1、ミスに見る教科書政策組織構造のひずみ
にっかんしんぷん
2006年4月15日中国美術学院と漸江日刊新聞の新聞グループ会社が主催する
きしゃけんせきにんしや (
「美術新聞」に記者兼責任者の韓洪剛は《無錫のどこに"痩西湖"があるだろう
ぶんしょう いってい はんきょう ひ お
か?》の文章を書いた。社会で一定の反響を引き起こした。 2006年4月10日に
きょうし きしゃ いちつう とど きしゃ じんみんしゆつばんしゃ
が襲洪正と言う教師から記者に‑通のメールが届いた、彼は記者に人民出版社の
かていき上うざいけんきゆうし上 かていかいはつ ‑んさん ふつう
課程教材研究所と美術課程開発センターが編纂し、人民出版社が出版した《普通
こうこうかていひ上うじゆん じっけんようき上うかし上 tFじゆつかんしJ:う ちしき あやま
高校課程標準による実験用教科書‑一美術(美術鑑賞)》の中で多く知識の誤
りが現れていたと言う常諾を韻書した、記者は最初に海賊版の図書だと思って
きしゃ さいしょ かいぞくぼん としょ おも
せんせい みほん
いた、しかし2006年4月12日に襲洪正先生から送られて来た教科書の見本を
さんし上う もんだい かくにん
参照し、問題を確認する。
(ふつうこうこうかていひょうじゆん じっけんようきょうかし上 びじゆつかんしょう
韓洪剛が、 《普通高校課程標準による実験用教科書‑一美術(美術鑑賞)》
けんあん たいしょう きょうかしょ もんだい きさいれい
において、懸案の対象となった教科書での問題となる記載例は、以下のような内 容である。
い ち
1
痩西湖は無錫に位置するしぼうねんれい
2
ゴッホの死亡年齢を40歳りったいさくひん すんぽう しょうかい
3
立体作品の寸法の紹介が、 2つのディメンションでしかなされていない。4 近寄、寡着手描と、その筈L#が一致しない(議薮の募着岸富と諾&'が
い ま じ
入り混じった状態にある)
しょうかいさんこうさくひん はんてんけいさい
5
紹介参考作品の図像の反転掲載・28‑
こ てん し
6
古典詩のよ う ご かいせつ し かいしゃく あやまり
用語の解説における、詞の解釈の誤り
れつあく
教科書の劣悪さを示すものであるが、しかしそれぞれの問題に対して、教科書
そ う あ
ができるまでの過程に沿って考えていくと様々な問題が浮き上がってくる。
‑んさん ‑んしゆう かてい かてい かんが
編纂 編集の過程を考えるとおおむね以下のような過程と考える。
‑んしゆういいん せんてい
1‑1
編集委員の選定へんさん しんぎ
1‑2
編集、編纂に関わる基本審議.したがい けいさいないよう かか せんもんり上ういき じゆうじしゃ たんとう けってい
1‑3
基本原案に従い、その掲載内容に関わる専門領域の従事者の担当の決定けってい たんとうしゃ けいさいじゃしん かいせつ げんこうさくせい
2‑1
決定された担当者による、掲載写真および解説の原稿作成.かくたんとうしゃ げんこうさくせいだんかい だいさんしゃ ふく むこ う さ ぶんあん けいさいじやしんなど
2‑2
各担当者の原稿作成段階での 第三者を含む考査(文案 掲載写真等にこ う さ こうせい
対する、考査 校正)
かか さいしゅうげんこう さしゆう
2‑3
担当部分に関わる最終原稿の査収かりへんしゆう
3‑1
全体での仮編集き さい
3‑2
全体を通しての、文言記載内容、掲載写真、引用物などに対しての審議・確認
ていせい ご うい
3‑3
訂正の合意確認ていせい ご うい いいんかい
3‑4
担当者による訂正、担当者合意による委員会による訂正‑んしゆういいん たんとうしや さいしゆう‑んしゆうげんこうかくにん
3‑5
編集委員、担当者による 最終編集原稿確認いんさつぎ上うしゃ ちゆうごく ば いんさつぶもんたんとうしや げんこう
4‑1
印刷業者(中国の場合には印刷部門担当者と言うべきか) ‑の、原稿ひきわた
引渡し
へんしゆうげんこう せいはん かりいんさつ
4‑2
編集原稿 製版 仮印刷かりいんさつ ごしょく いんさつひんしつ う あ らくち上う
4‑3
第一次 仮印刷による、誤植等の校正 印刷品質打ち合わせ 落丁の検 査・29・
かくにん いんさつげんこうさいしゅうかくにん せいはん
4‑4
確認 印刷原稿最終確認 製版ほんいんさつ かりいんさつ
5‑1 本印刷 (第二次仮印刷)
へんしゆういいん たんとうしゃけん さ
5‑2
編集委員および、担当者検査せいふたんとうしやけんさ
5‑3
政府担当者検査はんてい
6‑1
合否判定しんぎ かし上
6‑2
修正および審議が必要と思われる箇所が出た場合しんぎいいんかい せっち
新たな審議委員会の設置
へんしゆういいんかい しんぎ
もしくは編集委員会との審議
かしょ こうてい きじゆつ
7‑1
部分的修正箇所にたいして、行程が戻る.(記述担当者の変更もありうる)ご うひはんてい
合否判定
とくしゆ
おおよそ、以上の行程が考えられる。教科書という特殊な位置ある出版物であ
けんえっ
るから、このほかに多くの、委員会や検閲などの審査を通る過程があるかもしれ
たんじゆん しそうてき せいじてきそくめん かんさ
ないが、単純に、考えれば思想的、政治的側面で、政府の監査を受ける。児童の
き上ういくてきはいり上 せいしんはったっ もんごん けいさいぷつ
教育的配慮からの、精神発達にかかわる文言や掲載物に関して、社会性、専門家
こうり上 したがい ほんあん げんあん りょういき
