第5章 結論
5.2 本研究の意義と今後の課題
マーカー 推論タイプ 相投射 情報の縄張り メンタル・スペース構築
“看上去kànshàngqu”
(視覚のみ)
演繹的 仮説的
単位相 話者、非話者 基底、視点→焦点
“看来kànlái”
“看样子kànyàngzi”
演繹的
仮説的 単位相 話者、非話者 基底→視点→焦点
表 5-2 中国語の証拠性表現の属性
以上から、日本語の証拠性表現と中国語の証拠性表現は使用基準が全く異なるという結 論が得られた。中国語の証拠性表現は少なくはないが、日本語とは完全には対応させるこ とができない。例えば、基底と視点が同じスペースに融合する場合では、視覚による情報 に基づく推論の標識は“看上去 kànshàngqu”しかなく、視覚以外(聴覚、嗅覚、味覚、
触 覚 な ど ) の 情 報 に 基 づ く 推 論 は 中 国 語 に 相 当 す る 証 拠 性 表 現 が な く 、 代 わ り に “好 像 hǎoxiàng”を使うしかない。また、“好像hǎoxiàng”は蓋然性判断を表す表現であるため、
“看 kàn+X”に置き換えられる場合が多いから、「ヨウダ」「ラシイ」「(シ)ソウダ」と いずれも対応できる証拠性表現であるという誤解を招いた。実は確実な根拠がある場合で は、“好像hǎoxiàng”は不適切である。なお、中国語の証拠性表現はいずれも「(シ)ソウ ダ」のように、双位相的な用法がないから、日本語に比べると、多くの制限がある。
しかし、日本語の証拠性表現は婉曲用法ももつのに対して、中国語の証拠性表現は婉曲 用法がないと考えられるが、本稿ではそれについて触れていない。また、中国語の“看起 来 kànqilai”も使用頻度は決して多くないが、証拠性表現であり、“看上去 kànshàngqu”
“看来 kànlái”“看样子kànyàngzi”のいずれにもほぼ交替できるようである。それについ て深く研究する必要がある。さらに、伝聞による純粋証拠性表現「らしい」「(スル)ソウ ダ」と中国語の“据说jùshuō”“听说tīngshuō”についても今後の課題としたい。最後に、
中国語では連用修飾の場合では、証拠性表現が用いられず、直接形のみが使えるが、連体 修飾の場合ではそのような構文上の制約がないようである。この点についても深く研究し、
またその原因も明らかにしたい。
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