(センター目標)
未到エネルギー研究センターは、流体科学における多様なエネルギー研究の連携によ り、基盤エネルギーおよび新エネルギー分野において、高効率で無駄の無い革新的なエ ネルギー利用体系を実現するため、従来有効なエネルギー変換が困難であった未到エネ ルギーの変換やエネルギー貯蔵、輸送、および保全に関する研究を行う。
(主要研究課題)
知的ナノプロセスを用いた革新的グリーンナノデバイスの研究
地球環境問題とエネルギー問題の解決を目指した地殻の高度利用
新概念燃焼技術を基盤とした高エクセルギー効率燃焼技術の創成
センシング技術、材料評価技術等を用いた保全の最適化
環境調和型エネルギーシステムの創成
エネルギー問題の解決に寄与する科学技術エネルギー政策
先端的な未到エネルギー関連工学に関する研究
ナノ流動現象の解析・制御による次世代電池システムの理論設計
(研究分野)
グリーンナノテクノロジー研究分野 Green Nanotechnology Laboratory
地殻環境エネルギー研究分野 Energy Resources Geomechanics Laboratory エネルギー動態研究分野 Energy Dynamics Laboratory
システムエネルギー保全研究分野 System Energy Maintenance Laboratory 混相流動エネルギー研究分野 Multiphase Flow Energy Laboratory
エネルギー科学技術研究分野(客員)* Energy Science and Technology Laboratory 先端エネルギー工学研究分野* Advanced Energy Engineering Laboratory (外国人客員)
次世代電池ナノ流動制御研究分野 Novel Battery Nanoscale Flow Concurrent Laboratory
*
注:平成27年度は実質的な構成員がいないため、分野の研究活動は記載していない。3.5.1 グリーンナノテクノロジー研究分野
(研究目的)
グリーンナノテクノロジー研究分野では、革新的グリーンナノデバイスの研究を行っている。具 体的には、発電デバイス(量子ドット太陽電池・熱電変換素子など)、低消費電力デバイス(量子ド ット LED/レーザー・新材料トランジスタ・スピンデバイス・センサーデバイスなど)やこれらを組 み合わせたナノエネルギーデバイスシステムの開発を行っている。独自に開発してきた超低損傷原 子層レベルプロセス技術を駆使し、ナノ物質やナノ構造の持つ本来の特性を引き出すことで、この ようなデバイス開発が初めて可能となる。そのために、プラズマ・ビームプロセス、活性種と物質 との相互作用に関する研究、先端バイオナノプロセスに関する研究を進めるほか、実験と計算(シ ミュレーション)を融合した研究も進めている。
(研究課題)
(1) 高精度量子ドット作製技術とエネルギー変換デバイス、光デバイス、電子デバイス、スピンデ バイスへの応用に関する研究
(2) プラズマ・ビームプロセスによる新材料エッチングおよび表面反応に関する研究
(3) 高品質低温金属酸化物/窒化物薄膜の形成技術の開発と新デバイスへの展開に関する研究 (4) 超低損傷表面改質・ドーピング・エッチング技術の開発と新デバイスへの展開に関する研究 (5) 中性粒子ビーム励起表面反応による新物質創製
(構成員)
教授 寒川 誠二、准教授 久保田 智広、助教 岡田 健、トーマス セドリック、技術職員 尾崎 卓 哉
(研究の概要と成果)
(1) 高精度量子ドット作製技術とエネルギー変換デバイス、光デバイス、電子デバイス、スピンデ バイスへの応用に関する研究
バイオテンプレート極限加工により作製した 3 次元均一高密度等間隔シリコン量子ナノ円盤構造 に中間材料としてアルミナを適用することで、量子ドットが発電に寄与することを明らかにし、量 子ドット太陽電池の効率を大幅に向上できることを明らかにした。また、GaAs、InGaAs、InGaN 量子 ナノ構造における狭線幅の発光が得られたほか、電流注入による高効率 LED 発光が確認された。さ らに、シリコン量子ナノ円盤構造は、フォノン散乱を引き起こし、熱伝導率を制御することが可能 であることが明らかになり、熱電変換素子への展開を進めている。
(2) プラズマ・ビームプロセスによる新材料エッチングおよび表面反応に関する研究
次世代の不揮発性メモリである磁性体メモリの実現のために、遷移金属および磁性体の中性粒子 ビームエッチングに関する研究を行っている。エタノール・酸素・アルゴンを用いてタンタル・白 金・ルテニウムを低温エッチングすることに成功した。また、エッチングメカニズムの解明のため に第一原理理論計算を行い、酸化物へのエタノール吸着とアルゴン照射が重要であることを示した。