の判断を考慮する。この原則に従い、基本案にそった原案は領域の専門家によっ
しっぴつ
て、執筆されると考えてよいだろう。
しる はんせいじてきもんだい こくさいてきじょうせい
この事件の問題は、上記で記したように、反政治的問題や、国際的情勢などに
かんあん ぴみょう
勘案する微妙な問題によって引き起こった問題ではない。
‑んしゆういいん しっぴつ せんもんりょういき
したがって、編集委員や執筆担当者の知的レベルや、その専門領域に関わる、
学術的レベル、教育に対する責任に関する認識度に、要因があると考えることは たやすい。
ざっばく こうてい そうてい しんぎ こうさ こうせい
上記で雑駁ではあるが行程を想定するなかで、いくつかの審議・考査、校正を
つうか かてい こうてい
通過する過程が少なくとも、 6回は存在する。その行程において、これだけ多く
・30‑
きょうかし上せいさく そしきてき
のミスが存在すると言うことに関しては、教科書製作にかかわる組織的プロセス に大きな問題があるようにも思われるわけである。
この教科書においてのミスを,分類すると以下のように大別できる。
せんもんり上ういきじょう ち しき あやま
A専門領域上の、知識の誤り
や さいこ むしやく い ち
1
痩西湖は無錫に位置するしぼうねんれい
2
ゴッホの死亡年齢を40歳り上ういき にんしき かいしやくじょう お あやまり
B専門領域上の、認識や解釈上起こった問題もしくは、誤り
し よ う ご かいせつ し かいしやく
6
古典詩の 用語の解説における、詞の解釈の誤りふくごうてき
C
複合的ミスせんもんりょういきじ上う あやまり
専門領域上の、知識の誤り
いんさつげんこうひきわたし じ き じむて きさぎょう げんこうかんり ふてぎ わ
印刷原稿引渡し時期における、事務的作業(原稿管理)の不手際
しょうかいさんこうさくひん ちゆうしやく ちゆうしやく
4
紹介参考作品と、その注釈が‑敦しない(複数の参考作品と注釈がい り ま じ っ た
入り混じった状態にある)
し上うかいさんこうさくひん ずぞう はんてんけいさい
5
紹介参考作品の図像の反転掲載かん ふくごうてき
D 教育に関する複合的 認識による問題
りょういきじ上う ら く さ
専門領域上の、認識の落差
にんしき ら く さ
教育上の 認識の落差
すんぼう
3
立体作品の寸法の紹介が、 2つのディメンションでしかなされていない。ちしきじ上う
Aについては、明らかに知識上の誤りである。
きょうかし上さくせい ‑んしゆういいん せんもんりょういき しっぴったんとうしゃ ち し き ど
教科書作成にかかわった編集委員、専門領域のメンバー、執筆担当者の知識度
しっぴつ ししつ あき
が、疑われることはやむおえない。執筆担当者の資質については、明らかな問題 があると言える。
・31‑
こんどう
しかし、誰にでもうっかりした、簡単な間違いや、知識の混同はありうる。い
こうせい かくにん きかい
くつもの、校正、確認の機会があると思われる中で、このミスに誰もが気づかな いと言うことに、理解できない問題が存在する。
あやまり せいどく
かかわった全員が、同じ知識的誤りをしていたのか、校正確認の際に誰も精読し ていなかったのか。
この点が、もっとも大きな問題であると言える。
あやまり ちいきてき き上ういく もんだい
同じ知識の誤りをしていたとすると、地域的な教育に対する考え問題があると
ちいきてき きょういく ちしき ら く さ
言うことになる。地域的な教育・知識の落差が存在するということであるし、こ
こうだい こ く ど ぎょうせいてきけつらくけってん
れは中国と言う広大な国土と、人口に対する行政的欠落欠点といえる0
こうせいかくにん じ せいどく
校正確認時の精読の義務を、編集にかかわるスタッフが怠っていたとしたら、
しょくむたいまん しょくむ こうし上くいしき けつらく と
職務怠慢と、教育にかかわる職務、公職意識の欠落でありモラルが問われる。
けつろんてきひはん げんだんかい
Bの問題については、結論的批判をするには、現段階では難しい部分がある。
じ上うほう ひつよう ぞ く す る
詳しい情報が必要である。その内容によっては、 Aに属する問題であるかもし れない。
がくもん つね せんもん りょういき けんきゅう しんど あら じょうほう
学問と言うのは常に専門の領域にあっては、その研究の深度と、新たな情報
くわ かいしやく じれい
が加わることで、解釈がかわることはこれまでにも事例がある。したがって、
かいしやく もんだい まちが さ
解釈の問題を間違いと、早々に言い切ることは避けるべきである。
じょうほう しりょう かくとく いっぱんか かいしやく ‑んか
しかし、新しい情報、資料の獲得によってこれまで一般化していた解釈が変化
がくもん り上ういき ぎろん
するにしても、学問の領域においては、それが認められるかどうかの議論は、常
しんちょう げんだい がっかいなど しんちょう ぎろん しんちょく
に慎重になされている。現代では学会等によって、慎重に議論され、その進捗
じ上うき⊥う じ上うほう かくとく
状況を誰でもが情報として獲得できる。
もんだい こ と な るしつ もんだい ‑んしゆういいんかい もんだい
この間題がAとは、異なる質の問題であるとすれば、編集委員会は、問題とな
かいしゃく たい しんぎ きかい がっかいなど かいとう もと
った解釈に対し、審議の機会をつくり、学会等に回答を求めると言う手立てをと
・32・