第9部 平成 25 年大法廷判決文の「着実に」 (同判決文・ 16 頁 10 行)の意味
3 東京高判 (平 25/12/25 )(鈴木健太裁判長)(甲 27 )
「(2) もっとも、選挙制度の仕組み自体の見直しについては、参議院の在 り方をも踏まえた高度に政治的な判断が求められるなど課題も多く、その検 討に相応の時間を要することから、本件選挙までに選挙制度の仕組みを改め、
憲法の要求する投票価値の平等の実現を図らなかったことが、合理的期間内 における是正が行われなかったものとして、国会に与えられた裁量権の限界 を超えたものというべきかついては、更に検討を要し、その判断に当たって は、単に期間の長短のみならず、採るべき措置の内容、そのために検討を要 する事項等の諸般の事情を総合考慮して評価すべきである。
前記前提事実及び認定事実によれば、〈1〉 国会は、平成一六年大法廷判 決を受けて、参議院において定数較差問題につき協議を開始し、平成一六年 選挙後に参議院改革協議会の下に設置した専門委員会において、現行の選挙 制度の仕組み自体の見直しの要否も含め、各種の是正案を検討したこと、
〈2〉 しかし、参議院改革協議会において合意を形成することはできず、
当面の是正策として挙げられていたいわゆる四増四減案に基づき、平成一八 年改正が行われたこと、〈3〉 参議院は、平成一九年選挙後、選挙制度の抜 本的見直しを議論・検討する必要があるとして、参議院改革協議会の下に新 たに専門委員会を設置したが、平成二二年選挙までの間に行われた協議は六 回のみで、その間、選挙制度の抜本的見直しについて実質的な検討が進めら
れたとはいい難いこと、〈4〉 ただし、上記専門委員会は、その間に平成二 一年大法廷判決が言い渡されたことを踏まえ、平成二五年施行の選挙(本件 選挙)に向けて選挙制度の見直しを行うことについて意見が一致し、平成二 二年五月、参議院改革協議会においてもその報告書が了承され(同協議会の 報告として参議院議長に提出された。)、現に、平成二二年選挙後、選挙制度 の改革に関する検討会において、参議院議長からたたき台が提示されるなど して具体的な検討が行われたこと、〈5〉 ところが、その後、平成二五年施 行の選挙に向けては現行の選挙制度を維持するという案が提出されるなど して、再度当面の是正策として平成二四年改正が行われたことが認められる。
このような経過に照らせば、国会は、平成一六年大法廷判決後、参議院に おいて、憲法上要求された投票価値の平等の実現を図るため、他の政策的目 的ないし理由との調和の下にいかなる選挙制度を採るかについて、その仕組 み自体の見直しの要否を含めた検討・協議を行い、当面の是正策として平成 一八年改正を行った上で更に協議の場を設けていたところ、平成二一年大法 廷判決において、上記改正によっても残ることとなった投票価値の大きな不 平等を解消するためには選挙制度の見直しが必要であることを強く指摘さ れたことを受けて、遅くとも平成二二年五月の段階で、最大較差の大幅な縮 小を図るための選挙制度の見直しの必要性とその実現可能性があることを 前提に、本件選挙に向けて選挙制度の改革を行うことを合意したということ ができる。そうであるにもかかわらず、国会は、平成一六年大法廷判決から 八年以上、平成二一年大法廷判決から三年以上の期間が経過してもなお、選 挙制度の見直しの具体的内容について各会派の意見の一致を見ないという 理由で、本件選挙に向けた選挙制度の見直しを見送り、またもや当面の是正 策にすぎない四増四減案に基づく改正を行った。そして、その改正によって も、各選挙区間における選挙人の投票価値の較差は、最大値において、平成 二一年大法廷判決で「大きな不平等が存する状態である」とされた四・八六
とほとんど変わらない四・七七となったにすぎない。
確かに、選挙制度の仕組み自体の見直しについては、その具体案の策定、
合意の形成等に様々な困難を伴うほか、新たな選挙管理事務体制の検討等に も相応の時間を要するものと考えられる。しかし、上記のとおり、国会にお いては、平成一六年大法廷判決後に参議院改革協議会の下に設けられた専門 委員会において、既に、較差を四倍未満とするためには現行の選挙制度の仕 組み自体の見直しが必要であるとして、都道府県単位の選挙区の合区を行う 案等の検討も始めており、「平成一八年改正の結果によっても残ることとな った上記のような較差は、投票価値の平等という観点からは、なお大きな不 平等が存する状態であり、選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小 を図ることが求められる状況にあるといわざるを得ない。」とした平成二一 年大法廷判決後には、その実現可能性を前提に、平成二五年に施行される本 件選挙に向けて選挙制度の改革を行う旨の合意がされたのである。そして、
本件選挙に向けた選挙制度の見直しを見送ったことについては、各会派の意 見の一致を見ないということのほかに説明はなく、被告らからもその具体的 理由の主張はない。また、平成二四年大法廷判決
後、本件選挙までに、国会において選挙制度の見直しについて
具体的
● ● ●
な
●
検討
● ●
が進められていることはうかがわれない。
そうすると、本件選挙に向けた選挙制度の見直しを見送り、当面の是正策 にすぎない四増四減案に基づく改正を行った国会の対応は、投票価値の平等 の重要性に照らして看過し得ない選挙区間の投票価値の不均衡につき合理 的期間内に是正をしなかったものとして、国会に与えられた裁量権の限界を 超えているというべきであり、本件定数配分規定は本件選挙時には憲法に違 反するに至っていたというべきである。
なお、平成二四年改正の附則には、平成二八年に行われる参議院議員通常 選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、結論
を得る旨の規定がある。しかしながら、前記認定のとおり、本件選挙後、協 議会が開催されていることは認められるものの、前記認定事実によれば、上 記附則には、座長私案にあった選挙区の広域化について触れられていない上、
上記協議会ではなお有識者からの意見聴取が予定されているというのであ って、改正案が具体化されている様子もうかがわれないことからすると、上 記附則の存在は、上記判断を左右するものではない。
(3) 以上によれば、本件定数配分規定は、憲法の要求する選挙権の平 等に違反し、違憲というべきである。そして、本件定数配分規定は、その性 質上不可分一体のものとして、全体として違憲の瑕疵を帯びると解すべきで ある(最高裁昭和四九年(行ツ)第七五号同五一年四月一四日大法廷判決・
民集三〇巻三号二二三頁参照)。」(強調 引用者)
と判示する。
(2) 上記(1)の「また、平成二四年大法廷判決後、本件選挙までに、国会において選挙
制度の見直しについて
具体的
● ● ●
な
●
検討
● ●
が進められていることはうかがわれ ない。」の判示に照らし、東京高判(平25/12/25)(鈴木健太裁判長)(甲27)は、
【本件選挙投票日(平24〈2012〉.12.16)の時点に於ける、『合理的期間』の
末日の未徒過の
立証責任
】は、国がこれを負担すると解している、と理解される。
(以下、余白)