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東洋医学と西洋医学の両観点から見た 薬膳の効能効果の検討

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写真 5  月経痛の薬膳料理 写真 6 便秘の薬膳料理

5.  東洋医学と西洋医学の両観点から見た 薬膳の効能効果の検討

 日本の医学は明治時代に入ってから、オ ランダから取り入れられた西洋医学により 近代的な医療へと発展してきた。西洋医学 の治療法は、検査により病気の原因を探り、

その原因を取り除いて病気を治療しようと するものである。これに対して、東洋医学 では原因を取り除くことよりも、人間の体 にもともと備わっている恒常性・バランス や自然治癒力・免疫力を重視し、その回復 を図る事(体質改善)により病気を治そう とするものである22)〜 26)

 近年、西洋医学の手法を駆使しても原因 がつかめない肩こり、頭痛、腰痛さらには 女性特有の不定愁訴と呼ばれる慢性疾患が 増えてきているといわれている。

 そうした場合、原因究明のための検査は 近代医療の方法(CT スキャン、MRI、超 音波診断装置等)を使用しても、治療は漢 方をはじめとする東洋医学を利用する、い わゆる東洋医学と西洋医学の総合診療を実 施する医療機関が増えてきている22)〜 26)。  漢方薬は数種類の生薬を組み合わせた医 薬品であり、患者の体質、症状、病気の進行 状況を把握した上で「証」に基づき投与され るもので、西洋医学で用いられるいわゆる 医薬品(化学合成物質)に比べ、即効性と いう面では劣るものの、副作用、誤用、薬 害等の面で安全であるとされている22)〜 26)。  ただ、残念ながら現在のところまだ漢方 薬の効能についての科学的根拠(EBM)は、

すべて解明されているわけではない。薬膳 に関しても、その解明はほとんどなされて ない22)〜 26)

 今回検討を行った薬膳に対する RG によ

Positive  Effe cts of  He rbal Dishe s (Ⅳ)  Radar Chart Analy sis of  Kampo Pre scriptions,

FOODS & FOOD INGREDIENTS JOURNAL OF JAPAN Vol.212,No.4(2007)

10) 辰巳洋:中医薬膳学、東洋学術出版社

(2009 年)

11) 伊藤美千穂、北山隆、原島広至:生薬単

(ショウヤクタン)〜語源から覚える植物 学・生物学名単語集〜、NTS(2007 年)

12) 松村邦彦:食べて強くなる献立とおか ず、株式会社主婦の友社(2004 年)

13) 石原結實:石原結實の病気にならない簡 単レシピ、社団法人家の光協会(2010 年)

14) 魯紅梅:かんたん・おいしい薬膳レシ ピ、河出書房新社(2005 年)

15) 千頭一生:家庭で楽しむ薬膳料理、ピ ラミッドムック(1988 年)

16) 辰巳洋:薬膳の基本、緑書房(2008 年)

17) 海東常敏:入門漢方薬ノート、源草社

(2005 年)

18) 木下繁太郎:健康保険が使える漢方薬 処方と使い方(1990 年)

19) ひこばえ薬局ホームページ www.hikobae .com/-20) 食品成分表改訂最新版、女子栄養大学

出版部(2011 年)

21) 杉田浩一、堤忠一、森雅央:新編日本 食品事典、医歯薬出版株式会社(1992年)

22) 岡本信弘、中尾是正:冷え症、肩こり、

更年期障害を改善する献立と料理 120 品、株式会社グラフ社(2000 年)

23) 大塚敬節、山田光胤:漢方療法の本、

読売新聞社(1970 年)

24) 薬局特集漢方製剤の骨組みを探る:

Vol. 58,No.10,南山堂(2007 年)

25) 今西二郎編:別冊・医学のあゆみ 現 代西洋医学からみた東洋医学、医歯薬 出版株式会社(2003 年)

26) 月刊薬事特集漢方薬の正しい知識と臨 床での実践:Vol. 53,No.11,(株)じほ う(2011 年)

