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本機構適応による処理遅延

第 5 章 RING の評価 42

5.2 定量的評価

5.2.1 本機構適応による処理遅延

本機構はユーザ端末内でC/S型通信環境を構築し、同時にインターネット間通信に おいてP2P型通信を実現する。そのため端末内部で配送サーバプロセスおよび配送メ ンバのアドレスを参照し変換した後にメッセージを送受信している。定量的評価では 本機構が及ぼす配送情報の参照とアドレス変換処理の処理遅延を計測する。

処理遅延の評価内容として端末内部のサーバプロセスへの転送処理遅延と外部P2P 参加端末への送信処理遅延の計測を2つの実験環境にて行った。

内部転送処理遅延

まず内部のサーバプロセスに向けた転送処理遅延について説明する。

評価環境

本機構を単一のユーザ端末で起動し、同時にゲームプログラムを模した連続的なUDP トラフィックを発生させるクライアントアプリケーションとその結果を返すサーバアプ リケーションを起動する。この2つのアプリケーションはインターネット上での通信を

想定し、接続先のアドレスが固定で組み込まれている。そのため本機構を利用し、ク ライアントアプリケーションから生成されたメッセージを端末内のサーバアプリケー ションに転送するため、サーバ管理表を参照し受信IPアドレスを端末のアドレス、配 送すべきポート番号をサーバアプリケーションが起動している番号に変換する。

尚評価実験に用いた環境はWindows XPを搭載したデスクトップPCである。

評価個所

本機構を用いた場合にメッセージ遅延がどの程度発生するか計測する。評価はクラ イアントアプリケーションからの生成メッセージを対象とし、本機構にてメッセージ を取得した直後からネットワークレイヤに出力された直後までの時間を記録する。尚、

試行回数は連続した300個のメッセージを対象に計測した。

評価個所を図 5.1に示す。

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図 5.1: 内部転送処理遅延評価個所

評価結果

内部でのメッセージ転送処理遅延の評価結果を図 5.2に示す。

横軸はメッセージ取得開始からの計測回数であり、縦軸が本機構でメッセージ取得 開始直後から1回の転送処理までが終了した時間である。メッセージの取得開始はプ ログラムが起動し安定した状態から計測した。計測結果から安定して60から80マイ

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図 5.2: メッセージ内部転送遅延

クロ秒以内に収まっていることが分かる。尚平均メッセージ転送処理時間は68.9マイ クロ秒であった。

ネットワークゲームにおけるユーザが感じる不快な体感遅延は前述したように100 ミリ秒以上において起こる。実際にインターネット上で動作させ、ネットワーク遅延 を利用して計測しなければ正確に言及できないが、本機構のメッセージ処理遅延は体 感遅延に対して十分微量な範囲である。

外部送信処理遅延

次に外部端末への送信処理回数を変更した場合のオーバヘッドについて述べる。

評価環境

外部送信処理のオーバヘッドとして、単一の端末において他のP2Pホストへ送信す る回数を変化させた場合に、一度に全ホストへの送信処理にかかる時間を計測した。

計測に利用したプログラムはQuake2 version 3.21である。各送信回数において送信処 理開始から送信処理終了までを3000個のメッセージを計測し、それを1回の試行とし て各送信処理回数において10回行い平均値及び標準偏差を算出した。

評価した個所を図 5.3に示す。

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図 5.3: 内部転送処理遅延評価個所 評価結果

外部送信処理遅延の送信回数と処理平均時間の結果を図 5.4に、標準偏差を図 5.5 に示す。

送信する端末台数が増加するにつれ処理時間がかかり、且つ送信するタイミングに ばらつきが出ることがわかる。一般的FPSの体感許容遅延200ミリ秒程度である。ま たQuake2と同ジャンルであるCounter-Strike [35]のネットワーク片道遅延が50〜150 ミリ秒に集中することを考慮すると、単一の端末で許容できる送信処理遅延は30〜40 ミリ秒程度であると考慮でき、これよりプロトタイプでは500台程度までが規模の限 界である。

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