第 4 章 研究課題 3
2) 方法
2)-1実 験 参 加 者
実験参加者は, 1名のオリンピック代表個人競技選手, 20代男性を対象とした.
[1]昨年度シーズンを通して実施された心理コンディショニングダイアリーの記述から, 重
要な大会における心理的な成功・失敗要因を抽出した.
[2]最優先課題として挙げられた「過緊張」による心身の症状に対して, 適切な心理状態を作
ることが要求される競技特性を考慮したうえで, リラクセーションテクニックを目的と した20日間の呼吸法トレーニング (課題1) を実験室場面にて実施した.
[3]さらに呼吸法習得後, 競技場面データを含めた総合的な応用研究として, 最大限試合に
近い状態 (審判, 観客, 試合と同じスケジュールなど) で実施される試技会において, パ フォーマンス直前の集中状態を可視化, 実験室場面データと比較することによってトレ ーニング効果を検証 (課題2) した.
[4]上記の定量的な側面に加え, 定性的な側面からは, ワークシートの記述, インタビュー調
査およびメディアコメントからデータを収集した.
2)-2測 定 機 器
呼吸法トレーニング3分間毎の成績評価には, 接触型BF機器:SEに表示されるポイントを 使用した. 心拍数 (ノイズ除去の為10秒間幅の移動平均値) と呼吸数の計測には非接触型セ ンシング機器としてKinect (Microsoft社, Figure 15) を使用した.
Kinectを用いた非接触バイタルセンシングの方法として大別すると, 皮膚の反射光量の微
小変化に着目して心拍を測定する方法と, 胸部距離の精密観測から呼吸と心拍を測定する 方法の二種類がある.
まず, 一つ目の皮膚の反射光量変化からの心拍測定では, 赤血球に含まれるヘモグロビン Figure 15. Motion-capture sensor Kinect.
が近赤外線を吸光する性質を利用している. 皮膚からの反射光輝度値は, 心拍動に伴う血 圧の変化により皮膚の真皮にある毛細血管の動脈部分の厚みが変わることから, 心拍に同
期して 1/200程度変化している. そこで, キャプチャ画像上の皮膚の存在する位置にある矩
形領域内画素の輝度値の平均値を求め, 次に 8 サンプル程度の時間方向の履歴データを用 いて, Figure 16に示す放物線関数で基底遷移アルゴリズム (Base Transition Algorithm) によ る最小2乗法近似を行った. このとき, 未知数cの値は, 最小2乗法により時間方向のノイ ズを除去した時刻t=0における現在値 (Current Value) となっている.
二つ目の胸部の距離変化からの心拍と呼吸測定では, まず心弾動に伴って 0.3mm 程度変
化するKinectから胸部までの距離の変動を利用し, 心拍数 (ノイズ除去の為10秒間幅の移
動平均値) の測定を行った. 本研究では, 測定場所のノイズを考慮し上記どちらかの適した 方法を選択して心拍測定を実施した. さらに, 呼吸運動に伴って 3~5mm 程度変化する
Kinectから胸部までの距離の変動を利用し, 呼吸数と呼吸依存曲線の測定を行った.
3分間毎の呼吸法トレーニング前後の鼻部皮膚温の計測には, 顔面温度が周囲の温度変化
に伴って顔面全体で変化するのに対し鼻部皮膚温は精神的ストレスを感じた場合に温度の 低 下 が 顕 著 に 現 れ る こ と か ら (石 川 ら, 1996), 非 接 触 型 赤 外 線 サ ー モ グ ラ フ ィ ー
(TVS-8500:日本アビオニクス社, Figure 17) を用いて, 精神的ストレスの影響が現れにくい
額部と精神的ストレスの影響が明確に現れる鼻部の相対温度を計測した.
Figure 16. Parabolic approximate method.
Figure 17. Infrared thermography device TVS-8500.
2)-3課 題1 (呼 吸 法 ト レ ー ニ ン グ)
呼吸法トレーニングは, 以下の手順で行った.
[1]呼吸法について, コンサルタントのレクチャー (Table 4) を受講した. [2]3分間の呼吸法トレーニングを計20回 (日) 実施した.
[3]呼吸法トレーニング実施時は, SEによる即時BFをアスリート自身で確認し, 3分間のSE
トータルポイントを計測, 記録した. 記録用紙には, アスリートのコメント (主観的な感 覚の変化, 実施状況など) も記入した.
[4]アスリートの内省報告より, 必要に応じてコンサルタントによる呼吸法実施手順の再確 認および修正を実施した.
[5]全日程の内, SE以外のデータ計測は1. 5. 10. 15. 20回目に実施した.
2)-4課 題2 (呼 吸 法 競 技 場 面 応 用)
呼吸法習得後, 呼吸法が実際の競技場面でどのように応用されたのかについて検討を行 った.
[1]試合に最大限近い状況の試技会において, パフォーマンス直前に呼吸法を実施した (競 技特性に必要な集中状態を作り上げることを目標とした).
[2]呼吸法実施時は, 接触型センシング機器が使用できない為, 非接触型センシング機器
Kinect によって心拍数と呼吸数, また, 赤外線サーモグラフィーによって鼻部皮膚温の
変化を計測, 記録した.
[3]実験室場面では 3 分間計測を実施していたが, 実際の競技場面では時間経過は知らせず, アスリートの主観的な感覚によって適切な心理状態を作り上げるのに必要な時間を計測 時間として実行した.
[4]競技場面データは呼吸法習得後の実験室場面データと比較し, トレーニング効果につい て検討を行った.
Arousal Management .
Inverted-U Hypothesis (Yerkes&Dodson1908)
Individualized Zone of Optimal Functioning Hypothesis (IZOF) (Hanin1980) Catastrophe Cusp Model (Hardy&Fazey1987)
SE .
.
, , .
.
.
3 / 20 .
SE , .
, 3 SE .
Table 4
Lecture of Breathing Exercise