第3章 材料加工学習のものづくり活動におけるポジティブ感情と日常生活における
3.4 考察
これらの結果から,日常生活でストレス反応を有する生徒に対しては,材料加工学習の ものづくり活動における「癒し」の効果を期待できることが示唆された。しかし,その具 体的な関連性には性別による差異のあることも示された。すなわち,男女ともに「つくる 楽しみ」に関する「癒し」を最も感じているが,女子は男子に比べて材料加工学習のもの づくり活動において「爽快感・解放感」に関する「癒し」を感じやすい傾向のあることが
表 3-6 「癒し」とストレス反応との関連性(性別による差異)
性別
不安×没頭・無心 上位群:20(25.6%) > 下位群:8(11.1%) χ2(1)= 5.21 * 男子 抑うつ×没頭・無心 上位群:22(30.6%) > 下位群:6(7.7%) χ2(1)= 12.59 **
(n=150) 怒り・攻撃×つくる楽しみ 上位群:27(31.4%) < 下位群:34(53.1%) χ2(1)= 7.18 * 怒り・攻撃×完成の喜び 上位群:13(15.1%) < 下位群:20(31.3%) χ2(1)= 5.57 * ひきこもり×完成の喜び 上位群:22(25.6%) > 下位群:16(12.8%) χ2(1)= 5.64 * 女子 怒り・攻撃×没頭・無心 上位群:15(19.2%) > 下位群:11(8.6%) χ2(1)= 5.47 * (n=211) 不安×完成の喜び 上位群:24(26.1%) > 下位群:14(11.8%) χ2(1)= 7.21 **
不安×製作品に対する愛着 上位群: 7(7.6%) > 下位群: 1(0.8%) χ2修 正 値(1)= 4.80 * 絶望×完成の喜び 上位群:21(24.4%) > 下位群:17(13.6%) χ2(1)= 4.04 * 回答率は,ストレス反応尺度各因子の上・下位群に占める当該カテゴリの回答数の割合
**p <0.01 *p <0.05
回答数(回答率) χ2検定
癒しカテゴリとストレス反応因子との関連性 全体と同様の傾向
性別によって異なる傾向
全体と同様の傾向
性別によって異なる傾向
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示唆された。また,男子では「怒り・攻撃」反応の強い生徒ほど,「つくる楽しみ」や「完 成の喜び」による「癒し」を感じにくいのに対し,女子では「不安」反応の強い場合に「完 成の喜び」と「製作品に対する愛着」による「癒し」を感じやすく,「絶望」反応の強い場 合に「完成の喜び」による「癒し」を感じやすいことが示唆された。
これらの知見から,材料加工学習のものづくり活動においては,生徒が日常生活の中で 感じているストレス反応の状況を適切に把握し,効果的に材料加工学習のものづくり活動 による「癒し」を感じとらせるよう支援していくことが重要と考えられる。その際,女子 では日常生活の中でストレスを有している場合,材料加工学習のものづくり活動における
「癒し」を感じやすくなるという傾向については情意的支援の展開に向けた重要な糸口に なりうると考えられる。
4. まとめ
以上,本章では生徒が日常生活で感じるストレス反応別に,材料加工学習におけるもの づくり活動による「癒し」の効果を比較した。その結果,本調査の条件内で以下の知見が 得られた。
(1) 材料加工学習のものづくり活動において「癒し」を感じている生徒は全体の 64.8%
認められた。
(2) 全体的な傾向として,日常ストレス反応と材料加工学習のものづくり活動による「癒 し」との間には有意な関連性が認められ,「不安」,「抑うつ」,「怒り・攻撃」反応の 強い生徒は「没頭・無心」による「癒し」を感じやすく,「ひきこもり」反応の強い 生徒は「達成の期待感」による「癒し」を感じにくいが「完成の喜び」による「癒 し」を感じやすいことが明らかとなった。
(3) しかし,このような「癒し」の効果には性別による差異が認められ,男子では「怒 り・攻撃」反応が強い生徒ほど,「つくる楽しみ」や「完成の喜び」による「癒し」
を感じにくいことが示唆された。これに対して女子では,「不安」反応の強い生徒ほ ど「完成の喜び」と「製作品に対する愛着」による「癒し」を感じやすいと共に,
「絶望」反応の強い生徒ほど「完成の喜び」による「癒し」を感じやすいことが示 唆された。
本章で検討した日常ストレス反応と材料加工学習のものづくり活動における「癒し」と の関連性は,学習活動に対する動因によって授業以外の場で受けたストレスが緩和される
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方向性である。しかし,「癒し」と「ストレス」とは相互に排他的な関係ではなく,両者が 共に高まることも,低減することもありうる。そのような前提に立てば,生徒が日常スト レスを授業に持ち込むことで,学習活動が阻害される方向性,言い換えれば,日常ストレ スによってものづくり活動における「ストレス」が助長される可能性も考える必要がある。
そこで次章では,前章で作成した「ストレス」カテゴリを用いて,日常ストレス反応との 関連性を把握することを試みる。