する企業では 2.676%であり、

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1%水準で有意になっている。一方、深セン証券取引所メインボードと新興企業ボードに上 場する企業の平均累積超過収益率は正であるが、有意ではない。このことは、上海証券取引 所メインボードにおいて、第三者割当増資に関する情報が事前に漏れていた可能性を示唆 している。また、アナウンスメント後の平均累積超過収益率は、いずれの市場においてもプ ラスの反応を示している。つまり、第三者割当増資の公表後も株価が継続的に上昇している ことがわかる。

第 21 表 平均超過収益率(AR̅̅̅̅)と平均累積超過収益率(CAR̅̅̅̅̅̅(−10, t − i)) 上海証券取引所メインボード

t − i AR̅̅̅̅ t値の絶対値 CAR̅̅̅̅̅̅(−10, t − i) t値の絶対値

t-10 0.414 1.208 0.339 1.207

t-9 0.136 0.181 0.447 1.139

t-8 0.732 0.772 1.038 2.108**

t-7 -0.252 0.679 0.834 1.371

t-6 0.573 1.392 1.276 1.723*

t-5 0.580 1.192 1.654 2.073**

t-4 0.754 1.460 2.117 2.537**

t-3 0.603 1.169 2.458 2.833***

t-2 0.403 0.925 2.676 2.866***

t-1 0.361 0.758 2.846 2.865***

t 1.351 2.017** 4.197 3.895***

t+1 1.764 3.096*** 5.961 4.357***

t+2 -0.259 0.561 5.705 3.891***

t+3 0.405 0.884 6.101 3.796***

t+4 -0.579 0.873 5.522 3.104***

t+5 -0.243 0.603 5.279 2.834***

t+6 -0.261 0.644 5.022 2.568**

t+7 -0.324 1.076 4.698 2.367**

t+8 0.297 0.772 4.988 2.485**

t+9 -0.065 0.181 4.926 2.431**

t+10 -0.736 2.15** 4.314 2.143**

サンプル数 87

深セン証券取引所メインボード

t − i AR̅̅̅̅ t値の絶対値 CAR̅̅̅̅̅̅(−10, t − i) t値の絶対値

t-10 0.566 0.924 0.339 0.926

t-9 0.155 0.256 0.443 0.880

56

t-8 -0.401 1.042 0.189 0.349

t-7 -0.511 0.766 -0.135 0.167

t-6 1.583 1.819* 0.762 0.699

t-5 1.020 0.964 1.340 1.012

t-4 0.892 0.955 1.786 1.324

t-3 0.198 0.257 1.879 1.323

t-2 0.077 0.126 1.907 1.277

t-1 2.395 2.326** 2.705 1.832*

t 2.982 2.811*** 5.687 3.630***

t+1 2.277 2.533** 7.964 4.426***

t+2 1.525 1.678* 9.438 4.474***

t+3 -1.019 2.312** 8.420 4.123***

t+4 -0.758 1.448 7.662 3.476***

t+5 -0.511 1.067 7.151 3.300***

t+6 0.212 0.390 7.362 3.183***

t+7 -0.094 0.170 7.269 3.016***

t+8 0.034 0.079 7.302 2.859***

t+9 0.501 0.977 7.770 3.036***

t+10 0.591 0.839 8.341 2.972***

サンプル数 35

新興企業ボード

t − i AR̅̅̅̅ t値の絶対値 CAR̅̅̅̅̅̅(−10, t − i) t値の絶対値

t-10 0.188 0.456 0.183 0.456

t-9 0.005 0.013 0.188 0.331

t-8 -0.730 0.903 -0.524 0.546

t-7 1.361 2.464** 0.730 0.609

t-6 -0.251 0.605 0.499 0.406

t-5 -0.493 1.244 0.057 0.045

t-4 0.905 2.228** 0.891 0.664

