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第 4 章 政策提言

4.2 政策提言の実現性

公職選挙法が施行されて以降(1950年〈昭和 25 年〉4月15 日以降)の日本では、同 法の第61条から第74条にかけて記されている開票に関する規定に沿って開票が行われる。

開票所では選挙の開票に関する事務を行う開票管理者の下で、不正がないかどうかを監 視する開票立会人が立ち会う中で開票作業が進められる。選挙の有権者は開票管理者の制 限の中で開票作業を参観することができる。

公職選挙法第 65 条では開票日について「すべての投票箱が送致された日か翌日」とし ている。投票日の投票終了後に開票を始めることを「即日開票」と呼び、投票日の翌日に 開票を始めることを「翌日開票」と呼ぶ。2000年代以降の国政選挙では原則即日開票が行 われているが、地方選挙では、超過勤務手当が発生しないことから大きな経費節減効果が ある翌日開票を選択する地方自治体もある。

また現在の公職選挙法に従って進められる開票作業には莫大な人件費がかかっている。

第46回衆議院議員選挙において横浜市だけで1億2千万以上もの額を開票にかかる経費 として計上されていることが総務省による行政レビューレポートよりわかった。

我々の政策提言である「多数決制度からボルダルールへの段階的に導入すること」によ り、開票の複雑化が容易に考えられる。そのままではさらなるコストの増加につながる。

そこで我々は現在の記名方式からマークシート導入による開票の電子化を提案したい。

マークシート方式は選挙では導入されていないものの、官公庁では防衛省や法務省、国 土交通省、それ以外にも多くの民間企業や大学などの教育機関で集約方法として使用され ている。国外ではアメリカをはじめとし、多くの国でマークシートを活用した選挙が実施 されている。よって日本でもマークシートを選挙に導入することは可能であるといえるだ ろう。

図4-1 アメリカにおける州ごとのマークシート導入

州 マークシート

VVPAT 付 き 直接記録方式 電子投票

VVPAT なし直 接 記 録 方 式 電子投票

アラバマ ◎

アラスカ ○ ○

アリゾナ ○ ○ ○

アーカンソー ○ ○

カリフォルニア ○ ○

コロラド ○ ○ ○

コチネカット ◎

デラウェア ○

コロンラド特別区 ○ ○

フロリダ ○ ○

ジョージア ○

ハワイ ○ ○ ○

アイダホ ○

イリノイ ○ ○

インディアナ ○ ○ ○

アイオワ ○

カンザス ○ ○ ○

ケンタッキー ○ ○

ルイジアナ ○

メイン ◎

メリーランド ○

マサチューセッツ ◎

ミシガン ◎

ミネソタ ◎

ミシシッピー ○ ○ ○

ミズーリ ○ ○

モンタナ ◎

ネプラスカ ◎

ネヴァダ ○

ニューハンプシャー ◎ ○

ニュージャージー

ニューメキシコ ◎

ニューヨーク

ノースカロライナ ○ ○

ノースダコタ ◎

オハイオ ○ ○

オクラハマ ◎

オレゴン ◎

ペンシルヴァニア ○ ○

プエルト・リコ準州 ◎

ロードアイランド ◎

サウスカロライナ ○

サウスダコタ ◎

テネシー ○ ○

テキサス ○ ○ ○

ユタ ○

ヴァーモント ◎

ヴァージニア ○ ○ ○

ワシントン ○ ○

ウェストヴァージニア ○ ○

ウィスコンシン ○ ○

ワイオミング ○ ○

出所:筆者作成

以上の表は、2008年時点でマークシート(電子投票)を導入している州を表している。

表から見て取れるように、ほぼすべての州で電子投票が導入され、中でもマークシート方 式を採用している地域は非常に多い。

次にマークシートの読み取り機に関しては株式会社教育ソフトフェアを参考にする。マ ークシートの価格はA4片面が11.5円(1000枚以上購入時)となっている。

[図4-2 マークシート読み取り機にかかわる概要]

機 種 名

価格 読 み 取 り 枚数

対 応 サ イズ

長さ 幅 高さ 使 用 時 の長さ

重さ SR-6

000p lus

129,800 100枚/分 ハガキ、

A4 サイ

365mm 227mm 575mm 947mm 約 17.0kg

出所:株式会社教育ソフトウェアより筆者作成

本稿では横浜市でのマークシートを導入した場合の開票作業にかかる費用対分析(差額 減価分析)を行った。分析をおこなうにあたって必要な資料を以下に与える。

[図4-3 開票作業の概要]

横浜市における投票総数(票) 1,683,985 開票人数(人) 4,001 開票にかかる人件費(円) 12,700,000 開票時間(分) 5,334 一人当たりの処理枚数(枚/分) 1.42

出所:早稲田大学マニフェスト研究会より筆者作成

以上の要素とマークシートの概要を踏まえると、マークシート読み取り機は1台で1分100 枚のマークシートを処理できる。これは1人の人間が1分に処理できる枚数が1.42枚であ ることから約70倍の処理速度である。よって4000人いた開票人数も70分の1の57人 で済むことになる。また現在同じ時間開票に充てるとすれば、約3台の読み取り機を導入

