CQ 24 : 顔面ミクロシスティックリンパ管奇形(リンパ管腫)に対する硬化療法は 有効か?
D. 整容性 cosmetic
整容性に対する評価を詳細に報告している文献はなかった。硬化療法による嚢胞状病変縮小後の余剰皮 膚に対して外科的治療を行ったという記載が散見される程度であった。
④ 合併症
complication
気道周辺領域の治療に伴う合併症として、多くの文献で発熱4, 9-18)、局所の腫脹9-11, 14, 15, 17, 18)や疼痛4,
9, 14, 17-20)、嚢胞内出血9, 11, 15, 19)、感染1, 9-11, 13, 19-21)、といった硬化療法にみられる一過性の合併症が報告
されているほか、気道狭窄・閉塞による呼吸障害2, 4, 9-13)、神経麻痺1, 9, 10, 13, 19)といった、頭頸部病変に 対する治療の影響によると思われる合併症も散見されている。
Adams MT
ら1)の頭頸部リンパ管奇形(リンパ管腫)に関するシステマティックレビューによると、頭頸部リンパ管奇形(リンパ管腫)に対する硬化療法による神経損傷合併率は
1
例/123例中(0.8%)、術後感染合併率も
1
例/123例中(0.8%)であった。手術による神経損傷合併率は12
例/118例中(10.2%)、術後感染合併率は
7
例/118例中(5.9%)であったことから、硬化療法が手術治療に比較して合併症発症 率が低いと判断できる。小河ら4)は
1
歳5
ヶ月の頸部嚢胞状リンパ管奇形(リンパ管腫)に対するOK-432
硬化療法にて気道 浮腫を来し、治療後3
日間の気管挿管を要した症例を報告しており、低年齢(特に2
歳未満)での気道 周辺への硬化療法は注意を要すると述べている。工藤ら16)も生後
11
ヶ月と1
歳11
ヶ月の2
症例でOK-432
硬化療法後の腫脹による気道狭窄が懸念さ れたため、あらかじめ挿管管理下にて処置を施行している。留守ら22)も小河ら4)の報告同様に2
歳未満 では治療後の気道狭窄・閉塞に注意を要するとしている。一方、無治療で経過観察された頸部リンパ管奇形(リンパ管腫)が麻疹や上気道感染を契機に急速増 大した症例
2
例を工藤ら16)が報告している。また、有本ら7)も、生後3
ヶ月時初診の嚢胞状の頸部リン パ管奇形(リンパ管腫)症例で、生後10
ヶ月時に上気道炎を契機に頸部リンパ管奇形(リンパ管腫)が 増大して呼吸障害を来して挿管管理の必要性が懸念された症例を報告している。硬化剤による合併症として、Cahill AMら5)はドキシサイクリン、STS、無水エタノールによる治療 を行い、ドキシサイクリン投与後の溶血性貧血
2
例、低血糖+代謝性アシドーシスの新生児3
例、無水 エタノール注入中の低血圧、ドキシサイクリン漏出による表皮剥離等の早期合併症に加え、ホルネル徴 候、一過性左口唇減弱、右顔面神経麻痺、一過性左横隔膜神経麻痺の晩期合併症を経験したと報告して いる。エタノール局注による治療で永続的な声帯麻痺23)、OK-432による重篤な合併症の報告として肺 塞栓による死亡例24)、ブレオマイシン治療後に肺合併症による死亡例25, 26)、ブレオマイシンによる白血 球減少15)の報告がある。☆制限事項
頸部の気道周囲に分布するリンパ管奇形(リンパ管腫)のみに限って分析している論文はわずかであ り、多くは頸部だけでなく頭部から顔面や全身の他の領域を含んで検討されているか、嚢胞状や混合型 といった性状の異なるリンパ管奇形(リンパ管腫)を含めて報告していた。また、この点に加えて、海
綿状の定義や硬化療法の治療基準(使用方法や投与回数など)などは文献によって一定であるとは言い 難く、硬化療法の有効性を評価する上でこれら対象の背景に違いがあることは考慮しなければならない。
<まとめ>
「頸部の気道周囲に分布するリンパ管奇形(リンパ管腫)に対して、乳児期から硬化療法を行うべき か?」という
CQ
を考察するにあたり、硬化療法を行うことによる治療効果response(生命予後(生存
率survival rate
もしくは死亡率 mortality)、病変の縮小率size、症状 symptom、整容性 cosmetics)、
合併症
complication
という視点から分析を行った。乳児期の気道周囲のリンパ管奇形(リンパ管腫)による呼吸障害等のリスクを述べた文献も散見され、リスクが高い場合や症状が出現した場合には乳児期 においても治療介入は必要である。その手段として硬化療法と外科的切除による治療があるが、外科的 切除は硬化療法より大きな合併症を起こすリスクが高いことから低侵襲な硬化療法からの介入が推奨さ れる。硬化療法の治療効果として、病変の縮小率、症状・機能改善効果は高く非常に有効であると判断 される。ただし、病型により、その有効性に多少の差があり、海綿状や混合型の場合には嚢胞状と比較 して、有効性が劣る。また、気道周囲の病変に対する硬化療法では病変の反応性腫大による気道狭窄症 状増悪のリスクがある。以上より推奨を「気道周囲のリンパ管奇形(リンパ管腫)では、乳児期から呼吸 障害をきたすリスクがあるが硬化療法による気道狭窄が増悪しやすい。特に気道狭窄リスクが高いと判 断されるときや症状が出現したときは、気道確保を含めた十分な準備のうえで硬化療法を行うことを提 案する。」とする。
文献検索式
検索DB:医中誌Web
検索日:2015年2月24日 検索式:
