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東日本大震災の本震・余震観測記録に基づく免震建築物の地震時挙動の分析

3.1 検討方針

1) はじめに

2011年3月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震では、主に東北地方から関東地方に建設 された免震建築物が継続時間の長い地震動を受け、免震建築物の地震時挙動について多くの知 見が得られている。「平成23年度国土交通省建築基準整備促進事業27-3」において実施した検 討では、事業者から提供された免震建築物の地震観測結果および学術誌やWeb等で公表されて いる地震観測資料に基づいて、免震建築物の特徴(免震部材、固有周期等)と地震応答(最大 加速度、免震層最大変位、加速度低減効果等)についてまとめた。

一方、今回の地震ではマグニチュード 9.0 の本震の後、数多くの余震が発生したが、これら の余震の中には、マグニチュードが6~7程度と比較的大きな規模を持つものも含まれていた。

よって、免震建築物が複数の余震による揺れを受けることで、免震層の累積変位が過大になる など、その特性に影響を及ぼす可能性もある。ここでは、東北地方太平洋沖地震の後に発生し た余震を対象とし、これらの地震が免震建築物に与えた影響を定量的に把握するため、観測記 録に基づく建物挙動について検討を行った。

2) 対象建物の選定

検討の対象とした建物は、事業者から提供された免震建築物であり、以下の6棟とする。

A建物【鹿島建設】

B建物【竹中工務店】

C建物【竹中工務店】

D建物【大成建設】

E建物【清水建設】

F建物【建築研究所】

3) 対象とする地震

2011年3月11 日の本震後に発生した余震を対象とする。このうち、観測結果から得られた 基礎の最大加速度、免震層の最大変位あるいは計測震度のうち一つの要因が、一定の水準以上 となるものを選定した。これらの要因と水準は、次項以降の各建物の項で示した。

4) 検討項目

余震の地震観測記録を整理するに際して、各建物について、以下の項目に沿った整理を行っ た。

a) 建物概要

建物の所在地、構造、規模、免震部材などの建物情報を開示可能な範囲で示した。

b) 累積変位や固有周期等

最大加速度、免震層最大変位、免震層累積変位ならびに建物の固有周期と減衰定数を求めた。

免震層累積変位は、地震の全継続時間ならびに主要動継続時間における値を算定した。ここで は、主要動継続時間を地震による総エネルギー入力の 5%~95%に相当する時間で定義した。

固有周期と減衰定数はARX法などを用いて同定した。

c) 観測記録やその他の情報

加速度、免震層変位、免震層累積変位の時刻歴波形、免震層の変位オービット、建物基礎に

Ⅶ-3.1-2 おける擬似速度応答スペクトル他を示した。

次項以降に、各建物についての観測結果を示す。

Ⅶ-3.2-1

3.2 本震・余震による免震層の累積変位等の整理

1) A建物 a) 建物概要

対象とした建物の概要を以下に示す。また、建物の平面図、断面図および加速度計の設置位 置を図3.2-1に示す。

・所在地:東京都調布市

・竣工年:1986年

・建物用途:研究施設

・構造種別:鉄筋コンクリート造

・基礎形式:杭基礎

・建物規模:地上2階、高さ10.2m

・免震部材:天然ゴム系積層ゴムφ1000×8、φ800×10、鋼棒ダンパー×14、オイルバッファ×12

・固有周期:2.0秒(積層ゴムのみ)、0.83秒(鋼棒ダンパー弾性時)

(◎積層ゴムφ1000、○:積層ゴムφ800、■:鋼棒ダンパー、●:加速度計)

図3.2-1 建物平面図、断面図および加速度計設置位置

1 1

1

1 1 1

1

Ⅶ-3.2-2 b) 累積変位や固有周期等

本検討では、上記建物の基礎での入力加速度が 10cm/s2 以上の余震を選定した。検討対象の 余震について、地震発生日時、震央および規模(マグニチュード M)を表 3.2-1 に示す。参考 のために2011年3月11日の本震についても示している。

表3.2-2に各地震における最大加速度と免震層最大変位を示す。対象とした地震がM6~7程

度と比較的大きい規模を有するものの、震源から建設地までの距離が離れているため、基礎に おける入力の大きさは本震と比較して小さくなっている。建物基礎(BF)における加速度は10