することによって可能となる。また開票にあたった人の賃金は総務省の発表している平均 時給(3780円)で5時間労働した場合を考える。

これらを考慮した結果、

開票にかかる人数 4001人→57人 3780円×3943人=74,522,700円 (1) マークシートの購入 11.5円×1,683,985枚=19,365,827円 (2) 読み取り機購入 129,800円×3台=389,400円 (3) 効果額:(1)-(2)-(3) 54,767,473円

横浜市だけで 54,767,473 円もの費用が浮くこととなる。また読み取り機に関しては初 期投資であり2回目以降は費用がかからないので、さらに費用対効果は大きくなる。

しかし費用削減効果はみられるものの導入開始時は機器の取り扱いに不慣れであること から上記のような大きさの費用対効果はみられないかもしれない。しかしマークシート導 入により費用が削減されることは明らかである。

次に政策提言の課題として考えられる情報量について考察を行う。ボルダルールは全候 補者に対して順位付けであることから、1 人のみに投票する多数決の場合と比べてより有 権者に対して情報を提供する必要があることは明白である。

2010 年 2 月に全国の 20 歳~79 歳の個人 1,124 人を対象に行われた「選挙について参考 にする情報源」についてのアンケート調査によると、「新聞」を参考にするという人が最も 多い事が分かった。この調査は複数回答形式で行われた。

出所:朝日新聞社広告ウェブサイト

[図4-4 投票する政党を検討する際の参考情報源]

10.0%0.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

1000人

図4-4から読み取れるように、上位6位は1位「新聞」53.9%、2位「テレビ」46.5%、

3位「家族・知人などの話」20.3%、4位「政見放送」19.4%、5位「政党のマニフェスト

(冊子)」18.4%、6位「選挙公報」14.1%という結果になった。また、上記の6項目を参 考にすると答えた人の重複回答状況を表したのが図4-4である。

出所:朝日新聞社広告ウェブサイト

図4-5より、「テレビ」「政見放送」「政党のマニフェスト(冊子)」「選挙公報」を参考に すると回答した人の 6 割~7 割の人が「新聞」も参考にしていることがわかる。よって、

「新聞」は選挙についての参考情報源として中心的な存在であるということが言える。

幅広い年齢層でのアンケート調査では、「新聞」を参考にすると回答した人が最も多かった が、若年層に限定したアンケート調査では、「テレビ」と回答した人が一番多かった。

2015年7月に15歳~23歳の男女1000人を対象にして行われたアンケート調査を見てい く。このアンケート調査も複数回答形式である。

出所:朝日新聞社広告ウェブサイト

[図4-6普段何からニュースなどの世の中の動きを知っているか]

[図4-5投票する政党を検討する際の情報源の重複回答状況]

0.0%5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

50.0%

図3 今回の選挙の投票先を決めるのに参考にしたメディア情報は何

200人

普段何からニュースなどの世の中の動きを知っているか聞いたところ、上位6位は1位

「テレビ」82.6%、2位「ニュースサイト」50.7%、3位「SNS」49.2%、5位「インター ネット検索」41.4%、5位「親との会話」28.7%、6位「友人知人との会話」27.3%となっ た。図2からも「テレビ」が圧倒的に多いことが分かる。ちなみに、「新聞」は20.8%で8 位であった。

次に、第47回衆議院議員選挙で投票した全国の20代男女200名を対象に行われた、2014 年12月のアンケート調査を見ていく。このアンケートも複数回答形式である。

出所:日本労働組合総連合会

今回の選挙の投票先を決めるのに参考にしたメディア情報を調査したところ、上位7位 は1位「NHK」45.5%、2位「民放テレビ」44.0%、3位「新聞」28.5%、4位「インター ネットポータルサイト・ニュースサイト」21.0%、5 位「ネット掲示板・まとめサイト」

15.5%、6位「政党・候補者サイト」13.0%、7位「SNS」11.5%という結果になった。「NHK」

と「民放テレビ」を合わせると「テレビ」は89.5%となり、約9割の人が参考にすること になる。

これらの結果より、一般的に選挙情報の情報源とされるものとしては「新聞」が多かっ たが、若年層は「テレビ」を参考にする人の方が圧倒的に多いことが分かった。よって、

情報提供をする際ターゲットに合わせた対策をとる必要がある。最も多く参考にされてい る「新聞」には選挙情報、候補者情報、政党の情報などを詳しく掲載し、有権者に、より 多くの情報を提供することに力を入れる。また、若者が参考にすることが多い「テレビ」

では、選挙情報と世の中の動きを分かりやすく解説することに力を入れる。候補者が掲げ ている政策や公約だけでなく、現在世の中で起きている出来事を分かりやすく報道する番 組により力を入れれば、政治は親しみやすいものとなり、若者の正しい理解や政治への関 心の向上に繋がる。また、近年若い世代を中心に参考にする人が増えているインターネッ トやSNSを使った情報提供も強化していく必要があると言える。

[図4-8選挙の投票先を決めるのに参考にしたメディア情報は何か]

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