(3) 高品質低温金属酸化物/窒化物薄膜の形成技術の開発と新デバイスへの展開に関する研究 タンタル等の酸化膜は、電圧印加により膜中に金属フィラメントが可逆的に成長・消滅するため、
抵抗変化メモリ(ReRAM)と呼ばれる不揮発性メモリとしての利用が期待されている。金属薄膜を中 性粒子ビームにより酸化することで、従来にない極薄で高品質なタンタル酸化膜を持つデバイスを 開発し、繰り返し動作などの優れた特性を実証した。
(4) 超低損傷表面改質・ドーピング・エッチング技術の開発と新デバイスに関する研究
中性粒子ビームにより窒素ドープグラフェン作製およびビームエネルギーによる構造制御に成功 し、電気化学的な特性が発現することを新たに見出した。
(5) 中性粒子ビーム励起表面反応による新物質創製
窒素中性粒子ビームを用いた室温での原子層堆積法によって、世界で初めて発光可能な高品質 GaN 成膜に成功し、In の濃度比率を自在に制御できる InGaN の成膜に挑戦している。
3.5.2 地殻環境エネルギー研究分野
(研究目的)
地球環境問題とエネルギー問題の解決を目指した、地殻の高度利用のための大規模流動現象の解明と予 測および制御に関する研究を行っている。特に、非在来型エネルギー資源として注目されるシェールオイ ル、メタンハイドレート、再生可能エネルギーの一種であり、かつ日本に豊富な地熱、地球温暖化対策の 切り札と目される CO2地中貯留等に関わる課題について従来にない新たなアプローチで取り組んでいる。
(研究課題)
(1) 非在来型エネルギー資源の生産増進法の研究 (2) CO2地中貯留層からの漏洩修復技術
(3) 大深度陸上/海底地層を対象とした地殻応力測定法の開発
(4) 破壊を伴う流体-固体-化学の連成解析を目的とした個別要素法(DEM)の高度化
(構成員)
教授 伊藤 高敏、助教 清水 浩之、技術職員 黒木 完樹
(研究の概要と成果)
(1) 非在来型エネルギー資源の生産増進法の研究
メタンハイドレートを胚胎する未固結地層に水圧を負荷してできるフラクチャーの形態を調べる室内 実験を昨年度に継続して実施した。この結果、フラクチャーが形成されるか否かという点では差応力-ひ ずみ特性が支配的であること、またフラクチャーが形成される場合、流体粘性の効果は比較的小さいのに 対して圧入レートの効果は非常に大きく、レートが大きいほどフラクチャーが枝分かれし、複数のフラク チャーとなって成長し易くなることが明らかになった。これにより、圧入レートによってフラクチャーの 分岐を人為的に制御できる可能性が明らかとなった。
(2) CO2地中貯留層からの漏洩修復技術
高圧で地下に圧入された CO2は、やがて周囲の水に溶解する。その結果、水の pH が下がるので周囲の塩 物質が溶け込んで炭酸塩水が形成される。ここで漏洩が起こって炭酸塩水が地表に向かって上昇すると、
逆の反応が起こって塩が析出する。この量が十分であれば、漏洩経路の閉塞を起こす可能性がある。この 妥当性を検証するために理論解析と室内実験を行った。その結果、100 日間程度に漏洩が続けば、断層の ような漏洩経路の浸透率が大幅に低下する可能性があることが明らかになった。
(3) 大深度陸上/海底地層を対象とした地殻応力測定法の開発
本年度は、坑井掘削で採取できる円柱状岩石サンプル(コア)の形状から地殻応力を評価する方法の検 討を進めた。これにより、従来法では地殻応力の偏差成分しか求められないという課題を克服する方法を 見いだした。すなわち、石油・天然ガス開発分野で開発された坑井側壁のコアを採取する技術を組み合わ せることで、地殻応力成分の個々の大きさと方向を評価できることを明らかにした。さらに、室内実験を 実施して基本概念の妥当性を検証した。
(4) 破壊を伴う流体-固体-化学の連成解析を目的とした個別要素法(DEM)の高度化
高レベル放射性廃棄物地層処分への応用を目的として、化学的現象・物質移行現象及び力学的現象に跨 る非線形破壊挙動の解析を行った。特にベントナイト緩衝材が脆性材料に変質することによるひび割れの 発生等に着目し、DEM による鉄-ベントナイトの化学反応を考慮可能な新たな流体-応力-化学連成解析コー ドを構築すると共に、こうした現象が起こり得る条件を把握するための予察的検討を行った。一方、地殻 や沈み込み帯のダイナミクスに大きな影響を与えると考えられる岩石中の加水・脱水反応−脆性破壊−流体 流動プロセスを DEM によりモデル化することを目的として、き裂内部の流体流動と共に、マトリックスの 浸透流もモデルに組み込むことにより、蛇紋岩化作用のような固相体積が膨張する加水反応において反応 速度と流体移動速度のバランスがき裂パターンを支配する重要なファクターであること、そして時間スケ ールの異なるシミュレーションと天然組織の比較が可能になることを明らかにした。