~30cm/s2程度であり、免震層の水平変位も 1cm 以下であった。上部構造の加速度は、4/16で は基礎の加速度20~30 cm/s2に対して50%程度に低減されているが、3/15、3/19、4/7、4/11で は、基礎の加速度10~20cm/s2程度に対して概ね同程度あるいは増幅される傾向になっている。

表3.2-3に各地震における免震層累積変位を示す。また、図3.2-2に、本震と余震の免震層累

積変位を比較して示す。各余震の主要動継続時間における免震層累積変位は、0.267~0.925m となっており、本震の4.76mと比べて小さい。また、これらの値は、それぞれの地震の記録全 時間の累積変位に対して67~80%程度となっている。また、余震について、主要動継続時間に おける免震層累積変位の総和を求めると2.57mであった。この値は、地震記録全時間の同総和

3.61m に対して 71%に、本震の主要動継続時間における免震層累積変位4.76m に対して54%

になっている。

表3.2-4 と図 3.2-3、図 3.2-4に各地震における建物の固有周期と減衰定数をそれぞれ示す。

余震における建物の固有周期は長辺方向が 0.90~0.92秒、短辺方向が0.79~0.87 秒となって いる。両方向ともに本震時の固有周期(1.03秒および1.05秒)よりもやや短くなっているが、

余震による固有周期の変化は小さい。減衰定数は長辺方向が0.085~0.120、短辺方向が0.144

~0.192 であり、地震による値のばらつきが認められる。また、短辺方向の減衰定数が大きく なっている。

表3.2-1 対象とした地震

地震発生日時 震源 規模

2011/3/11 14:46(本震) 三陸沖 M9.0

2011/3/15 22:31 静岡県東部 M6.4

2011/3/19 18:56 茨城県北部 M6.1

2011/4/7 23:32 宮城県沖 M7.2

2011/4/11 17:16 福島県浜通り M7.0

2011/4/16 11:19 茨城県南部 M5.9

Ⅶ-3.2-3

表3.2-2 最大加速度と免震層最大変位 地震

発生日

最大加速度(cm/s2) 免震層最大変位

(cm)

長辺方向 短辺方向

BF 1F RF BF 1F RF 長辺方向 短辺方向

2011/3/11

(本震) 108.8 121.1 124.2 143.4 112.8 124.9 3.99 3.61

2011/3/15 12.0 19.3 19.8 19.6 17.9 43.4 0.43 0.43

2011/3/19 7.22 8.05 8.94 10.5 7.97 11.2 0.15 0.16

2011/4/7 12.5 14.5 15.0 15.1 23.7 28.8 0.31 0.92

2011/4/11 21.1 20.0 20.6 17.4 15.5 16.9 0.46 0.32

2011/4/16 22.3 12.36 14.2 29.9 12.3 15.5 0.20 0.22

表3.2-3 免震層の累積変位

地震発生日 地震記録全時間(m) 主要動継続時間(m)

長辺 短辺 2方向 継続時間(s) 長辺 短辺 2方向*

2011/3/11

(本震) 4.98 4.35 7.37 70~160 3.27 2.73 4.76(0.65)

2011/3/15 0.501 0.367 0.682 30~80 0.330 0.259 0.459(0.67)

2011/3/19 0.257 0.173 0.341 30~100 0.200 0.139 0.267(0.78)

2011/4/7 0.559 1.03 1.28 50~150 0.437 0.725 0.925(0.72)

2011/4/11 0.578 0.432 0.800 40~120 0.422 0.309 0.577(0.72)

2011/4/16 0.316 0.228 0.431 30~110 0.253 0.183 0.346(0.80)

総累積変位

余震 3.61 余震 2.57(0.71)

本震+余震 10.98 本震+余震 7.33(0.67)

余震/本震 0.49 余震/本震 0.54

*( )内は地震記録全時間の値に対する割合

表3.2-4 建物の固有周期と減衰定数

地震発生日 固有周期(s) 減衰定数

長辺方向 短辺方向 長辺方向 短辺方向 2011/3/11

(本震) 1.03 1.05 0.167 0.185

2011/3/15 0.922 0.867 0.120 0.183

2011/3/19 0.905 0.788 0.085 0.157

2011/4/7 0.916 0.818 0.097 0.177

2011/4/11 0.919 0.839 0.107 0.192

2011/4/16 0.922 0.803 0.090 0.144

Ⅶ-3.2-4

地震記録全時間 主要動継続時間 図3.2-2 免震層累積変位の比較

図3.2-3 各地震における建物の固有周期

図3.2-4 各地震における建物の減衰定数 0

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

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