引用文献

1) 野口衛:中国薬膳の処方解析―料理素 材、配合生薬と効能の関連性について

―,薬のサイエンス、第 4,5 号(2000)

2) 帯津良一、上野圭一:がんを治す食事 療法レシピ、法研(2004)

3) 徳井教孝、三成由美、張再良、郭忻:

薬膳と中医学、建帛社(2006)

4) 薬膳入門ホームページ

  http://www.y akuze nro.jp/ny umon/a1_pre .htm 5) 佐藤弘、山本亮:漢方の基礎知識、日

本漢方生薬製剤協会(2000)

6) 野口衛、西嶋久美子、大野勝子:薬草料 理の効能解析― 渡邊武氏の方法を応用 する―Analy sis of  the  Positive  Effe cts of  He rbal Dishe s ―Apply ing  the  me thods of  Dr.Take shi Watanabe , FOODS &

FOOD INGREDIENTS JOURNAL OF JAPAN Vol.209, No.7 (2004) 

7) 野口衛、西嶋久美子、大野勝子:薬草料 理の効能解析(Ⅱ)―レーダーグラフ法の 適用範囲とその理論的背景―Analy sis of  the  Positive  Ef f e cts of  He rbal Dishe s (Ⅱ) 

The ore tical Backg round and Application Limit of  the  Radar Chart Me thod,FOODS

& FOOD INGREDIENTS JOURNAL OF JAPAN Vol.210, No.6 (2005) 

8) 野口衛、西嶋久美子、大野勝子:薬草料 理の効能解析(Ⅲ)同一疾患に投与される 漢方処方と薬膳のレーダーグラフを比較す る Analy sis of  Positive  Effe cts of  He rbal Dishe s― Comparison of  the  Rade rCharts of  He rbal Dishe s and Kampo Discriptions f or the  Same  Dise ase s,FOODS &

FOOD INGREDIENTS JOURNAL OF JAPAN Vol.211, No.6 (2006) 

9) 野口衛、西嶋久美子、大野勝子:薬草 料理の効能解析(Ⅳ)漢方処方をレーダー グラフを用いて再 構 築する Analy sis of 

61  所長近藤誠三様、副所長吉田雅昭様、並 びに工場長 鈴木重通様に深謝致します。

 併せて、研究にご協力いただきました皆 様にも厚く御礼を申し上げます。

謝 辞

 薬膳の主成分分析にご助言いただいた小 太郎漢方製薬株式会社美川事業所 研究所

読みを深めるための学生指導

―読書会方式の効果について―

梶谷 恵子

 片平 朋世

Deeper Understanding of Students Guidance

― How to Interpret Throughout Practicing with each other ― Keiko K

ajitani

and Tomoyo K

atahira

 This study was designed to introduce the teaching method called "yomiai (a group of people mutually reading a book aloud)", a kind of reading club to improve university students’ reading ability and to verify its effect. "Yomiai" was conducted for the third year students in their first semester. They were in groups of three each and read a pre-selected children’s literature, spent a lot of time discussing the essence of the story, formed their opinions, and made a presentation later. "Yomiai" was conducted twice.

Then, 23 students in their third and fourth years were interviewed about their previous reading experience and "yomiai".

As a result, the following points were identified. Although the students in either years did not have much reading experience, the third year students assumed the habit of reading a story repeatedly through "yomiai". The fourth year students acquired the habit of reading a story many times and understand it, and then learned a basic skill to tell the story briefly and easily through "yomiai", and they realize that this experience has become the basis for writing a graduation thesis. I believe this approach will contribute to the literacy improvement for students in university education.

