食育基本法、そして食育推進基本計画の策定を境に急速に全国的普及を見せている食育 推進活動。ここ栃木県においても、様々な学校、関係団体等によって食育活動が行なわれ ている。国としての全国的な食育活動を認識するだけではなく、直接見聞きし、感じ、実 践する事が重要であり、それには地域による食育活動への積極的なアピールと住民の参加 が求められる。栃木県では現在どのような食育活動が実施されており、これからどのよう な食育活動の一層の充実を図るべきなのだろうか。
第1節 栃木県の食育体制
(1)栃木県食育推進計画の概要
542006
年5
月30
日、栃木県食育推進本部が設置された。「都道府県・政令指定都市の食育 に関する要綱・計画等の策定状況」55において、2006 年度に策定を予定としている「栃木 県食育推進計画」は、栃木県食育推進本部懇談会、またはパブリックコメント(県民意見の 募集)の開催、実施によって計画決定を目指している。『栃木県食育推進計画(案)』の中で施 策体系として掲げられているのが、①食を大切にする心の醸成、②楽しく規則正しい食事 習慣の形成、③栃木の多彩な食を活かした「日本型食生活」の推進、④食の安全・安心に 対する理解促進、⑤県民が主役の食育推進運動の展開、の5つの項目である。食育推進基 本計画を基盤とした、各項目の現状と課題に加え、栃木県独自の主な施策を掲げている。この計画において重点プロジェクトとして立ち上がっているのが「しっかり食べて元気 なとちぎっ子」運動である。これは、①毎日きちんと朝ごはん、②みんなで楽しく「いた だきます」、③野菜たっぷり塩味ちょっぴり、④牛乳ごくごくもう一杯!、の
4
つの提案を 重点に推進していくとされている。また、この他にも「食と農の理解促進の推進方策」「とちぎ健康21プラン」「とちぎ食 品安全確保指針」「食に関する指導の手引き」等が策定されたものとして発表されている。
それに加えて、2006年
10
月1
日より施行となったのが、「とちぎ食の安全・安心・信頼 性の確保に関する条例」である。これは、とちぎの食の安全・安心・信頼性の確保に関し て、県及び事業者の責務や県民の役割を明らかにし、県民の健康の保護に資するため制定 された条例である。これら計画、条例等の策定によって、栃木県内の食育推進活動は大きく動き出している。
54 栃木県庁農政課「栃木県食育推進計画(案)のパブリックコメントの実施について」『栃木県食育推進計画 (案)』http://www.pref.tochigi.jp/nousei/keikaku/plan/publicsyoku.html
55 共生社会政策統括官食育推進HP「都道府県・政令指定都市の食育に関する要綱・計画等の策定状況」
http://www8.cao.go.jp/syokuiku/chihou/chihou_jyoho2.html
(2)栃木県食育推進計画の主な指標
下記の表は、栃木県食育推進計画の中で、
2005
年度の栃木県内の食に関する現状と2010
年度までの目標値として出されている指標を参照し、作成したものである。このような現状を認識し、そして目標値に達するために栃木県内で食育推進活動を推進 している学校、団体、関係者、そして実施されている具体的な活動内容を次節にて紹介し ていく。
(図表2−5)栃木県内の主な指標
資料:栃木県庁農政課「栃木県食育推進計画(案)のパブリックコメントの実施について」
『栃木県食育推進計画(案)』から作成。
http://www.pref.tochigi.jp/nousei/keikaku/plan/publicsyoku.html 食育に関する項目 2005年度 2010年度 教育ファームに取り組む市町村の割合
56.7% 80.0%
市民農園総区画数
2,937
区画5,000
区画「食に関する指導」の年間指導計画を
作成した学校の割合(小・中)
34.3% 100%
「食育だより」を発行している学校
のある市町数
全市町
農村の食文化等を伝承する人材の登録数
50
人 とちぎ健康料理の選定・普及数86
メニュー100
メニュー30
歳代男性の朝食欠食率33.8% 15%以下
おやこの料理教室開催市町数27
全市町「食事バランスガイド」等を参考に食生活 を送っている県民の割合
60%以上
メタボリックシンドロームを知っている 県民の割合
80%以上
児童の肥満の割合
3.6% 2.7%以下
20〜60
歳代男性の肥満者の割合29.5% 15%以下
40〜60
歳女性の肥満者の割合32.1% 20%以下
とちぎ健康21協力店数
161
店舗400
店舗 食品の安全性に不安を感じる人の割合90% 60%
意見交換会等の参加者数
642
人5,000
人 学校給食における地域農産物の活用状況30%
とちぎの地産地消推進店
350
店舗 市町村等の地産地消推進方針の策定4
ヶ所27
ヶ所第
2
節 栃木県内の食育活動の現状と取組(1)栃木県内の食育推進ネットワーク
全国各都道府県で実施されている食育推進活動、しかし都道府県が全て個別に活動を行 なっているわけではなく、各地方ごとにつながりを持ちながら推進されている。栃木県も 農林水産省関東農政局の区分で、食育活動を実施する都県民を支援するために
2003
年12
月に立ち上げられた「関東地域食育推進ネットワーク」に属している。このネットワーク は2006
年3
月末現在907
名の参加者により成り立っており56、栃木県においても、栃木県 民の食育活動を実施している団体や個人との情報交換や支援をするため、同月、関東農政 局栃木農政事務所消費生活課によって「食育ネットとちぎ」が発足した。現在65
団体が参 加しており、ネットの拡大と栃木県内における更なる食育が取り組まれるよう努めている57。そして、この栃木農政事務所が核となり栃木県内の様々な食育活動の推進を促している。
具体的な内容としては、食育の日である毎月
