• 検索結果がありません。

本件解除は手続上の要件を満たしていないこと

(1)解除にあたって満たされるべき手続上の要件

ア 平成23年7月19日、原子力安全委員会は、第54回臨時会議において、

周辺住民等の放射線防護に関する技術的助言として、「今後の避難解除、復 興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方」を示した(甲54)。同「基 本的な考え方」は、現存被ばく状況における放射線防護措置について、「放

射線防護に関わりをもつ行政判断において、関係省庁や地方自治体等は、必 要に応じ、健康、環境、社会、経済、倫理、心理、政治等の側面から検討を 加えるとともに、検討プロセスの透明性を確保しつつ、関係者と充分な協議 を行うことによって、放射線防護が適切かつ合理的に行われることを確実に すべきである。」と定めている。

イ 平成23年8月4日、原子力安全委員会は、改正前原災法20条5項に基

づき、原子力災害対策本部長に対し、「東京電力株式会社福島第一原子力発 電所事故における緊急防護措置の解除に関する考え方について」と題する意 見を述べた(甲57)。同「考え方について」は、本件事故において実施さ れている放射線防護のための措置を解除するにあたっては、新たな防護措置 の実施が必要になる場合が多いため、「緊急防護措置の解除に当たって行う べき新たな防護措置の実施時期、方法、内容等を定め、必要な準備を行った 上で、適切に解除すること」と定めている。また、緊急防護措置の解除と新 たな防護措置を効率的、効果的に実施するためには関連する地元の自治体・

住民等を決定プロセスに参加させることが重要であるとして、「緊急防護措 置を解除し、適切な管理や除染・改善措置等の新たな防護措置の計画を立案 する際には、関連する地元の自治体・住民等が関与できる枠組みを構築し、

適切に運用すること」と定めている。

なお、同「考え方について」は、その基礎となった国際基準として、以下 のICRPの勧告を引用している。

「(ICRP Pub.109)

・(103) 利害関係者の積極的な参加によって、通常、適切な現場の知識、経

験、価値観が意思決定プロセスに反映されることになるため、結果として策 定される詳細な防護策は、的が絞られ、よく理解され、指示される可能性が 高い。

・(106) 可能ならば、防護措置の終了に関する話し合いに、関連する利害関

係者を参加させることは重要である。自宅で避難している住民と決定につい て話し合うことは、不可能ではないにしても、困難であろうが、避難した地 域に戻 る決 定及 び後 段で実 施さ れた 防護 措置の 終了 につ いて 避難し てい る 人々と話し合うことは極めて重要だろう。

・(108) 関連する利害関係者が関与することが不可欠であり、こうした関与 を効率的に行うための過程及び手順を確立すべきである。

・(115) 緊急時被ばく状況から現存被ばく状況への変更は、総合的な対応に

責任がある当局の責任に基づくことになる。(中略) 緊急時被ばく状況か ら現存被ばく状況への移行の計画立案は、総合的な緊急時への備えの一環と して行われるべきであり、関連するすべての利害関係者が関与すべきである、

と委員会は勧告する。」

ウ これらの原子力安全委員会の意見は、「緊急事態応急対策の実施に関する

技術的事項について必要な助言」としてなされたものであり(改正前原災法 20条6項)、緊急事態応急対策の実施にあたっての原子力災害対策本部長 の裁量に関する裁量基準であると解される。

したがって、原子力災害対策本部長が、原災法に基づく緊急事態応急対策の 一環である特定避難勧奨地点の指定を解除するにあたっては、上記各原子力 安全委員会の考え方に基づき、以下の手続的要件が満たされる必要がある。

①解除後に新たな防護措置の実施時期、方法、内容等を定め、必要な準備 を行った上で、適切に解除すること

② 解 除の 意思 決 定およ び 解除 後の 新 たな防 護 措置 の計 画 を立案 に あた っ て、関連する地元の自治体・住民等が関与できる枠組みを構築し、適切 に運用されること

(2)本件解除が手続的要件を満たしていないこと

ア 新たな防護措置が定められていないこと

本件解除は、避難の勧奨を中止し、これによって指定世帯の避難への各種

支援を打ち切るものである。したがって、本来であれば、解除後に取られる べき新たな防護措置について、実施時期、方法、内容等が定められ、必要な 準備が行われた上で解除されるべきであった。

ところが、実際には、特定避難勧奨地点の指定とこれにともなう各種支援 措置に代わる放射線防護措置は何ら準備されていない。本件解除に至る説明 会においては、上記第3・3(1)記載のとおり、何度にもわたって、除染 を再度実施するよう住民から求められていたが、これすら実現することはな かった。

このように、本件解除は、解除後の新たな防護措置を何ら定めることなく 行われたものであり、上記原子力安全委員会の意見に基づく手続的要件に反 してなされた違法なものである。

イ 本件解除の意思決定にあたって地元自治体・住民の関与が確保されていな いこと

本件解除にあたっては、解除および新たな防護措置の立案にあたって、関 連する地元の自治体・住民等が関与できる枠組みを構築し適切に運用する必 要があった。

本件解除に至る過程においては、上記第3・3(1)記載のとおり、地元 の行政区長・住民らが一貫して反対を表明してきており、また地元自治体で ある南相馬市の市長や市議会議長も、進学・就職等の生活の節目を考慮して 判断す べき こと や賠 償につ いて 配慮 し生 活圏の 除染 の再 実施 等を要 望し て いた。ところが、被告は、南相馬市市議会の全員協議会において一方的に特 定避難勧奨地点を解除する旨の政府方針を示し、平成26年中の解除を避け るよう求める市議会の意向も無視し、本件解除に踏み切った。また、同年1 0月に行われた住民に対する説明会においても、一方的な「説明」が行われ たのみであり、住民からの反対意見が強かったにもかかわらず、こうした住 民の見解は何ら考慮されることなく、本件解除が強行された。

このように、本件解除の意思決定において、地元自治体や住民が関与する ことができる枠組みは何ら存在せず、政府が決定した方針を一方的に伝達す るとの非民主的な方法で本件解除が強行されたものであり、また住民の意見 にもかかわらず新たな防護措置は何ら計画されていないのであって、本件解 除は上 記原 子力 安全 委員会 の意 見に 基づ く手続 的要 件に 反し てなさ れた 違 法なものである。

第5 本件解 除は処分 性を有するこ とないし 原告らは予備 的請求に つき確認の利益 を有すること

関連したドキュメント