Key words : student guidance; ability to read and comprehend; read each other’s

キーワード:読解力、読み合い、学生指導

※ 本学人間生活学部児童学科

Ⅰ.はじめに

 文化学研究室では、絵本・昔話・物語・

子どもとメディアなどを中心に卒業研究を 行っている。そのような中、3 年生 1 期の 児童学演習Ⅰでは、本を読むことの楽しさ を味わいながら読書力を高めて欲しいと願

い、あらかじめ教師が選んだ質のよい物語 を、学生一人につき 2 冊読むことを課して いる。特に、2 冊目はかなりしっかりした 長編物語である。

 子どもにとって質のよい物語とはどうい うものか、文化学研究室の前任者である脇 明子は「あとになって本離れする原因に

63 に対する振り返りを行ったり、発表の工夫 につなげたりできることである。

 次に、課題として明らかになったことの 中から 4 つ紹介する。1 つ目は、物語を感 動的に味わった学生がどんなに素晴らしい 発表を行っても、実際にその物語を読んで いない学生は感動を共有することができに くいことである。2 つ目は、質のよい物語 を読めば各自の読書力と研究意欲は高まる が、読みの深まりから見ると個人差が大き いことである。3 つ目は、発表時の指導の 場が、その物語の感動を味わった一学生と 教師だけの学び合いに終始しがちになるこ とである。4 つ目に、全員の発表を通して、魅 力ある物語に数多く出会うことはできるが、

自らに課せられた物語以外はどんなに魅力 的に感じた物語であっても、実際に読み味 わう行為にはつながりにくいことである。

 これらの課題を通して今回ねらいとした ことは、学びを共有できる学生を増やし、

それによって他の学生にもその本を手に取 らせることである。そこで、2011 年度より、

3 人が同じ物語を読み意見交換し発表する という新たな試みを開始した。2 年間は 3 人で読み合う体験は一人につき 1 回のみで あったが、今年度(2013)は一人につき 2 回実践することができた。

 今年度、3 度目の取組を終えたが、見え てきた成果は期待以上のものであった。期 待していた学生の姿としては、「友だちの 研究する作品に興味や関心をもち、発表や 教師のアドバイスを聞くために(文化学研 究室にはゼミが二つあるが)もう一方のゼ ミにも参加する姿が見られる」「ゼミの仲 間意識がとても強くなっている」などで あった。しかし、その他にも「一人一人が 物語を繰り返し読み返す姿が見られる」「同 じ物語を読んで、感想を語り合う姿が見ら れる」等の効果があった。そこで、この方 法とこれらの効果との関係を理論的にも立 なったりしない本、つまり読む力を育てて

くれる本であるべき」1)と言っている。また、

「人間や世界について基本的に前向きの姿勢 を持つものであってほしい」2)とも言ってい る。そして「とりわけ大事なのが、物語の なかで大好きになれる大人に出会うこと」3)

であると説明している。これらをふまえて 選んだものを学生に課題図書として示した。

 さて、2 冊の物語を手にした学生の中に は、これらの物語を完読できるかと不安に なる者も多い。文化学研究室での卒業研究 を志した学生が、必ずしももともと読書家 であったとは言えないのである。特に外国 の児童文学作品は、登場人物の名前や時代 背景等になじみがなく、物語の世界に入り 込むまでに随分苦労するようである。しか し、毎年この取組を繰り返すうちに、以下 のような成果とともにいくつかの課題が明 らかになってきた。

 まず、成果の代表的なものを3つ紹介する。

1 つ目は、読書の楽しさを味わい、読みに対 する自信をもつようになることである。長 編物語を読んだ経験が少なく物語の入口で 戸惑う学生も、質のよい物語を読むうちに、

その物語の中に見られる人間関係やその世 界観がつかめるようになる。すると、物語 の世界に入り込み、登場人物に感情移入し て楽しむことができるのである。2 つ目に、

その物語を単なる解説ではなく、自分の言 葉で感動をもって紹介できるようになるこ とである。物語の世界に入り込み、感動的 に味わうと、読んでいない人にもその魅力 が伝わるように紹介したくなる。そのため、

作者や時代背景、気づいたこと、発見した こと、感動したこと、この物語を推薦した い理由等、各自様々な視点を設けて 1 つの 作品を読み込んでいく。そして、1 度読んだ だけでは気付かない多くの発見をするなど、

読みを深めていくのである。3 つ目に、仲間 の発表や教師の指導を受けて、自らの読み