19
日にはメールマガジン「食育通信とちぎ」を発行し毎月のイベントや食育に関する情報の提供、幼稚園児から大人まで幅広い年齢層 を対象にした「出前講座」の開催、消費者の生活習慣の見直しや食の安全等についての理 解促進を図るための「食育セミナー」「食の安全・安心セミナー」の開催、消費者の食育を サポートするための「マロニエ食育塾」の実施、生産者と消費者の交流を図り農の理解を 促進させるための「現地交流会」の開催など、積極的な推進活動が展開されている。
また県では、栃木県農務部農政課によって、2006年度が食育推進計画の初年度にあたる ことから、2006年
10
月1
日〜10月30
日の1ヶ月間、県民への食育の浸透と理解促進を 図るため重点的に食育活動を実施する「とちぎ食育推進月間」を設定され「うつのみや食 育フェア―宮っこ食べっこ元気っこ―」58等の活発的なイベント等が実施された。この他に も農務部は2006
年度は「とちぎ 食 と 農 躍進プラン」に基づいた農業施策の総合調 整や食育・地産地消の推進等を重点的に実施するとしている59。この栃木県において中心となって活動の起点を発信している栃木農政事務所消費生活課 吉川文明氏と栃木農務部農政課食育・地産地消担当岡部敦子氏に
2006
年9
月26
日に栃木 県内の食育の現状について同じ質問によるインタビューを行った。まず、栃木県内の食育活動の現状として、県は各団体や個人で実施されているものなの で把握さえておらず連携もあまり取れてない現状があるとし、農政事務所は食育ネットと ちぎに加盟している団体等の活動などについては活発化してきている、と述べており、食
56 農林水産省関東農政局「関東地域食育推進ネットワーク」
http://www.kanto.maff.go.jp/shokuiku/network/kanto.htm
57 関東農政局栃木農政事務所「食育ネットとちぎ」
http://www.tochigi.info.maff.go.jp/03syokuiku/network/network.htm
58 後述。
59 栃木県農務部農政課「平成18年度農務部各課室の事業執行方針と主要事業」
http://www.pref.tochigi.jp/nousei/keikaku/jigyou/index.html
育に対する県・市の予算について県は非公開であり把握しきれていないとの回答であり、
農政事務所は事務所への国や県からの予算は一切無いとの事であった。また、栃木県内の 食育のターゲット層について、県は子供を重視しており、活動の全てはこれから始動する と述べ、農政事務所は大人への食育も重要ではあるが、企業や団体が取り組みやすいのが 給食や地産地消の分野であるため子供重視となっていると述べている。しかし、実際は
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歳以降の年代への食育も活発化させたいと食育の幅広い年齢層への浸透も狙いたいという 願望もある事とも述べていた。そして相互の連携状況についての質問に対しては、県、農 政事務所、「食育ネットとちぎ」が年に2
回の情報交換会の開催によって連携をとっている と回答した。団体との連携に関しては、農政事務所が実施例報告等を受けていると述べて いた。このインタビューにより、県では、全ての取組がこれから本格始動していくため、情報 として提供出来るものはないという事で、まだ深く食育に踏み込んでいない印象、また農 政事務所では、食育バランスガイドを中心とした普及活動、「マロニエ食育塾」の開催など によって地域住民の食育への関心の向上を図る活動が活発的である印象を受けた。そのた め、まだ栃木県内全体において統一された食育推進ではなく、これからより深い連携を図 り、普及、実施していくといった状況である事が感じられた。
(2)栃木県内の食育団体・学校・企業の活動事例
それでは、実際に栃木県民はどのような食育活動を実施しているのであろうか。「とちぎ 食育推進月間」の一環として、
2006
年10
月1
日に宇都宮市にあるマロニエプラザ60にて実 施された「第1
回うつのみや食育フェア―宮っこ食べっこ元気っこ―」に筆者も参加した ので、このフェアに出展していた栃木県内の約70
団体の中から出展ブースでのPRやイン タビューを通して活発に食育を実施している団体を中心に紹介していく。当日の食育フェ アは出展ブースの他にも様々なプラグラムが用意されており、大変充実した構成となって いた(図表2−6)。まず、学校からの参加団体である「清原中学校」は、2004年度学校給食優良学校として 文部科学大臣より表彰を受けており、地産地消の推進モデル校となっている。具体的な活 動内容は、なすやりんごなどの収穫作業や給食のメニューコンテストの開催、ランチルー ムでの郷土食・行事食など考えられた給食、宮っ子チャレンジ農業体験61等がある。また、
消費者団体では「宇都宮市消費者友の会」が総勢
200
名程の会員で活動しており、「宮っ子 食育カルタ」という栃木県の特産品などで食育につながる言葉を用いて作られたカルタを60 栃木県立宇都宮産業展示館。県内の産業界を支援、県産品についての理解促進を図るイベント等が開催 されている。((財)とちぎ県産品振興協会「マロニエプラザ」http://www.pto.co.jp/maronie/)
61 市立中学校2年生全員が1週間にわたって、地域の多くの人々触れ合いながら勤労体験やボランティア 活動等の社会体験活動を行なう「宮っ子チャレンジウィーク」の体験活動の一環。(宇都宮市公式HP「指 導支援」http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kyoiku/gakkokyoiku/gakkokyoiku_13_sidosien.htm#00)