第 5 章 論理式への変換処理
3. 条件部の有無に応じて、処理手順は以下のようになる。
•
条件部が欠けていると判断された場合
–
全てのユニットを論理積
(∧)で結合する。
•
条件部が存在し、要件・効果構造の形が保たれている場合
–
条件を示す修辞関係の従属ユニット及びその下位ユニットを条件部とする。
–
条件を示す修辞関係の核ユニット及びその下位ユニットを効果部とする。
–
要件部と効果部に配置された各ユニットを、並列関係を持っているユニッ トの場合は論理和
(∨)で、それ以外の関係ならば論理積
(∧)により各ユニッ ト間を結合する。
このような処理手順により、修辞構造から論理骨格を解析する。この時の解析例を以下 に示す。
元文
(国民年金法 第二十二条)政府は、障害若しくは死亡又はこれらの直接の原因となった事故が第三者の行為に よって生じた場合において、給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権 者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
ユニット分割
A:
政府は、
B:
障害若しくは死亡又はこれらの直接の原因となつた事故が第三者の行為 によって生じた場合において、
C:
給付をしたときは、
D:
その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償 の請求権を取得する。
論理骨格
A ∧ B ∧ C
⇒
D5.5 論理骨格に基づく論理式への変換
前述された処理により、法令文の論理骨格を得ることができた。この結果より江尻、北 田、信岡らの先行システム
[3, 4, 5]を適用することにより、論理式を出力することができ る。この時の処理の流れを以下に示す。
国民年金法第四条の条文を入力として、ユニット分割した結果及び論理骨格は以下のよ うになる。
元文
この法律による年金の額は、国民生活水準その他の諸事情に著しい変動が 生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定の措置が 講ぜられなければならない。
(国民年金法 第四条)
ユニット分割
A: この法律による年金の額は、
B: 国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、
C: 変動後の諸事情に応ずるため、
D: 速やかに改定の措置が講ぜられなければならない。
論理骨格
B
⇒
A ∧ C ∧D図
5.1:修辞構造及び論理骨格
(国民年金法 第四条)これらの結果をユニット毎に先行システムを適用させる。まずユニット
Aについて先行 システムへ送ると、
A: この法律による年金の額は、
⇓
額
(x4) ∧ OBJ(e2, x1) ∧ AGT(e2, x3) ∧よる
(e2) ∧法律
(x1)∧この
(x0)∧
年金
(x3)となる。これがユニット
Aの内容を論理表現で表した論理式となる。同様にユニット
Bについて同様の操作を行なうと、
B: 国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、
⇓
OBJ(e10, e9) ∧REC(e10, x7) ∧ OBJ(e10, x11)∧
生ずる
(e10) ∧変動
(e9) ∧著しい
(x8) ∧諸事情
(x7)∧生活水準その他
(x6) ∧国民
(x5)∧場合
(x11)となる。これがユニット
Bの内容を表した論理式となる。同じ処理を全てのユニットに 対して順次行なっていく。ユニット
Cについて処理すると、
C: 変動後の諸事情に応ずるため、
⇓
OBJ(e14, x15)∧
応ずる
(e14)∧ RES1(e12, x13) ∧諸事情
(x13) ∧変動後
(e12)∧
ため
(x15)となり、ユニット
Dについて処理すると、
D: 速やかに改定の措置が講ぜられなければならない。
⇓
AGT1(e19, e18)∧
講ずる
(e19)∧ OBJ1(e18, e17) ∧措置
(e18) ∧改定
(e17)∧
速やかに
(x16)というように解析できる。このようにして解析された各ユニットの論理式
({}により囲われた部分) を、論理骨格に基づいて論理積
(∧)・論理和(∨)等で結合すると、この法令 文全体の論理式は、
{OBJ(e10, e9)
∧ REC(e10, x7) ∧ OBJ(e10, x11) ∧生ずる
(e10) ∧変動
(e9)∧
著しい
(x8)∧諸事情
(x7)∧生活水準その他
(x6) ∧国民
(x5)∧
場合
(x11)}⇒ {額
(x4)∧ OBJ(e2, x1) ∧ AGT(e2, x3) ∧よる
(e2) ∧法律
(x1) ∧この
(x0)∧年金
(x3)}∧ {OBJ(e14,x15)
∧
応ずる
(e14) ∧ RES1(e12, x13)∧諸事情
(x13) ∧変動後
(e12) ∧ため
(x15)}∧ {AGT1(e19, e18)
∧講ずる
(e19)∧ OBJ1(e18, e17) ∧
措置
(e18) ∧改定
(e17)∧速やかに
(x16)}
が得られる。この時の各ユニットの論理式が結合された部分を太字で表している。このよ
うに論理式へと変換する際に論理骨格を利用することにより、文全体の正しい論理式を得
ることができた。
また
1.1節で述べた国民年金法第十七条の条文も、並列構造のそれぞれの要素に条件部
ドキュメント内
修辞構造による法令文の解析法に関する研究
(ページ 39-42)