t-3 0.415 0.854 1.263 0.930

t-2 0.256 0.485 1.485 1.016

t-1 1.006 2.016* 2.306 1.584

t 1.129 2.037** 3.435 2.275**

t+1 -0.533 1.122 2.902 1.879*

t+2 0.267 0.674 3.169 1.965*

t+3 0.027 0.067 3.196 1.994*

57

t+4 0.551 1.121 3.747 2.133**

t+5 0.325 0.736 4.072 2.228**

t+6 0.574 1.241 4.631 2.454**

t+7 -0.355 1.009 4.276 2.288**

t+8 -0.327 0.651 3.966 2.149**

t+9 0.797 1.649 4.741 2.353**

t+10 -0.417 0.903 4.357 2.280**

サンプル数 38

(注)***は 1%水準、**は 5%水準、そして*は 10%水準で有意であることを示している。AR̅̅̅̅は平 均超過収益率、CAR̅̅̅̅̅̅(−10, t − i)は公表 10 日前からt − i日までの累積超過収益率の平均を示して いる。

また、平均累積超過収益率についてイベント期間を細かく区切って観察すると、第 22 表 のようになる。アナウンスメント日前後 2 日間の平均累積超過収益率:CAR̅̅̅̅̅̅(−1,0)は、上海 証券取引所メインボードに上場する企業で 1.712%であり、5%水準で有意になっている。

また、深セン証券取引所メインボードに上場する企業では 5.377%であり、1%水準で有意 になっている。そして、新興企業ボードに上場する企業では 2.135%であり、5%水準で有 意になっている。

第 22 表 平均累積超過収益率(CAR̅̅̅̅̅̅(t1, t2)) 上海証券取引所メイン

ボードに上場する企業

深セン証券取引所メイ ンボードに上場する企

新興企業ボードに 上場する企業

(t1, t2) CAR̅̅̅̅̅̅ t値 CAR̅̅̅̅̅̅ t値 CAR̅̅̅̅̅̅ t値

(−10, 2) 2.676 2.866*** 1.907 1.277 1.485 1.016

(−1, 0) 1.712 2.227** 5.377 3.536*** 2.135 2.648**

(−10, 10) 4.314 2.143** 8.341 2.972*** 4.357 2.280**

サンプル数 87 35 38

(注)単位は%で、***は 1%水準、**は 5%水準、そして*は 10%水準で有意であることを示して いる。 CAR̅̅̅̅̅̅は、期間:(t1, t2)の平均累積超過収益率を示している。

米国の第三者割当増資を実証した Wruck(1989)では、公表時の平均超過収益率:AR̅̅̅̅が 1.89%、CAR̅̅̅̅̅̅(−3,0)は 4.41%で有意な正の値になっている。また、Hertzel and Smith(1993)

は、CAR̅̅̅̅̅̅(−3,0)が 4.2%と有意な正の株価反応を実証している。さらに、日本においては、

Kato and Schallheim(1993)が4.98%のCAR̅̅̅̅̅̅(0,1)、福田(2009)が4.02%のCAR̅̅̅̅̅̅(−1,0) と、いずれも有意な正の値を報告している。これら米国や日本の実証結果と同様、中国にお

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いても第三者割当増資に関して、正のアナウンスメント効果が確認できる。

次に、各証券取引所別に株価反応をみると、第 4 図のようになる。これは、アナウンスメ ント日前後 20 日の平均累積超過収益率:CAR̅̅̅̅̅̅(−10,10)の推移を示したものである。第 21 表の推定結果を加味すると、深セン証券取引所メインボードに上場する企業の平均累積超 過収益率は、8.341%と最も高い水準を示している。これに対し、新興企業ボードに上場す る企業の平均累積超過収益率は、低い水準で推移している。深セン証券取引所メインボード は、上海証券取引所メインボードと比べて情報開示において不透明であり、大株主、関連会 社、そして機関投資家がどのような価格で何枚売買しているか等、公表されていない。した がって、第三者割当増資実施の情報は、これら投資家の保有株数が増加したことを示す貴重 な情報となり、株価の反応が大きくなったと考えられる。

第 4 図 証券取引所別の平均累積超過収益率(CAR̅̅̅̅̅̅(−10,10))

5. アナウンスメント効果の実証分析

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