(リンパ管腫/TH or リンパ管腫/TA or リンパ管奇形/TA or (リンパ管形成/TH and リンパ系異常/TH) or "lymphatic malformation"/TA) and (頭頸部腫瘍/TH or 頸部/AL) and (硬化療法/TH or 硬化療法/TA or 硬化剤/TH or 硬化剤/AL or Picibanil/TH or Picibanil/TH or ピシバニール/TA or ピシバニル/TA or OK-432/TA or OK432/TA or Bleomycin/TH or ブレ オマイシン/TA or Doxycycline/TH or 注入/TA) and DT=1980:2014 and LA=日本語,英語 and PT=会議録除く and CK=ヒト 検索DB:PubMed
検索日:2015年2月24日 検索式:
(lymphangioma[TW] OR "lymphatic malformations"[TIAB] OR "Lymphatic Vessels/abnormalities"[MH]) AND (neck[TW]
OR "Neck Injuries"[MH]) AND (sclerotherapy[TW] OR "Sclerosing Solutions"[PA] OR sclerosing[TIAB] OR picibanil[TW]
OR "OK-432"[TIAB] OR bleomycin[TW] OR injection[TIAB]) AND "humans"[MH] AND (English[LA] OR Japanese[LA]) AND 1980[PDAT] : 2014[PDAT]
検索DB:Cochrane Library 検索日:2015年2月24日 検索式:
#1 "lymphangioma":ti,ab,kw or "lymphatic malformations":ti,ab,kw or "lymphatic abnormalities":ti,ab,kw (Word variations have been searched)
#2 "neck":ti,ab,kw or "cervical":ti,ab,kw (Word variations have been searched)
#3 "infant":ti,ab,kw or "infants":ti,ab,kw or "infantile":ti,ab,kw (Word variations have been searched)
#4 #1 and #2 and #3 Publication Year from 1980 to 2014, in Cochrane Reviews (Reviews and Protocols) and Trials (Word variations have been searched)
#5 #1 and #2 Publication Year from 1980 to 2014, in Cochrane Reviews (Reviews and Protocols) and Trials (Word variations have been searched)
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CQ31:舌のリンパ管奇形(リンパ管腫)に対して外科的切除は有効か?
推奨文:
病変の縮小や症状や機能障害の改善に有効である。ただし、全摘は困難で あることが多く、合併症や再発の可能性も考慮して、慎重に判断すること が求められる。
推奨の強さ 2(弱い):行うことを弱く推奨する。
エビデンス D (非常に弱い)
解説
【推奨作成の経過】
舌はリンパ管奇形(リンパ管腫)の好発部位のひとつであるが、舌だけにとどまらず頸部に広汎に分 布することも多い。舌は腫脹により口腔から突出や、出血などの整容性の問題を生じるが、容易に口咽 頭腔を占拠し、閉口障害、発語困難、呼吸障害や経口摂取障害などの機能障害を生じうる。形成外科、
口腔外科、耳鼻咽喉科、小児外科など診療科が治療を担当している。治療としては切除術や硬化療法が 行われるが、舌内の病変の分布、他の部位への広がりや嚢胞成分の程度、血管分布などの個々の症例の 状態や、各治療法の合併症や再発のリスクなどの一般情報を加えて総合的に考える必要がある。
そのため、「舌のリンパ管奇形(リンパ管腫)に対して外科的切除は有効か?」という
CQ
を挙げ、現時点での特に舌部分切除による病変の切除術の有効性につき知見をまとめた。
<文献検索とスクリーニング>
検索の結果、邦文
29
篇、欧文76
篇(PubMed 75篇、Cochrane 1篇)の文献が一次スクリーニング の対象となった。このうち2
篇の邦文、10
篇の欧文が本CQ
に対する二次スクリーニングの対象文献と なった。その内訳は後ろ向きcohort
研究を1
篇認めたものの、残りの多くの論文は症例集積あるいは症 例報告であった。結果として、本CQ
の検討においては、このコホート研究およびそれぞれの症例集積 の結果、考察を統合した。<観察研究(症例集積)の評価>
舌リンパ管奇形(リンパ管腫)に対する切除術の有効性に関する評価は、治療効果
response
として病 変の切除率resectability、症状 symptom、機能性 function、
整容性cosmetics、また合併症 complication、
再発率 recurrenceの視点に基づいて行った。
☆検討結果
①治療効果 response